いまどきの美術 − 収蔵品にみる女性作家とその作品 斎藤記念川口現代美術館, 川口市芝新町8-32 (蕨) 97/5/27-7/27, 10:00-17:00 (月休), 一般300円 - 松本 陽子, 吉澤 美香, 押江 千衣子, 辰野 登恵子, 増田 聡子, 平林 薫, 矢野 美智子, 鯨津 朝子, 横田 亜弓, 笠原 恵美子, 本間 かおり Sosie @ 佐賀町、ジェンダー @ 都写真美、De-Genderism @ 世田谷、といった ジェンダー / セクシュアリティ関連の企画が続いているので、その手の企画に なっているのかとも予想していたけれども、そんなことはなくて、むしろ、 造形的な面が出た展覧会だった。むしろ、この表面的な社会性のなさに、逆に 政治的な意図 − まあ女性作家ばかり、というだけで、充分、恣意的だが − を 邪推してしまいたくなるくらいだ。 収蔵作品展ということで、それほど期待していなかったし、実際それほど期待 していたわけではないが、まあその程度。 95年2月に原美術館で 笠原 恵美子 と話す機会があって、それ以来、彼女は とても気になる作家なのだが。原美術館での作品や "Lamb" やそのときの話から、 とてもフェミニスティックなコンセプトを持った作家という印象がある。 今回の展示は91年の "This Sentence Does Not Consist Of Eight Words" と いう作品。実物を観たのは初めてなので、観られたのはうれしいけれども。 まだあまりコンセプト的に辛辣じゃない作品だ。しかし、"Lamb" 以降の新作の 話をろくに聞かないので、気になる。新作を観たいのだが。 はじめてこの美術館へ行くきっかけとなった 鯨津 朝子 のは "Blow Up Slice"。 去年の美術館全体を使った素晴らしいインスタレーションを知っているだけに、 コンセプトだけ展示するようなやりかたはなぁ、とは思う。他の作品を共存 させながらインスタレーションするのもアリだと思うのだが。 美術館と名乗りながらビルの一角を使ったギャラリーを広めにしたような 気取らなさや、3Fのギャラリーの一角でセルフサービスだが無料のコーヒーを 飲みながらゆっくりできることが、気にいっている。今回は14時に着いたら テレビ埼玉の取材が来ていたが、それ以降は僕の他に客はなし。というわけで、 独り笠原 恵美子 の作品を横目に「美術手帖」のバックナンバーを読み ふけっていた。もっと便利な所にあれば、頻繁に行くんだけどなー。 _ _ _ と、個人的に気にいっているハコなので久々に静乾会(笑)で予告して行ったの だが、予想通りだれも来なかった(苦笑)。 _ _ _ そういえば「美術手帖」誌の1997年6月号は、セクシュアリティ & ジェンダーの 特集。しかし、読んでいても面白くない。平川 典俊のある種反動的な記事は、 どうして彼の作品に否定的な違和感を感じるのかわかったような気もするが。 ちょうど、数日前に Simon Frith "Music For Pleasure" (Routledge, '88) と いう評論集が amazon.com から届いたばかりなのだが、その中の "Playing With A Different Sex" (もちろん Au Pairs の81年の名盤からとられている。) と いう章で、ポピュラー音楽におけるセクシュアリティ & ジェンダー関係の話題を 扱っているのだが、こちらの方が考えさせられるところが多い。 というか、Simon Frith や Greil Marcus のような評論家 (というかカルチャル・ スタディーズの研究者) が取り上げるポピュラー音楽やその議論に比べて、 現代美術は社会的テーマの取り上げ方が下手というか、それに関する議論が 練られていない、というか、そういう印象を受けてしまうのだ。ううむ。 97/5/31 嶋田 "Trout Fishing in Japan" 丈裕