I've looked at all the photographs But Cindy, which one of them is you? --- Billy Bragg "Cindy Of A Thousand Lives" (1991) Cindy Sherman展 東京都現代美術館, 江東区三好4-1-1 木場公園内 (木場,菊川) 96/10/26-12/15, 10:00-18:00 (金 -21:00), 月休 類型的な女性像を演ずる自分を撮影した一連のセルフポートレートで知られる USの女性写真家Cindy Shermanの展覧会。彼女の写真には理屈以前に惹き付けら れる/押しのけられるところがある、と僕は感じており、この展覧会で展示 されている約100点もとても楽しめるものだった。 彼女の作品の一つの魅力は、既視感とでもいうか、「そうそう、ああいう女性 いそう」とか「ああいう絵・グラビア写真・映画スチル観たことあるような」 とでもいうものかもしれない。元ネタが明確だと、逆に元ネタを知らなくては 何もわからなかったり、皮肉や諧謔の射程がその作品の近傍だけになりかねない。 しかし、Shermanの写真は元ネタを知らなくても面白い作品が多いし、むしろ、 何を皮肉られているのか油断ならないような、どう物語を作っても裏切られ そうな、そんな所が良いように思う。 その一方で、今年3月に聞いたMoMA, NYのRobert Storrのnew grotesqueに関する 話で言及されていたような、むしろ裏面ともいえる、普段あまり見たいと思わ ない物を見せされてしまったような、そういう居心地の悪い作品もある。それも 面白いのだが。 見たことがあると思ってにしろ、見たいとは思わないことによってにしろ、 看過しがちがイメージをつきつけてくる、という点では同じなのかもしれない。 しかし、80年代前半までの彼女の写真を観ていて思うのだが、やはり、これは 彼女が*美しく*ないと成立しない作品なんだな、とも思ってしまった。美しい、 というよりも、若干童顔な顔だと、これらの写真を観ていて思ったが。 ちゃんと観る時間はなかったが、インタヴューや製作風景を収めたヴィデオが 上映されていた。ちょうどグロテスクな人形の写真に関するところだったの だけれども、街の中で人形をグロテスクに着飾らせるべく奇妙な服を探している シーンが特に笑えた。実は街はこれ程にグロテスクなのかもしれない。Cindy Shermanの気の強そうな感じ − 特に評論家どころか世間の評判を裏切って やろう、とでもいう意気込みを感じるところが、いい。 _ _ _ Billy Braggの"Cindy Of A Thousand Lives" ("Don't Try This At Home" (Go! Discs, 828 279-2, '91, CD)所収) の中で歌われているthe pig faced boy ("Untitled #140" ('85))をはじめthe corrupted clown, the grotesque figureの写真も観られる。Which one of them is you? とくちづさみながら、 80年代前半までのA thousand livesを生きるCindyの写真を観るのもいいかも しれない。その答えはどこにも無いと思うが。 96/11/17 嶋田 "Trout Fishing in Japan" 丈裕