雨の土曜に観て回った、今年で3回目となる青山のアート・イベント Morphe。 しかし、今年は急遽開催が決まったこともあるのか、街中や店先を使った展示 もあまりなく、画廊での展覧会の寄せ集めという感もある。画廊めぐりする いい機会にはなるのだが。Morphe に参加していない展覧会も併せて観ようと、 ギャラリーツアーには参加しなかったのだが、Morphe 企画外のものの方が 楽しめたかもしれない…。というわけで、Morphe 企画かどうか関係なく、 青山〜原宿〜渋谷と観たものの中から、ひっかかったものを軽く紹介。 Art Scope '97 - 鯨津 朝子: Time Thickness スパイラルガーデン, スパイラル1F (表参道), tel.03-3498-1171 97/11/25-12/3, 11:00-20:00 「鯨津 朝子 − 旋回する表象」展 (斎藤記念川口現代美術館, '96) の空間が とても気にいって、それ以来気になる作家。白地に勢いのある黒い線を使った グラフィック・インスタレーション作品なのだが。螺旋状のスロープのある スパイラルガーデンの空間をつかって「旋風」とでもいう線の流れでも作って いるかと思ったら全然違った。四角く紙を敷きつめており、線が見える部分は ほんの少し。旋回・放射、という感じだった線の流れも、マトリックス状に なったかな。悪くはないが、かなり静的な印象。 Jean-Pierre Raynaud Comme des Garcons, 南青山5-2-1 (表参道), tel.03-3406-3951 97/11/22- ブティックのウィンドウをいっぱいに使ったインスタレーション。おなじみ 大きなポット (植木鉢) の形がいくつもずらり。外から観ると金色、内から 見ると銀色。けれども、単純な形状もあって、ぎらぎらせず落ち着いた感じ。 屋代 敏博 個展 Asiz Aoyama B2 Gallery, 南青山3-3-16 IQビルB2F (外苑前), tel.03-3405-5123 97/11/21-12/6 (月祝休), 11:00-23:00 Morphe '97 の企画の中で最も面白かったもの。銭湯の男湯と女湯を対称な アングルで撮影し繋ぎ合わせた写真作品。一見、鏡像に見えるところが、 はっとする。意外とどの銭湯も男湯と女湯と対称な作りになっていて、 それもどちらが男湯でどちらが女湯かわからないものが多い、というのも 面白かったが。展示はいろいろな大きさのものが散漫に並べてあるので、 いまいちかもしれない。ギャラリーに作家さんがいて、ポートフォリオを 観せてもらったのだが、見開き1作品という同じ大きさで、何作品も (日本中を撮って歩いている!) どんどん観ていくと、構図の統一感もあって、 とても面白い。もちろん、もっと細部をゆっくり見て銭湯建築探偵なノリ でも楽しめそう。そういう形式での写真集本が出たら欲しいかも。 Tony Oursler + Mike Kelley: Poetics Project ワタリアム美術館, 神宮前3-7-6 (外苑前), tel.03-3402-3001, http://www.watarium.co.jp/ 97/11/23-98/3/29 (月休;12月中の月開;97/12/31-98/1/5休), 11:00-19:00(水-21:00) "The Lowest Form Of Art"。去年、The Los Angels Free Music Society, _The Lowest Form Of Music_ (RRRecords, RRR-CD-17, '96, 10CD) などと いう Box Set を買ってしまったのだけど、その美術版とでもいったところ。 (実際、どちらも Cal Arts 拠点に70sから活動。) パンフレットがCDケース 大で、その作りがその CD Box Set と同じノリだったので、笑ってしまい ました。ううむ。今まで、ワコウ・ワークス・オヴ・アートとかで小奇麗に 展示された Mike Kelly や Paul McCarthy とか観ても、いまいちピンと こなかったけど、この documenta X の展示を持ってきたこの展覧会の そこそろ凝ったインスタレーションを観て、その猥雑さを少し感じることが できたような気がした。テーマも「ロック・ミュージック」、特に「パンク」 の歴史の構築のようだし。けど、カトリシズムに関するものも多く、ちょっと ピンと来ないものもあるのだが。 Tony Conrad, Genesis P. Orridge, Kim Gordon, Thurston Moore, Dan Graham, Arto Lindsay, Alan Vega, David Byrne, Lydia Lunch, Laurie Anderson, John Cale のインタヴューのヴィデオとか見られるが、ちゃんと見ると、 かなり時間かかりそう。会期中は何回でも再入場できるので、何回かに 分けて見ればいいのかもしれないが。 ボードリヤール、ギッリ、バース写真展 − 消滅のアート パルコギャラリー, 渋谷パルコパート1 8F 97/11/7-12/9, 10:00-20:30 - Jean Baudrillard, Luigi Ghirri, Uta Barth _Art Forum_ 誌のギャラリー広告で名前はよく見て気になっていた Uta Barth だが、3人の作品の中で気にいったのは、その Barth だった。極端にピントを 外した、というより、その手前の虚空にピントを合わせた写真で、その結果と して、背景とされてきたものをそのまま前景にするような感もある。 あとTVのように写真の枠の外からふっと人物が現れてきそうな、そんな感も するのが面白い。特に、ほぼピントの合った手摺の映った作品とか。 _Simulation And Simulacra_ で知られる Jean Baudrillard だけれども、 写真はそんなに面白くなかった…。 と、Morphe '97 関係の企画でとりあげたのは1つだけになってしまった。ううむ。 97/11/30 嶋田 "Trout Fishing in Japan" 丈裕