展覧会自体はわざわざ行くほどでないと思うけれども、少しは語っておこう。 「青鞜」と「女人芸術」−時代をつくった女性たち 世田谷文学館, 世田谷区南烏山1-10-10 (芦花公園) 96/10/10-11/24, 10:00-18:00, 月休 第一期 − 婦人参政権運動を中心とする19世紀末から20世紀初頭のもの、第二期は '60年以降の新しい波、と分類されることが多い。 − のフェミニズムに相当する 戦前日本の女性解放運動を支えた二つの雑誌「青鞜」「女人芸術」を回顧する展覧会。 今さら第一期フェミニズムを復習してどうする、とまで言わないけれども、資料を 見せられても仕方ない、と思ってしまうのは、これらの雑誌の装丁デザインのせい かもしれない。Czech Avant-Garde Book Design展でみた本「教養ある女性」の デザイン程度に斬新であればと思う。同時代のはずだが、こうも違うものか。 それに、同時代的な意義を全く感じない、すでに終わってしまった過去の出来事で あるような展示にも問題あるだろう。 「青鞜」というのは、もともとBlue Stockingという嘲りの言葉からきている。 http://www.library.unsw.edu.au/~gsd/bluesock.htm にある説明を訳すと、 次のようになる。 「「ブルー・ストッキング」は、初期のフェミニストたちや初めて大学に入学 した女性たちに対する侮辱の言葉だった。ブルー・ストッキング週間というのは、 この侮辱の言葉を思い出す一方で、大学生活への女性参加の増加を祝う時である − 青いストッキングをはいて!」 もし今「青鞜」を振り返るとするなら、このような回顧展を開催することではない はずだ。Blue Stockingとはいったい何なのか、今に立ち戻って考える余地はいくら でもあるはずだ。 例えば、欧米の大学のように日本の大学で「青鞜週間」というものを催してして みるというのはどうだろう。日本の大学の理系学部には女性が少ない − 僕が 大学に入ったときは2〜3%しかいなかった。− が、近年、女性の理系学部への 進学が増加するにつれ、研究室での女子学生への性的いやがらせが顕在化して きている − 少なくとも新聞や雑誌の紙面でしばしばみかけるようになっている。 女子学生に対する就職差別の問題など、言うまでもない。まだまだ、充分に意義 があるはずだ。 もしくは、自分のWWWのページにBlue Ribbon − 検閲/倫理綱領に抗議する印だ − のようにBlue Stockingの印をつけるというのはどうだろう。僕がインターネットを 利用しはじめた頃に比べて、今や遥かに女性の利用者は増加していると思うが、 それでもまだまだ男性がかなり優勢な社会と言えるだろう。女性のホームページに 対して不快な形でリンクを張ったり、不快な電子メールを送りつける、といった 性的いやがらせがあったという話もたまに聞く。こういった、インターネットでの 性的いやがらせに抗議し、インターネットへの女性参加増加を祝う印として、 Blue Stockingの印をホームページに付けるということは、面白いことだと思う。 "「青鞜」と「女人芸術」−時代をつくった女性たち"展に欠けるのは、こういった ことを思い付かせるような、そんな力だ。 96/11/16 嶋田 "Trout Fishing in Japan" 丈裕