この土曜から5月上旬にある6時間耐久自転車レースに向けて練習を開始したTFJです。 といっても真面目なものでなく、参加チームの顔合わせサイクリングだ。普通の道を 走っても面白くないということで、川崎の東生田緑地で山道走行会になった。家から 片道1時間程の所に手軽に山道走行を楽しめる所があるなんて!! 朝10時の地面は凍結 していたが、それが表面だけ微妙に解けてきて、さらに滑る。どろどろだ。 ああ、もっと本格的に走りたい。春になったら自転車登山に行くぞ、行くぞ、行くぞ。 マウンテン・バイクに乗っている方、一緒に走りに行きましょう。多摩川河川敷や 生田緑地から本格的な山まで。もちろん、峠越えツーリング、郊外サイクリング、 都内自転車散策からサーキット走行まで、同行者常時募集中。 と、昼過ぎには家に戻り、汗と泥を落し、今度は神田神保町へ。去年末に注文した 本がやっと入荷したと連絡があったのだ。 _ _ _ Raymond Queneau "Exercices De Style" (folio plus, ISBN2-07-039375-7, '96/10/17) Louis Malle 監督の映画「地下鉄のザジ "Zazie Dans Le Metro"」の原作者として 知られる Raymond Queneau (レイモン・クノー) が '47 年に発表した文芸作品。 小説やエッセーというにはあまりに特異な作品だ。 「ラッシュアワーにS系統のバスで、リポンでなくより紐がついたソフト帽を被った 26歳くらいの奴がまるで殴られたかのように首をとても長く伸ばしていた。…。」の ような「要約 "Notation"」で150文字程度で書かれたある光景の描写を、99の文体を 使っておこなった作品である。文体といっても、外国語鈍りとか "Moi je" 口調と いったものから、演劇から短歌まで様々な文学の形式を持ちいたもの、さらに、 数学的や医学的な言い回しを使ったものなど様々であり、その99の形式の名前だけ 見ていても笑える作品である。 文学作品に限らず、芸術作品というものは「内容」と「形式」とにわけられて評価 されることが多い。文学作品であれば、登場人物や物語によってどういう世界が 描かれているか、といったような。そして、文体や文章構成といった形式に凝った 作品は、時として難解な「形式主義的」として批判されることもある。しかし、 本来、形式と内容は不可分 − 形式がその内容を規定する − である。それを、 実感するのに、この99の文体で書かれたこの本はうってつけだ。 僕が Queneau の作品を初めて読んだのは、高校時代に読破した白水社の「シュール レアリズムの文学」シリーズの中の一冊「はまむぎ "Le Chiendent"」でだった。 そちらの小説の方はほとんど記憶に残らなかったが、その解説で「文体練習 "Exercices De Style"」という作品の存在を知った。 それ以来、是非読んでみたいと思っていたのだが、大学に進学してしばらくして、 ペーパーバックで出版されたのを洋書店頭で発見した。ちなみに、86年版はRaymond Queneau "Exercices De Style" (folio, ISBN2-07-037363-0, '86/7/7)。この本を 解読するため(だけでないが)大学の第三外国語としてフランス語を履修してしまった ほどなのだが。それ以来、友達に勧めたりしていたのだが、あっという間に廃刊に なってしまい、また入手困難になっていた。 が、去年末にこのペーパーバックが復刊された。それも "Texte Integral, Dossier" つまり「テキスト無修正、解説付き」である。テキスト無修正、というのがどこの 所か比較チェックできていないが、特に約50ページにわたるJean-Pierre Renardに よる解説には、もともと原案の時点では122のスタイルがあった、とか、1947年版と 1963年版 (因みに、ペーパーバックでは1963年版が用いられているようだ。) での 変更の対照表 (14箇所の変更があるらしい) とか、ぱっと見ても非常に興味深い ことがいろいろ書かれている。もし86年版を持っている人も、ぜひこの96年版も 入手することをお勧めしたい。 こんな本、絶対に翻訳は出ないだろうと思っていたが、ついに去年末に朝日出版社 から翻訳が出てしまった。翻訳マニアでない限り翻訳で読んでも仕方無いとも思う ので、こちらはあえて勧めないが。フランス語が読める人ならば、このペーパー バックを入手してぜひオリジナルに接しよう。そして、単に翻訳をするの ではなく、自分の興味ある表現に対して「文体練習」してみよう。 _ _ _ 神保町に行ったついでに古書店を見て回りたかったのだが、時間がなく収穫はなし。 その後、渋谷に出てレゲエML関係の友達と会って呑んでいたのだが、その席で、 蒐集家はジャケット違いやリミックス違いなどで何枚も同じタイトルのレコードを 買う、といった話をしていた。僕は少し遅刻したこともあり、その前に神保町に 行っていたという話をした。で、入手したばかりの "Exercices De Style" の 96年版と、昔の'88年版と一緒に見せたら、「マニアはレコードも本も同じ買い方 するのね〜。」とか言い放たれてしまった。しくしく。 と、土曜は深酒し過ぎたので、日曜はぼろぼろ。でも、仕方無いので論文の最終 (だと思いたい) 原稿を作成しに職場に来ているのであった。しくしく。 97/2/2 嶋田 "Trout Fishing in Japan" 丈裕