街行く人を眺めているのが好きなTFJです。大学時代に自分の編集するサークル誌の コラムに"Sidewalk Cafe"−今の自分のWWWのホームページの名前の由来でもある− という題を付けて小説や映画、美術展、音楽の紹介文を書きはじめた10年前は、 まだ東京の街には通りに開けたカフェなんてほとんど無かったが。休日特に用事が 無くてもとりあえず家を出て独りふらりと街を散策して公園のベンチやカフェで本を 読んだり文章を書いたりするのが、その当時からの習慣だ。当時は徒歩だったが、 今は自転車がその足だが。 というわけで、今日も表参道のカフェで、昨日の本の続きを読んでいた。おしゃれな 女性でも眺めて気晴らしでもするか;)、と思っていたが、気付いたら本に熱中して いて、読了してしまった。 絶賛するほどでもないけど、最近、小説の話を振ってないので。 ・ ・ ・ エリック・ロメール 「六つの本心の話」 (早川書房, ISBN4-15-208025-6, '96/8/15) Eric Rohmer "Six Contes Moraux" ('74) - 細川 晋 訳 - pp.286, 1800円 Nouvelle Vagueの5人 (Francois Truffaut, Jean-Luc Godard, Claude Chabrol, Jacques Rivette, Eric Rohmer) の一人であるEric Rohmerの短編集。いずれも 映画化されている。僕はいずれも観たことがないが。 Eric Rohmerというと、ヌーヴェル・ヴァーグの中でも最も保守的な作風の作家と いう印象がある。この主に一人称で語る小説を読んでいても、保守的な印象は 変わらないが。 最初の「モンソーのパン屋の女の子 "La Boulangere De Monceau"」は微笑ましい 出来だし、「シュザンヌの生き方 "La Carriere De Suzanne"」もいいと思うが、 だんだんモラルに関する議論がうっとおしくなってくる。が、最後の「ときめきの 午後 "L'Amour, L'Apres-midi"」は、ちょっと作風−題材でなく形式−が異なり、 面白かった。 「ブルジョワ社会における性的倫理」に関する6つのコントという趣なのだが、 例えば、アメリカのポストモダン文学のJohn Barth "The End Of The Road"の ような小説−題材として似ていると思ったが−のほうが良くできていると思うし、 フランスならヌーヴォー・ロマンといった当時の文学の動きと、ヌーヴェル・ ヴァーグがAlain Resnaisの作品 (を含めるなら) を除いてほとんど交わることが 無かった、ということを改めて思い出してしまった。 お勧め、というほどではないけれども、いくつかは映画で観てみようか、という 気にはなった。 ちなみに、8月23日から六本木シネヴィヴァンのモーニングショー (11:00〜) で 「モンソーのパン屋の女の子」「シュザンヌの生き方」を短編2編が上映予定だ。 96/8/20 嶋田 "Trout Fishing in Japan" 丈裕