Tranquility - 静謐 千葉市立美術館 96/1/4 - 2/25 - Niele Toroni, Michel Verjux, Maria Nordman, 杉本 博司, 宮島 達男 題のように静か、というよりも、単純さが美しい美術展だった。 最初に見られるMichel Verjuxは、ライトアップ作品の人。単純な丸い光を 壁に投影するというもの。広い展示室の無地の白い壁いっぱいに半円を2つ 投影したものよいが、階段の吹き抜けの壁や1階のホールの天井や床のような、 それ以外の目的の装飾が施されている所に投影されているものの方が、投影 されている光が単純な円だというだけに、面白いと思う。 Maria Nordmanは、8Fの外光しか入らないスリットのある真白い箱部屋の 作品は壁までの距離感が失われる感もあって、面白い。昼頃に行ったので 明るい光が入りこんでいたが、夕焼けの赤い光が差し込んでいるときや、 夜になって中が暗くなったとき、というのも体験してみたいと思った。 11階と庭の作品は、いまいちだった。 Nielo Toroniは、30cmおきに50号の絵筆で模様を付けるインスタレーション。 ここでは、日本画用の展示用スペースを活用。最初の部屋は、ガラスケースの 窓に赤と青を使ったもの。これを観て、展示ケース内にも作品を作れば面白い のに、と思ったら、次の展示室では、みごとにそれをやっていた。いいね。 杉本 博司は、海シリーズの写真。ポスター用に選ばれたものと違い、昼の 海の写真がほとんどで、上が白っぽく下が黒っぽいものがほとんど。抽象 写真とでもいう作風が美しい。なぜか、ECMレーベルのジャケット写真を ふと思い出した。最初の展示室は離れておかれた椅子の位置が絶妙だが、 二つ目の展示室は少々展示室が狭すぎるような気がする。 宮島 達男は、あいかわらずのLEDを使った作品だが、今までよく見られた 赤やときどき見られた緑と違い、今回は青。これは初めてらしい。Ripple Across The Waterのときのように、大きな丸いしきりの中に不規則にばら まかれているわけだが。暗闇の中の青いLEDのまたたきが、星空のように 遠くに感じた。妙に距離感がない。Ripple Across The Waterの渋谷川公園 のときのように、水を張っていたら、また感触が違ったかもしれない。 土曜の昼頃に観ていたのだが、時間帯もあってか、他に客もおらず、会場 内もまさに静謐。こういった静かな環境で楽しめて、とても良かった。 併催の音楽イベントは、1/14に鼓童 (和太鼓)、1/21に吉沢 実 (リコーダー)。 鼓童についてはMaria Nordmanと関係あるそうだが。いまいちだ。 目録が5人の作品紹介と今回の展示の6冊の小本からなる箱入り。豪華だが、 値段が少々高い。Michel VerjuxとNiele Toroniのものを見て、もっと彼らの 作品を観てみたいと思った。 千葉市美術館は、JR千葉駅から徒歩15分余り。Parcoの裏あたりにある中央 区役所の庁舎 (モダンな新しい建物だ) の上の階にある。駅から無料シャトル であるチーバスが出ているが30分おき。時刻によっては歩いたほうがいい だろう。待って乗ってみるのも一興かもしれないが。 96/1/16 嶋田 "Trout Fishing in Japan" 丈裕