先日土曜に伊香保温泉…じゃなくてハラ ミュージアム アークへ行ってきた TFJです。原美術館のオープニング・パーティ+バス・ツアーに参加したの だけれども。直前までの梅雨とは思えない猛暑が嘘のような梅雨空。去年秋の 杉本 博司 展のオープニング・パーティ+バス・ツアーも秋雨模様だったのだ。 どうして…。雨の薄ら寒いアークはいやだ〜、と思ったが、霧雨模様だった ものの寒くはなくて良かった。けど、いい陽気の爽やかなアークというのも 味わいたい。しかし、週末明けて、再び好天の猛暑なのが、納得いかないー。 _ _ _ 「アートは楽しい8 - 複製時代」 "Art is Fun 8 - Ways Of (Re)production" ハラ ミュージアム アーク, 渋川市金井2844 (渋川,伊香保グリーン牧場前) - 97/6/12-9/23 (7/17,24;9/4,11,18休), 10:00-16:00 (-17:00 @ 8/9-17), 700円 - 太田 三郎, 今 道子, 佐藤 時啓, 永原 ゆり, 畑 祥雄, 畠山 直哉, Brancusi & Ideal Copy ハラ ミュージアム アークの夏休み企画「アートは楽しい」は、原美術館の コレクションと関係なく、日本の作家を集めて企画している現代美術展。 インタラクティヴ性の高いインスタレーションやメディアアート作品が多く、 ちょっとした現代美術のテーマパークという展示が「楽しい」シリーズだったの だけれど、今回は写真作品や写真を用いた作品が中心のコンセプチュアルな 展覧会だった。こういうコンセプチュアルな作品は僕は嫌いではないが、 はたして、グリーン牧場への観光客相手にどれだけアピールするのだろうか。 例えば、Brancusi の「空間の翼」('26) の'82年の再鋳造作品を2体並べて 展示した Ideal Copy "ICAM (Ideal Copy Art Museum)" は、確かにこういう 展示はめったに観られないので興味深いし、この展示とは少し違うが、版画や 写真、マルチプル作品のようにいくつかのエディションが作られる作品について、 「同じ作品」を数点並べて反復感を出すと面白いかもしれないな、とも思った。 そう、Detroit techno の Various Artists "The Deepest Sound Of Techno" (SSR, '96) のジャケットのように。一つの作品が breakbeats のようにループ されるのを思い浮かべよう。しかし、この "ICAM" が焦点を当てていると思わ れる美術作品における複製や美術館という制度は、観客にとってどれだけ切実に 響くだろうか…。 逆に、畑 祥雄 「ハナコと過ごした日々」は、現代のシステムの中で隠蔽され てしまっているシステム − ここでは養鶏 − を美的に可視化するというもの。 今や肉食するときに、それが屠殺される様子も思い浮かべることも、そもそも どういう品種がどう飼育されてきたのか想像することも、めったにない。 肉屋にある赤い塊を見るのはまだいい方で、外食中心の人なら調理済みの料理で くらいしか見ないし、それが日常生活で自然なものとして織り込まれている。 だからこそ切実な問題になりうるし、例えば The Smiths "Meat Is Murder" での 牛の鳴き声は、当然として検討もされていない日常生活の信憑性への異議の声に なりうるのだが。しかし、この作品は、作家本人のギャラリートークもよく わかるのだが、ただ、そのトークの前に作品だけ見たとき、いまいち説得力に 欠けるのだ。ぱっと観客につかみかかるようなキャッチコピーの言葉、もしくは それに相応する写真があればいいのだろうか…。観客を議論に巻き込むような 矛盾が、作品から感じられないというのがあるかもしれない。作品を構成して いる写真等があまり矛盾していないのだ。 さて、ギャラリーは 杉本 展 以来グレーのまま。佐藤 時啓 はいつものライトを 使ったモノクロ写真作品で、ギャラリーAをいっぱい使った展示も渋くなっている。 それと対照的なのが 畠山 直哉 で、ここだけ、壁を白く塗り直してあった。 畠山 直哉 というと砕石場や街のタイポロジカルな写真作品というイメージが あったのだが、ここでは、砕石場で発破でふきとぶ岩を捉えた鮮やかなカラー 写真。最近はこういう作品を撮っているということだったが、だいぶ作風が 変わってしまったな。確かにインパクトはあるが、以前のちょっと社会的で 冷徹な写真の方が好きだった。 切手を使ったインスタレーション/コラージュの 太田 三郎 はあまりコンセプ チャルではなく造形的な面が出ていたが、あれ? という感も。ちょうど銀座の プラス・ギャラリーで個展中なので、そちらと合わせて、という感じか。 さて、期待の Cafe d'Art の企画ケーキは、畑 祥雄 「ハナコ」ケーキ。単なる ヒヨコ型のケーキ+クッキーという感じで、かわいいけど、作品との関係が いまいちか。ケーキはメロンのムースがベースか。 _ _ _ パーティの後は伊香保温泉。前回までは駐車場から源泉露天風呂まで20分ばかり 石段を登っていたのだが、この7月から源泉露天風呂の近くまでバスで行かれる ようになっていた。おかげで15分は余計にゆっくりできるようになったが。 温泉街を歩く情緒は得られなくなるわけで、いいのかわるいのか。温泉あがり には、駐車場まで石段を下ったので、それはいいのだけど。 しかし、何度行ってもいいなー。こういうところで現代美術話が出来てしまうと いうのもいいね。 97/7/15 嶋田 "Trout Fishing in Japan" 丈裕