去年末にザ・ギンザ・アート・スペースで観た「Lemon Project 03」が良かったので、 3月22日にアーティストのトークに合わせて水戸まで行ってきた。 廣瀬 智央 ― Paradiso 水戸芸術館現代美術ギャラリー (水戸), 水戸市五軒街1-6-8 tel.029-227-8120, http://www.arttowermito.or.jp/ 98/2/28-3/22 (月休), 9:30-18:30 ギャラリーいっぱいに直径5〜6cmのスポンジ・ボールが敷き詰められた作品。 その中に入ってボールをかき分け蹴散らし楽しむというもの。もちろん、横になっても 泳ぎ回っても可。(横になったり、座り込んだりしたが、泳ぎ回りはしなかったが。) 淡くヨーグルト様の甘酸っぱいの香りがつけられているのと、ボールの色がイエロー、 ピンク、ライトブルーのパステルカラー、ということもあり、ソフトな印象を受ける。 これで思い出したのが、96年に青山 Comme des Garcons であった Jesus Rafael Soto の展覧会。天井からぶら下がっている無数のチューブをかきわけて体験する作品で、 こういう中でゲームすると楽しそうだと思ったものだが、この作品もそう。この Soto の展覧会のパンフレットにも楽しそうにはしゃぐ子供の姿が用いられていたの だけれど、この 廣瀬 智央 ― Paradiso も子供受けするものだろうし。 その一方で、「Lemon Project 03」に比べて半端な気もする。レモンの比べて違和感 という意味でのインパクトが弱い。そもそも子供向けの遊戯施設にありそうな感じが するものなのだ。そういう意味では、水戸芸術館に臨時で作られた遊戯室、という 程度の感もある。 で、トークを聴いてみて思ったのだけれど、もし、美術館という場所にあのような 場所を作ったことに意味を求めるのであれば、あのように隔離されたギャラリー ではなく、普通の展示室の一つの床をあのようなスポンジ・ボールで埋めてしまう というくらいのことをすべきなように思う。Daniel Buren の作品を観に行ったとき にも思ったのだが、ホワイト・キューブにいくら縞々を描き込もうが、スポンジ・ ボールを敷き詰めようが、ほとんど異化の効果は無いと思うからだ。異化すべき なのは、ホワイト・キューブそのものではなく、そこに作品が展示されている という状況のはずだ。 トークは妙に「リアリティ」に焦点を当てたもので、思わず、それじゃあこの作品は 「言っていることが自分自身の体験を語っているのであれば、誰にも批判できない というあのハイスクール説教に守られた心からの陳述」(by Greil Marcus) の ようなものかよ、とかツッコミを入れたくなるようなもので、ちょっと期待外れの 感もあり…。ううむ。 さて、メインの方でやっていたのは、国際巡回展。 ジェフ・ウォール展 (_Jeff Wall_) 水戸芸術館現代美術ギャラリー (水戸), 水戸市五軒街1-6-8 tel.029-227-8120, http://www.arttowermito.or.jp/ 97/12/13-3/22 (月休), 9:30-18:30 以前に Dan Graham との共作 _Children's Pavilion_ の Jeff Wall 分だけを 世田谷美術館で観た覚えがあるくらいで、たぶん、こうやって観るのは初めて なのだが。それとのつながりという意味でも、『若い労働者たち』が一番ウケたが。 と、基本的にはこういう作品は好きだし、これに駅の広告 (の多くもライトボックス) 風のキャッチコピーとか付けて遊びたくなるところもあるのだけど。キャッチ コピー無しでも、実際に街中に展示してみたら、とかふと頭を過ぎったけれども、 benetton の広告みたいにしかならなかったりして…。ううむ。 そう、benetton の広告じゃないけど、「荒らされた部屋」とかまだしも、 「戦死した舞台の語らい」にしても、いまいち、あまり観たくないものなのに つい観てしまった、ではなく、どうも安全な所から鑑賞できてしまうような感じも あって、それも気になったのだった。うううむ。そういう意味では、「突風 (北斎にならって)」のような軽い笑いを誘うような作品の方が、逆に好意を感じて しまった。 98/3/22 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕