秋の散策日和の11月1日、ふらふらと自転車で谷中へ。SCAI The Bathhouse に12時、 と、WWWで出現予告したものの、いつものごとくどうせ誰も来ていないだろうと いう油断もあり30分ばかり遅刻したら、待っていた人がいました。ひー。他にも 待った人がいたらごめんなさい。というわけで、観てまわったのは、これ。 Art-Link 上野-谷中 '97 CASA, SCAI The Bathhouse, 上野の森美術館, 等 (上野, 日暮里) 97/10/10-11/3 まずは、最も日暮里寄りの「『時の蘇生』柿の木プロジェクト」@ CASA。 以前にハラ・ミュージアム・アークで講演を聴いたときに、社会的なテーマ (長崎原爆投下) を扱うには、あまりにもナイーヴなプロジェクトだと思ったが。 作品を観ればまた別かなとも思っていたが、そうでもなかった。感傷的だ。 関連企画をやっていたわけでないが、朝倉彫塑館 (月金休, 9:30-16:30) は、 建物は一見の価値あり。表から入るとモダンな洋館 (上の方は一部和洋折衷)、 裏から入ると数奇屋造りの和風の屋敷、それが、まるで木に竹を継ぐかのように バキっと繋がっているのが凄い。20世紀初頭 (に、この建物は建てられた) の 日本の西洋近代化の悲喜劇の縮図を見るかのようで、いろいろ考えさせられて しまった。朝倉彫塑館は、中学生時代から何度となく前を歩いていたのだが、 入ったのは初めて。こんな面白い建物だったとは。さて、展示の方だが、 洋館の上で展示していた朝倉 文夫の猫の彫刻が、谷中らしく感じてしまった。 というのは、「眠れる森の美術」展 - 赤瀬川 原平 @ SCAI The Bathhouse の テーマが猫。中の展示をぱっと観たときは、まあそんなものかな、という感じ だったけれど、朝倉彫塑館で猫の彫刻を見たら、町中の猫まで気になって しまった。だが、なんといっても一番は、柏湯の煙突上の「猫日和」。 夕方に遠目に見える、夕日に染まって青空に浮かびあがる巨大な猫、なんて、 もう最高にいい。谷中はあまり高い建物は無いので、ほんとに映える。 という SCAI The Bathhouse では、モイ・カフェというベトナム喫茶屋台が 出ていた。以前にベトナム三人展 @ ミズマ, 表参道のときにみかけたような 気がしたのだが、やはりそのときと同じ人がやっていた。谷中は面白い喫茶も そこそこあるのだけど、こういう店がイヴェントに合わせて出るというのもいい。 友成 潔 展 @ アートフォーラム谷中、「美術の窓口」展 @ クマイ商店、は、 ピンとこなかった。アートフォーラム谷中 〜 クマイ商店にかけての町中で 展開していた「Rink Link」展は、私美術の悪い見本という感じ。 ついでに行った大名時計博物館は、確かに外見はあやしげで凄いが、単に 手入れが行きとどいてなくてボロボロという感じ。それだけのために行く所 ではないだろう。 M in M Project @ 京成博物館動物園駅 は京成側の都合で、パフォーマンス 以外は中止になっていた。残念。 「眠れる森の美術」展 - 中村 政人 @ 上野の森美術館別館 は、『美術と教育』 という分厚いインタヴュー集の閲覧即売。Muntadas 展のときも感じたのだけど、 一般の人に見せるという感覚が欠如しているのか、妙に傲慢に感じてしまう。 ここまで来たら赤塚 不二雄 @ 上野の森美術館。原画を観てありがたがるほど フェティシュではないが、この日は、18:30から赤塚 不二雄 with 坂田 明 (as) and 中村 誠一 (ts) のトークショー & ライヴ。全部で1時間余りで、演奏は、 最初にそれぞれのソロ、終わりにデュオで、そんなに凄い演奏はなかった。 なごやか。全体的にノヴェルティを売らんかな、という態度が気になったが。 まあ、そんなものかな。これはトークショーついでという感じだったけど、 美術館でのライヴとか、もっと一般的にやってもいいのではないかと思う。 しかし、250枚出た整理券も150枚余りしか捌けておらず、告知不足を感じる。 で、日が暮れて真っ暗な上野公園を抜けて再び谷中へ。「窓明かりの美しい街」 という街路照明プロジェクトを観る。SCAI The Bathhouse 界隈の家の照明を、 門柱灯や駐車場照明は青系に、窓明かりは赤〜黄系にするというもの。 谷中はネオンサインなどの明るい照明が無い町なので、これがなかなか奇麗。 参加していたのが商店くらいで、一般の家があまり参加していなかったのが惜しい。 しかし、上野桜木から谷中の墓地の方を観たときに正面見えるビルの窓が、 4階が赤、3階が黄に染まり、一階外の照明がぼつんと青く光って見える様子 など、とっても印象的だった。 と、計8時間余り、いろいろ楽しめた谷中散策だった。去年の秋にも「谷中 プロジェクト」というのがあったのだが、これはほんとうにひっそり細々と やっていた。こんなに大掛かりなイヴェントをするようになるとは思わなかった。 上野の森美術館では自転車貸出までしていたし。こんなイヴェントが無くても 散策していて楽しい谷中だけれども、こういう町中イヴェントが意外と似合う 町なのだなぁ、と思った。 97/11/3 嶋田 "Trout Fishing in Japan" 丈裕