4月28日、良い天気に誘われて、自転車でふらっと家を出たTFJです。と、言いたい ところなのだが、朝、愛車の所に行くと、前輪がピン刺しファッション穴開きンザ ユーケー状態。天気も良いので家の前の日向を陣取って、日向ぼっこがてらにパンク 修理することにした。が、気がついたら、自転車解体して全面調整していた。前日、 パーツ・ショップへ行って、レース用スリックタイヤなど調達していたのが敗因か。 気付いたらオリジナル・パーツが無かった、というAT互換機状態を突き進みそうだ。 そんなことしていたら、「自分で修理なんて、器用だねー。」と管理人さんが見物に 来てしまったが。 というわけで、昼過ぎにふらっと多摩川をさかのぼった。天気もいいし多摩川の 土手を抜ける風も強くなく快適。ロードレーサーに交じってどんどん飛ばしたら、 二時間もかからずに立川に着いた。 ファーレ立川の噂は以前から聞いてはいたのだが、なんとなく行きそびれていた。 しかし、先日、この企画をした北川フラムの話を聞いて、やはり一度は観にいかね ば、と思った。というわけで、遅ればせながら足を伸ばしてみた。 Faret立川 立川市曙町二丁目8&35〜41番 (立川駅北口) 常設 ファーレ立川は94年10月13日にオープンしたパブリック・アートの街。立川基地跡の 再開発にあたって作られた1km四方程度のビル街に100以上の美術作品が植栽内の オブジェや車止めといった形で展示されている、そんな所だ。 街の規模は意外に狭く、当初は自転車で回ろうかと考えていたが、自転車で軽く一周 してみると、逆に足手纏になりそう。というわけで、Robert Rauschenbergの自転車が 目印の無料地下自転車置場に自転車を置いて観て歩いた。 ガイドマップを持っていたので、それを頼りに一通り観て回った。このマップに よると所要時間は1時間半〜3時間ということだったが、14時頃から観て回り始めて 16時過ぎには一通り観終えたといったところ。ガイドマップなしに観て回っても 充分に楽しめるだろうが、無ければ絶対に所在がわからないであろう作品もある。 最初からマップ頼りの必要もないし、いつもマップ持参の必要もないが、一度は マップを持って丁寧に回ってみるのがいいだろう。 ネオンサイン作品などがあるので、日没後の19時頃までコーヒースタンドや本屋、 レコード店で時間を潰してから再び観て歩いた。立川の夜は比較的早く、18時半には 高島屋が閉店し19時にはRauschembergの駐輪場が閉まるため、注意が必要だが。 以前に観たビデオから予想していたものに比べ、はるかに街はこじんまりしており、 かなりの密度で作品が存在していた。しかし、作品の存在感は逆に希薄だった。 特に、道祖神・車止めタイプの作品の多くは、圧倒的な路上放置自転車の中に埋も れてしまっていた。 Felice Variniの"Circle"の作品が最も楽しかった。それも、屋上の赤丸がいい。 2作品3箇所しか丸がなかったが、もっとあちこちにあっても楽しいと思う。 Montien Boonma "Rock Bell Garden"は、中に入って鐘を鳴らして歩くととても 不思議な感じで良い。「社用地により立入禁止」という立札があったような気も するが。(良い子は決して真似をしてはいけません。) 看板の中では、Felix Gonzalez-Torresのほとんど真っ白い看板が、あまり目立た ない非常階段の上の方にかかっているのが、逆に妙に異様で目について良かった。 ベンチ・車止めの中では、Hossein Valamanesh "You Just Sit Here, I Will Keep My Eyes Open"が良かったが、放置自転車に埋もれていなかったのが幸いだったか。 もちろん、有名所では、Jean-Pierre Raynaudの巨大な植木鉢も笑えるし、Niki de Saint Pholleのベンチは大人子供問わず人気だった。川俣正の換気口も単なる空地 脇のバラックの風情を出していて良かった。 地元の人と思われる幼い子供を連れた母親 (ほとんど全て父親不在) が、子供を あそばせているのが目についた。換気筒オブジェTang Da Wu "Last Shopping"では、 男の子が「おおきなかばん!」と喜んでいるのに、母親が「あら、よく気付いたわね。」 と。「これ、美術作品なんですよ。」と話かけても、母親は全く興味を示さず、 子供を早くいかせようとするばかり。Martin Puryearのベンチでは、片言くらい しか喋られない幼い男の子が小さなジャングルジムよろしくよじ登っていたが、 上の所で恐くなって降りられなくなっていた。しかし、母親が抱え降ろそうとすると、 いやがる。手足を誘導してある程度降りると、また上り始める。と、母親は相手に するのは大変そうだったが、子供はおおいに楽しんでいたようだ。Vito Acconciの 車縦割ベンチも人気で、座って一息ついていたら、「今は混んでいるからダメよ。」 と子供を諭す母親の声が背後から。思わず、譲ってしまった。 と、子供に交じっていると、どんどん幼児退行..じゃなくて童心に帰って楽しめた ように思う。 日が暮れると、また趣が変わる。Stephen Antonakosの壁面や通路のネオンサインが ぐっと浮かび上がってくるし、宮島達男の巨大なLEDの換気筒も美しい。Raynaudの 巨大植木鉢がライトアップで浮かび上がり、Rauschembergの自転車ネオンサインが 地下駐輪場の場所を知らせる。Joseph Kosuth "Words of a spell, for Noema"は、 周囲が明るすぎて興醒めだったが、密かにあって良かったのが、Menashe Kadishman "Nature Does Not Smile; People Do"。デットスペースとでもいえる立入禁止の二階 通路の奥で、ひっそり輝いていた。 というわけで、天文薄明も終わる19時半過ぎ、立川を後にした。夜に見知らぬ街を 地図も持たずに裏道を抜けて行こうとしたら、府中市内で道に迷ってしまった。 なんとか多摩川の土手に出たが。家に帰ったら22時だった。 嶋田 "Trout Fishing in Japan" 丈裕