雨が降ると弱まってしまうTFJです。というわけで、午後遅くなって雨があがって から家を出た。世田谷美術館へ行くにはもう時間が遅かったので渋谷に向かった。 そのついでにちょっと足を伸ばして行ってきた。 _ _ _ 「不易流行 − 中国現代美術と身の周りへの眼差し」 "Immutability and Fashion: Chinese Contemporary Art in the Midst of Changing Surroundings" キリンアートスペース原宿, 渋谷区神宮前6-26-1 (原宿) 97/3/8-4/16, 11:00-19:00 (会期中無休) - 陳 箴 (Chen Zhen), 耿 建翌 (Geng Jianyi), 洪 浩 (Hong Hao), 王 勁松 (Wang Jinsong), イン 秀珍 (Yin Xiuzhen), 張 培力 (Zhang Peili), 朱 金石 (Zhu Jinshi); (イン 秀珍 の イン は、伊の旁。) インスタレーション作品中心で、かつ社会機構をかなり直接的に扱った作品だった こともあり、僕の興味と合致してとても面白い展覧会だった。 いきなり、王 勁松の「標準家庭 "Standard Family"」('96) のタイポグラフィー 的な写真作品。7歳の子とその両親をほぼ同じ構図で200組撮影して横20、縦10で グリッド状に並べたもの。三人家族というのは一人っ子政策下では国家標準という 意味でも皮肉だが。この家はおしゃれだな、この家は共産主義バリバリそうだな、 などと思いつつ差分していたら、この差違を生んだ原因の一つが、経済開放政策 下での貧富格差の拡大であることに思いあたって、ドキッとしてしまった。 続いての耿 建翌の「婚姻法 "Marriage Law"」('93) は、中国の結婚に関する 法律の文章をもとに、それに空欄を設けて、中学生に穴埋めさせたものなのだが。 その穴埋めの結果の文章よりも、もし自分ならどう穴埋めするだろうと考えると *自然に*規定された人間関係の不自然さを見るよう。♪Natural's Not In It! というか。「合理的関係 "A Reasonable Relationship"」('94) にしてもそう。 だが、展示として観るとすると直感的でないのがいまいちか。 対して、朱 金石の藁紙を使ったインスタレーション「無常 "Impermanence"」は 圧倒的に感覚に訴える。他の展示に比べると異質 − 現実の社会機構を直接的には 扱っていない − ではあったが。藁紙の白くわさわさした質感や、触れたりその 上を歩いたりするときのばさばさいう音、踏んだときの滑るようでふわっとして いるようでという感覚。そしてうずたかく部屋の広さ高さいっぱいに積み上げら れている圧倒感がいい。 と、入口から観て最初の三作家が良かったせいか、残りはいまいちに感じたが。 それでもそこそこ面白かった。というわけで、この展覧会はお薦め。 _ _ _ 最近は、アジアの現代美術が面白いのか、他の現代美術がつまらないのか? 判断に苦しむところではあるが。今年にはいってから三期にわけて開催中のこの 展覧会もなかなか面白かった。今はもう三期目だけれども。 亜細亜散歩 二 "Promenade in Asia" 資生堂ギャラリー, 中央区銀座8-8-3 資生堂パーラービル9F Part 1: 97/1/17-2/8, Part 2: 2/14-3/8, Part 3: 3/14-4/5, 11:00-18:30 - Part 1) 黄 永ピン, 蔡 國強, 周 明成; Part 2) 金 範, 徐 道ホ; Part 3) 曽根 裕, 周 鉄海, 崔 正化 (黄 永ピン の ピン は石偏に水。徐 道ホ の ホ はサンズイに獲の旁。) 日中韓の現代美術展。といっても、Part 1 は中、Part 2 は韓。Part 3 は日か というとキュレータは日だが、作家は日中韓。 Part 2 の 徐 道ホ の作品が強烈だった。約300着という学生服をマネキンに 着せて部屋いっぱい並べた「High School Uni-Form」は、前後左右密着して縫い 合わせてあるので、ますます異様な黒い塊だ。どうやって搬入したのだろうか? その部屋の壁紙は一見すると細かい黒いドットの普通の壁紙なのだが、よく見ると ドットのひとつひとつが顔写真という「Who We Are」。卒業アルバムからとった そうだが。それに気付いて再び壁や制服が詰まった部屋を見回すと異様だ。 それだけで圧倒されてしまった。 Part 3 は窓を塞いでいた二面の壁が取りはらわれた開放感が良い。残る壁二面の うち一面の壁は鏡張りの段いっぱいにカラフルな模造の砂糖菓子の崔 正化の 「シュガー、シュガー、危険な関係」。開放感と妙にあっていた。 周 鉄海の映画「必須」は、解説パンフレットを読むと凄いとは思うけど、 それだけ観ても絶対そんなことわからないと思われることろが、気になる。 それでいいのか? 資生堂パーラービルはもうすぐ取り壊されるとのことなので、資生堂ギャラリー 観納めということで。 _ _ _ アジアの現代美術の展覧会というと、次はこれか。 東南アジア 1997 来るべき美術のために "Art in Southeast Asia 1997 -- Glimpses into the Future" 東京都現代美術館, 江東区三好4-1-1 (木場) 97/4/12-6/1, 10:00-18:00 (金10:00-21:00) (月休, 5/5開, 5/6休) 4/12 にあるオープニング・イベントのパフォーマンスが狙い目か。 東京都現代美術館ということでいやな予感もしているのだが。 _ _ _ 軽くレコード店、書店を見て歩いているうちに、また雨が降り出してしまった。 こういう日に自転車で外出は無謀だったか。というわけで、早々に Mary Jane に 逃げ込んでいる。これを書いているうちに雨があがったようだ。再び降り出す前に 帰ろう。 97/3/22 嶋田 "Trout Fishing in Japan" 丈裕