土曜21日の朝11時頃、最寄りの馬込駅で都営地下鉄・バスの一日乗車券を買った TFJこと嶋田です。今日のテーマは米西海岸のニュー・グロテスクな展覧会巡り。 それぞれが場所的に孤立した画廊でやっているので、画廊巡りとしては非常に 効率悪い。が、どうせ時間に追われているわけでなし、いっそ都内のバスの小さな 旅でも決めこもう、と。携帯CD再生機へB.G.M.にSonic YouthやMinutemenをセット して気分を盛り上げてみる。 まずは、馬込駅から地下鉄の浅草線で宝町駅へ。京橋界隈の画廊をちょっと覗く。 Imi Knoebel展 @ アキラ・イケダ・ギャラリー (-96/12/26) はポップで可愛い。 が、どこも何か違うなぁ、と、日本橋までてくてくお散歩。丸善でちょっと本を 見て (お、「ジャズ・オルタナティヴ」が出てる。) 、通りすがった和定食屋で 昼食を食べると、13時半前に日本橋バス停から東22系統に乗る。向かうは、佐賀町。 佐賀一丁目バス停で下りると、食糧ビルはすぐだ。 Paul McCarthy 展 小山登美夫ギャラリー, 江東区佐賀1-8-13 食糧ビル2F (門前仲町) 96/11/23-12/22, 11:00-20:00 (土日13:00-20:00), 月休 予定の14時より20分早く着いてしまったが、画廊で、小山さんやスタッフの女性の 方とおしゃべりしていたら、いつのまにか14時半だった。今まで、自転車でしか 行ったことがなかったので、非自転車的服装だったら「前にお会いしたことあり ますよね…?」と言われてしまった。今日は一日乗車券で回っている、と券を見せ たら、妙に感心されてしまった。ううう。 その間他に誰も来なかったわけで、つまり、今回の「冬に向かって歩き出す会」も 参加者一名。 で、次なる目的地は大塚。以前から都02系統を全線乗車したいという野望があり、 遠回りにはなるのだが、佐賀一丁目バス停から再び東22系統に乗って錦糸町駅前へ。 四ッ目通りの渋滞がひどく15時15分頃着。丁度発車寸前の都02系統に飛び乗る。 大塚駅前と錦糸町駅前を結ぶ都電の代替路線だ。幼かった頃、僕はこの経路を走って いた都電にしばしば乗っていた。ちょっと思い入れ深い路線だ。御徒町駅前で客が ほとんど入れ代わるのだなぁ。と思いつつ車窓の外をぼんやり (僕が昔に見ていた のはどうだったっけ?) 眺めているうち、いつのまにか気を失い、気が付いたら お茶の水女子大の前。大塚駅前に着いたら16時半。夕暮れの北口の商店街を抜け…。 Raymond Pettibon 展 タカ・イシイ・ギャラリー, 豊島区北大塚 (大塚,巣鴨新田) 96/11/26-12/28 次なる目的地は西新宿。山手線で行けば速いのだろうが、せっかくのバス小旅行 気分なので、ちょっとトリッキーな乗継を試みる。17時前、最寄りの巣鴨新田 停留所から都電荒川線に乗って10分程で学習院下停留所へ。既に街は夕闇に沈み、 車窓を楽しめないのが残念。ここでちょうど来た池86系統のバスに乗り換え。 渋滞する明治通りを15分程で大久保一丁目バス停へ。ここでさらに秋76系統の バスに乗り換え、渋滞する新宿駅界隈を抜けて新宿車庫まで。意外と速く所要 時間は45分程度。うーん、我ながら完璧な繋ぎだ。で、新宿車庫のすぐ裏にある のが、ここ。 Mike Kelly 展 ワコウ・ワークス・オブ・アート, 新宿区西新宿3-18-2-101 (初台,新宿) 96/11/22-12/27, 11:00-19:00, 日祝休 最終目的地は渋谷。ここまで来たらもちろんバスでだ。18時頃に画廊を出て、 初台交差点の南という反則な場所にある新宿車庫バス停まで歩く。しばらく待た されたが、渋66系統のバスに乗りのろのろ山手通りを南下。18時40分頃に、 東急百貨店前バス停で降りた。 時間に余裕があったので、少し音盤店を巡っていたら、dp-iで何故か四日市在住の はずの人に出会ってしまった…。と、Postpunk MLで一緒な人2人と軽く挨拶を 交わした後、いそいそと、終了間際のここへ。 Destroy All Monsters 展 The Deep, 渋谷区南平台町 (渋谷) -96/12/21, -20:00 で、ここで、2週間前にMorphe '96で顔見知りになった水戸芸現代美術ファンMLの 人と遭遇。顔を知らないから気付いていないだけで、音盤屋や画廊や美術館ですれ 違っているMLの知り合いも多いのだろうなぁ。ううむ。 最後はいつもの渋谷南口のいきつけのジャズ喫茶へ。で、これを書いているのだが。 楽しい都内のバスの小さな旅だった。じゃなくて、本題は画廊めぐりだったな。 というわけで、閑話休題。 Paul McCarthy、Raymond Pettibon、Mike Kelly、Destroy All Monstersと観て 回ったわけだが、たいして楽しめなかった。それほど期待していたわけではないが。 僕にとって、今日観て回った作家たちは、現代美術の文脈ではなくポストパンクの ロックの文脈で知った人たちだ。Raymond Pettibonといったら、Minutemen (という LAのバンド) の80年代前半の作品 ("What Makes A Man Start Fires?" (SST, SST-014, '82, LP)、"Buzz Or Howl Under The Influence" (SST, SST-016, '83, LP)、 "The Politics Of Time" (New Alliance, NAR-017, '84, LP)、他シングル数枚) で イラストを書いていたということをまず思い出す。一般には、Sonic Youth "Goo" (DGC, 24297, '90, CD) が有名だろうが。Mike Kellyを知ったのも、Sonic Youth "Dirty" (DGC, DGCD-24493, '92, CD) のジャケットに使われたということでだった。 Destroy All Monstersを初めて聴いたのも、Various Artists "Ambition Volume One" (Cherry Red, CDBRED95, '91, CD) でだった。 96年3月にMoMAのRobert Storrが原美術館で"New Grotesque"という題で講演したとき、 これらの作家を挙げていた。(もちろんとり挙げられたのは彼らだけではないが。) その後の懇親会の席でStorrにSonic Youthなどの話をしたら、意外にも彼は知らな かった。彼は逆にそのことに興味をもち、日本で同様の例がないか僕に尋ねた。 そのときに僕が挙げたのが、大竹 伸朗+ヤマタカEYE (Puzzle Punks) だった。 それから半年余り後に、こうして一挙に展覧会が開かれ、Destroy All Monstersと Puzzle Punksが競演することになるとは、そのときは予想もしていなかったが。 しかし、そういう作家の作品が小奇麗なギャラリーに静かに並んでいるのは奇妙な 光景だ。性急でギクシャク叩き出されるビートとぶっきらぼうに吐き出される政治的で 諧謔味に富んだ歌詞が生み出す矛盾と笑いのある緊張感がMinutemenの魅力だったし、 その音楽にRaymond Pettibonのイラストはぴったりはまっていた。そういう緊張感を 楽しみにしていたけれども、タカ・イシイ・ギャラリーの展示からは、それを感じる ことはできなかった。それは他のギャラリーもほぼ同様だ。中ではThe Deepが最も 似合いの箱だったかもしれないが。The Deepですらちょっと違うと感じた。 少なくとも、MinutemenなりSonic Youthなり、その手の音楽ががんがんギャラリーに 鳴り響いていてもいいのではないかな、と、思った。 あと、観て回る立場にしてみると、どうせ同じ時期にやるなら、どこかでまとめて 開催してもらえると嬉しかった。「アメリカ西海岸のニュー・グロテスク」展、の ように。(MoMAのRobert Storrは、「ニュー・グロテスク」展みたいな展覧会は しないのだろうか?) って、美術館でも場違いな気がするが…。 Soundtracks for these exhibitions: Minutemen "The Politics Of Time" (New Alliance, NAR-017, '84, LP) Sonic Youth "Dirty" (DGC, DGCD-24493, '92, CD) 96/12/21 嶋田 "Trout Fishing in Japan" 丈裕