1995年に観た美術展など10選。 第一位: Pictures of the Real World (In Real Time) (原美術館, 95/6/24-9/3) 66年から始まるOn Kawaraの日付作品とアメリカ現代写真からなる"Story Of My Life"。Robert Nikasの手によるコンセプチャルな展示が秀逸。 Soundtrack for the exhibition: Pere Ubu "The Modern Dance" (Blank, '79) 第二位: 笠原 恵実子 "Lambに関する講演会 on "Photography and Beyond in Japan" (原美術館, 95/2/4) 「ベットルームでの苦闘はそれほど私的なことなのだろうか?」についての対話。 Soundtrack for the exhibition: Gang Of Four "Contract" on "Entertainment!" (EMI, '79) 第三位: James Turrell - Backside Of The Moon (ヨコハマ・ポートサイド・ギャラリー, 95/3/17-5/17) アパチャー作品から漏れる知覚ぎりぎりの明るさの光による官能美学。これに 比べて"James Turrell展" (水戸芸術館現代美術ギャラリー, 95/11/3-96/1/28)は 若干繊細さに欠ける。それでも一見の価値はあるだろうが。 第四位: 手で見るイメージ (ギャラリーTOM, 95/4/11-5/28) 言うまでもないが、触覚というものも一種のメディアである。 第五位 Niklaus Troxler ポスター展 (ギンザ・グラフィック・ギャラリー, 95/6/5-27) hat ARTレコードのジャケットデザインやWillisauジャズ・フェスティヴァルの 主催者として知られるTroxlerのポスター展。ポストモダン・ジャズの音色を 思い浮かべよう。Blue Noteなどのモダン・ジャズのデザインとは根本的に違う。 Soundtrack for the exhibition: Anthony Braxton "Willisau (Quartet) 1991" (hat ART, '92) 第六位: ART TODAY 1995 - 絵画レッスン, 5つの方法論をめぐって (セゾン現代美術館, 95/9/9-11/26) 国民投票による黒板作品、特に黒板による動画作成は直前に展示されていた J. Beuysのパフォーマンス跡を保存した黒板の対比からしても面白かったが、 なんといっても、会場で聴いた観客の一言だろう。「どこから見るの?」 一緒に遠征して観た"(UN)FRAMING" (ハラ・ミュージアム・アーク, 95/10/7- 12/17)の企画にも繋がることなのだが。 第七位: Ripple Across The Water (ワタリアム美術館 等, 95/9/1-30) 結局のところ、原宿青山界隈で繰り広げられたお祭りに過ぎなかったのかも しれない。しかし、散策するように歩きながら作品より興味深いものを街中に 多くみつけたし、「Ripple Across The Waterに勝手に出展する会」のように 遊ばさせてもらった。夕暮れの渋谷川公園で砂場に張られた水の中で輝く 宮島達夫のLEDなど、印象に残ったものも多い。 第八位: Jean=Pierre Raynaud "ゼロ空間" (原美術館, 常設) ある日、原美術館3Fのこの部屋に登る階段で上から下りてくる客とすれ違った。 彼は丁寧にも僕にこう声をかけてくれた。「何もないですよ。」 第九位: 蔡 國強 "制限のある暴力 - 虹"の記録ビデオと展示室の壁の爆発痕 on "ヨハネスブルグ・ビエンナーレ帰国展 (ワタリアム美術館, 95/6/30-8/20) 95/2/28に南アフリカで行なわれた実際に稼動している発電所に火薬を設置し 爆発させるプロジェクトの記録ビデオからだけでも充分な迫力と飛び散る輝く ガラス片などの美しさを想像することができるが、それよりも、ワタリアム 美術館の展示室の壁に残った爆発痕だ。見逃したことが悔やまれる。ますます 彼の爆発プロジェクトを生で観たいという衝動に駆られている。 第十位: "松本 陽子 展" (ギャラリー・アキライケダ・田浦, 95/10-12), "Mark Rothko展" (川村記念美術館, 95/9/23-11/5) 10月末に自転車で転がり込んだ横須賀田浦の番外地にあるK倉庫は、意外に 巨大な抽象平面作品が似合う空間だった。その二日後に観たRothkoの作品は 特に"Green On Red"の官能がたまらなく良かっただけに、このような空間で 観てみたかった、とつくづく思った。 次点: アジア現代美術に比較的興味向いた95年だったが、"幸福幻想" (アジア交流 センター, 95/2/25-3/26)の企画は一本筋が通って良かったが、それだけに "第4回アジア美術展" (世田谷美術館, 95/4/5-5/14)では、「アジアって、 いったい何なのだろう?」と考えさせられてしまった。そこで観たイエローマン を観に行った"Lee Wen & Artist Village展" (VA Nishiogi, 95/5/13-23)は、 少々期待はずれだった。 番外特選: Art Garden #2 - 小池 隆英 / 濱谷 明夫 (スパイラルガーデン, 95/5/2-9,14-25) 大仰な三段重ねのアフタヌーン・ティ・セットを食べながらの気違いお茶会。 あの吹き抜けのホールにカフェのテーブルが出ることは、もう無いのだろうか。 そういえば、原美術館/ハラ・ミュージアム・アークの喫茶室Cafe d'Artの 企画ケーキの美味しさに今更に気付いたのも95年のことだった。 嶋田 "Trout Fishing in Japan" 丈裕