今はJulio Cortazar の短編小説で独り静かに盛り上がっている TFJ です。 日曜は朝から雨降りなので、レコード店・美術館めぐりは忘れて、読書を キメこんでいる。レコード評も美術展評もあまり書く気がしない。 マックス・エルンスト『百頭女』を紹介したら、camito-fan MLでこちらも 既に出ているよ、と教わったので、神保町へいったついでに、探しだした。 簡単に紹介。 _ _ _ マックス・エルンスト 『カルメル修道会に入ろうとしたある少女の夢』 (河出文庫, ISBN4-309-46157-3, '96/8/2) Max Ernst "Reve D'Une Petite Fille Qui Voulut Entrer Au Carmel" ('30) - 巖谷 國士 = 訳 - pp.250, 800円 『百頭女 "La Femme 100 Tetes"』の1年後に出たコラージュ小説の第二弾。 もとネタが同じく大衆版画なので、おおまかな雰囲気は同じ。コラージュが より凝っているのか、文庫大では『百頭女』より見づらい。 違いといえば、『百頭女』に比べて物語性が強くなって、エロチックな題材も 増えているようだが、ばかばかしく余り笑えるものがない。キャプションも 長くなっている。 わかりやすさなら『カルメル修道会に入ろうとしたある少女の夢』なのかも しれないが、『百頭女』の笑いの方が飽きないようにも思う。まず一冊という のなら、『百頭女』のほうだろうか。もちろん、奇書愛好家 (?) は両方とも 必携だが。 _ _ _ 東京都現代美術館へ行ったら、ミュージアム・ショップに『百頭女』の文庫が 平積みになっていて驚いてしまった。しかし、『カルメル修道会に入ろうと したある少女の夢』の方はなし。神保町の書店でも『百頭女』はあっても 『カルメル修道会に入ろうとしたある少女の夢』はない書店が多かったのだが、 後から出た方があまり見ないのは少し奇妙だ。 コラージュ小説第三弾『慈善週間あるいは七大元素』や、他のエルンストの 作品の文庫は出ていないのだろうか。あと、ルネ・ドーマル『類推の山』が 河出文庫から出ている。パスしたが。ハードカヴァーは白水社から出ていた ような気もするのだが、勘違いかな。 河出文庫の所をゆっくり観ていたら、エロチックなんとかというヌードや フェティシュの写真集のシリーズが、より上質な紙に写真を印刷しているのに、 エルンストの文庫に比べ安めの値段がついているのに気付いた。売れる部数が 格段に違うのかもしれないけど、心情的には納得いかないなぁ。 97/2/16 嶋田 "Trout Fishing in Japan" 丈裕