前日の伊香保の疲れも気にせず15日は早朝には家と飛び出しサイクリングに行った TFJです。途中で自転車友宅に寄って2人で吉祥寺へ。そこから輪行で猿橋。目指すは 松姫峠+鶴峠。高低差1000m+300m、行程70kmのおきらくサイクリングのはずだったが、 ロードレーサーな友に引っぱられて、ガイドブックの目安で7時間というコースを 4時間という超ハイペースで駆け抜けてしまった。最高速度63km/h。良い子はけして 真似をしてはいけません。しかし、暑かった。完全にばてていたが、時間がまだまだ あるということで、さらに甲州街道を東京にむけて走り出した。が、たかが高低差 200mの大弛峠で「足に乳酸が〜」状態。渋滞気味の道路の寒暖計は29度。走る気力が 失せたので、あっさり高尾から調布まで輪行し、多摩川土手を帰路についたのだった。 というわけで、16日は休養日に充てていたのだが、午後に散策がてらに行ってきた。 ・ ・ ・ 「男性が女性同様抑圧されているとは思わないのと同じように、男性が女性解放 論者でありうるとは思わない。男性が女性解放論に共鳴することはありうるし、 男性は明らかに類型化の犠牲にはなっているけれども、その類型化は男性を抑圧者に しているのであって、非抑圧者にはしていない。」-- Lesley Woods (Au Pairs) [1] ジェンダー − 記憶の淵から Gender Beyond Memory - The Works of Contemporary Women Artists 東京都写真美術館2階企画展示室, 目黒区三田1-13-3 (恵比寿) 96/9/5-10/27, 10:00-18:00, 月休 - John Coplans, Laurie Toby Edison, Masumi Hayashi, Hung Liu, Mari Mahr, Trinh T. Minh-ha, Lorna Simpson, 嶋田 美子 (Shimada Yoshiko), Mitra Tabrizian, Carrie Mae Weems, Hannah Wilke "From Here I Saw What Happened, And I Cried"−Carrie Mae Weemsの出展作品の題 であり、ポスターのコピーとして使われている。−を「今なら何をされてきたかわかる、 そして私は泣いた」と訳すのであれば、僕はそれを「今なら何をしてしまったかわかる、 そして僕は泣いた」とでも読むべきなのだろうか。 何が悲しくて僕はこういう展覧会を観に行くのか? Au Pairsや初期のEverything But The Girlから最近のRiot Grrrlsに至るの性差別状況を扱った歌を好んで聴くのか? 模範的な回答をすれば、性的規範ほど自然なものとして深く受容されているものはなく、 自然として受け入れている日常をそうでないものとして考えさせる手だてとして、 性差別状況が使われることが多いから、だ。しかし、正直に言えば、男性であるという ただそれだけで得ている女性にはない権益や無意識に行っているだろう性差別的な 言動に関する、女性に対する罪悪感のごまかしとささやかな埋め合わせ、もある。 異性への関心の一面というのもある。それも、僕を今まで疎外してきた恋愛を含む 一般的な男女関係観に対する異議申立てというか復讐なのかもしれない。−と言えば かっこいいが、単にモてない男のひがみが屈折した結果だ。 などと、ほとんどが女性のみか男女二人組の客の中で、独りギャラリーのベンチに 座って考えていた。 気は滅入ったとはいえ展示は悪くなかった。いや、そんなことを考えさせられる くらい良かったともいえる。従軍慰安婦と報国婦人会を対比させた嶋田美子の作品は、 「間違いなく明らかなことは、政治的に無経験な状況でいますと、二重に操作され 得るということです。単に盗まれるというばかりでなくて、盗人を称賛して迎える ように訓練されるということです。」 -- John Barth [2] という言葉を、美的に喚起してくれるものがあった。Laurie Toby Edisonの太った 裸婦の写真の背景にThe Raincoats "Odyshape" (Rough Trade, '81)をかけてみたい。 Carrie Mae Weems "From Here I Saw What Happened, And I Cried"なら、Fishbone "Truth And Soul" (Columbia, '88)だろうか。Masumi HayashiのHockneyの作品 以上に奇妙なまでに明るい日系人強制収容所を撮影したフォトモンタージュを 観ながらBilly Bragg "Everywhere"を聴きたいと思った。しかし、"Sexuality" ("Everywhere"、"Sexuality"はともに"Don't Try This At Home" (Go! Discs, '91) 所収。) のようにSexuality, I demand equality!と僕はここで歌えるだろうか..。 もし、誘うことのできる異性がいるのであれば−別にそれは恋人のような関係である 必要はないのだが−一緒に行って観ると良いのかもしれない。それを通して、普段は 話題にも登らないであろう性的規範について、議論とまでいわなくても会話すること ができたならば、それが−作品が、ではない。−性的偏見を乗り越える一歩になるの だと、僕は思うから。 Soundtracks for this exhibition: Au Pairs "Playing With A Different Sex" (Human, HUMAN1, '81, LP) The Raincoats "Odyshape" (Rough Trade, ROUGH13, '81, LP) Fishbone "Truth And Soul" (Columbia, CK40891, '88, CD) Billy Bragg "Don't Try This At Home" (Go! Discs, 828 279-2, '91, CD) 参考文献: [1] グリール・マーカス: ロンドンの暴動の重みを支えるオー・ペアズ, in ロックの「新しい波」, 晶文社, 1984. [2] ジョン・バース: 知的軽蔑, in 金曜日の本, 筑摩書房, 1989. 96/9/16 嶋田 "Trout Fishing in Japan" 丈裕