現代美術に関する本の紹介。 Amana Cruz, et al _Performance Anxiety_ (Museum of Contemporary Art, Chicago, ISBN0-933856-46-6, '97, Book+CD) - Crator: Amanda Cruz. Essay by Robert Nickas. - Angela Bulloch, Cai Guo Quang, Willie Cole, Renee Green, Charles Long, Paul McCarthy, Julia Scher, Jim Shaw, Rirlit Tiravanija 97年の4〜6月にシカゴ現代美術館で開催された _Performance Anxiety_ という 展覧会のカタログは、なんとCD付。題名からもわかるよう、パフォーマンス・ アートの展覧会なのだが、CDその音を集めてものになっている。 知られたところでは、Charles Long のものは、95年に Bonakdar Gallery, NY で 行われた Stereolab とのコラボレーションの再現で、CDにはそのときに限定で リリースされた Stereolab の曲が収録されている。ちょうどワタリアムで展覧会 している Paul McCarthy は、96年末に来日した際のパフォーマンスと思われる _Santa Cruz_ の再現の様子の音が収録されている。 と、こういった試みは、日本でもある程度なじみになっているものだと思うし、 そういう意味ではとりつきやすいカタログではないかと思う。それに交じって、 Cai Guo Quang (蔡 國強) の万里の長城を使った爆発プロジェクトがあったり するのも面白いし。Julia Scher の女性パフォーマーの女性警備員の衣装なんて、 目を惹くくらい可愛いし。CDを聴きながらパフォーマンスやインスタレーションの 様子を写真で観て楽しめるものになっている。ドキュメンタリーのヴィデオが 観ると冗長になりがちなだけに、こういう本とCDの組み合わせのほうが楽しみ やすいのかもしれない。 キューレターの Amada Cruz は、この _Performance Anxiety_ という企画について Dan Graham の "Public Space / Two Audiences" というエッセーを手がかりの 一つに語っているのだが。それはある種の観客参加型の作品は観客に不安を引き 起こす、というその効果に焦点を当てた展覧会になっている。 このカタログには Robert Nickas (95年の原美術館での _Pictures of the Real World (In Real Time)_ 展のキューレター) によるパフォーマンスに関するエッセー "A Brief History of the Audience: 1960-1981" があるのだが、Vito Acconti, Dan Graham, Gordon Matta-Clark なののパフォーマンスと並んで James Chance and the Contortions や Iggy Pop and the Stoogies のライヴが一連のものとして 語られていて、その様子の写真を眺めているだけでも面白いものになっている。 さて、このカタログでは、Dan Graham, "Public Space / Two Audiences" への 言及が目につくのだが、このエッセーが収録された本がこれだ。 Dan Graham _Rock My Religion_ (MIT Press, ISBN0-262-07147-9, '94, Book) Patti Smith に関するエッセーから題が取られた Dan Graham のエッセイ集。 Alain-Robbe Grillet の引用から始まり、Donald Judd の美術作品、さらに Steve Reich の音楽に至る minimalism に関するエッセー "Subject Matter" や、 ポスト・パンク期の女性・男女混成のロックバンドに焦点を当てた "New Wave Rock and the Feminine"、英国式庭園からディズニーランドさらにラ・ヴィレット公園に 至る建築・アーバニズムに関するエッセー "Garden as Theater as Museum" など、 現代美術から、パンク・ミュージック、そして現代建築に関するものまで、幅広く 興味深い内容になっている。 かなり大きな本で読むのも大変な本だが、94年に出たときに買って以来、参照する 機会の多い、とても参考になる本だと思う。 美術、ポピュラー音楽、建築というジャンルを越えて現代の文化を観ることに 興味がある人に薦めたい。 98/1/2 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕