Jean-Luc Godard関連の映画が3本続けて廉価セルビデオ化された。全部揃えたいと 思うほどの思い入れは無いけれども、うち2本を買ったので、紹介しよう。 「中国女」 (カルチュア・パブリッシャーズ, CNAS-1003, '96, VHS) "La Chinoise" - Directed by Jean-Luc Godard - 1967, 103min この映画を観て、どれだけ笑えるか? 僕はこういうどこまで本気でどこまで皮肉 なのかわからないギャグは大好きなので、ついこれを観ながら毛沢東体操をして みたり毛沢東な歌を♪まおまおまお、と歌ってしまうが。こういう笑える映画は 好きだ。 ティーチ・インのシーンなど画面切り替えなどのリズムに欠ける点が惜しいし、 スラップスティックな所がもっと欲しい気もするのだが、ギャグのかまし方が ふっきれていて、Godardの芸風が比較的良く出ているのではないだろうか。 というわけで、一度はこの作品を観て、毛沢東体操をして♪まおまおまおと歌って 欲しい。 Yellow Magic Orchestraのファンだった人なら、初期の代表曲「中国女 "La Femme Chainose"」を思い出すかもしれない。Godardは「東風 "Vent d'Est"」という映画 も撮っている。Y.M.O.の初期の代表曲の中には「東風 "Tong Poo"」という歌もあり、 題名に違いがあるものの、Jean-Luc Godardを意識しているのだろう。といっても、 Y.M.O.のこれらの曲に、例えばこの"La Chinoise"に見られる矛盾するほどの極端 さや辛辣なユーモアがあるとは思わないが。 余談だが、このヴィデオで観て、Rodchenkoの撮影したMayakovskiのポートレートが 映画の中で使われていることに気付いた。やっぱり、Mayakovskiはかっこいい。 「ベトナムより遠く離れて」 (カルチュア・パブリッシャーズ, CNAS-1005, '96, VHS) "Loin Du Viet Nam" - Omnibus. Directed by Jean-Luc Godard, Joris Ivens, William Klein, Claude Lelouch, Chris Marker, Alain Resnais, Agnes Varda. - 1967, 116min 「中国女」と同じ67年に撮影された、ベトナム戦争に関するオムニバス映画。 反戦映画とよく言われるが、"Les Carabiniers"を撮ったGodardが、"Muriel Ou Le Temps D'un Retour"を撮ったResnaisが、単なる反戦映画を撮るはずがない。 どれだけ、僕達が「ベトナムより遠く離れて」いるか考えさせられる、そういう 作品だ。初めて観た7年前、不可避な共犯者として告発されたような衝撃を受けた のを、今でも覚えている。今観ればまた違うのかもしれないけれども、躊躇して しまいセルビデオではまだ観ていないのだが。 Jean-Luc Godard "Cine-Oeuil" (「カメラ・アイ」) が注目されてしまう理由も わからないわけではない。観る前から映画によるセルフポートレートのような映画 だということは知っていたが、実際にみた印象も強烈だ。しかし、まるでGodardの 作品であるかのようなパッケージには僕は抵抗がある。発起人はChris Markerだし、 Alain ResnaisやAgnes Vardaの参加も注目に値すると僕は思う。 Godardはこの映画を作ったような人達と十月革命の際にアジビラ映画というものを 撮影していたはずなのだが、これも是非とも観てみたいのだ。さすがにこれは ビデオにならないだろうか。 「軽蔑」 (カルチュア・パブリッシャーズ, CNAS-1004, '96, VHS) "Le Mepris" - Directed by Jean-Luc Godard - 1963, 105min これは買っていないのだが。今まで出まわっている吹き替え版ではなく、字幕だと いうのが売り。最後に3年前にレイトショーで観た記憶を頼りに。 「疎外された人間関係についての、ちょっとした物語映画」というのが僕の評価。 妻が夫を軽蔑するのは夫が卑屈なせいだといった安直な理由付けができてしまい そうな単純な構成が、僕があまりこの映画が好きでない理由だ。 後の「気狂いピエロ "Pierrot Le Fou"」と同じような構図の画面がときどき観られる というのが興味深い。 嶋田 "Trout Fishing in Japan" 丈裕