陽気もいいと、自転車を乗っていても気持ちいいですね。早稲田まで自転車散策に 行く気分にもなるというものです。 _ _ _ 加藤 力 SOL, 新宿区早稲田町74箕作ビル1F, 03-3203-8646 1998/4/7-25 (日休), 12:00-20:00 加藤 力 といえば、一昨年の Morphe '96 で最も印象に残った作家だ。しかし、 原宿同潤会アパートの屋上に赤い大きなバルーンを配した作品は、その場所だから 成功していたという印象もあり、普通の画廊ではどのような展示をするのだろう、 という興味もあった。 画廊の真中に、赤いビニールシートを張って迷路状のものを作ってある、という インスタレーション。ビニールシートは赤いバルーンのものと似た感触のものだ。 迷路にはカーペットが敷いてあり、靴を脱いで中に入ることになる。一人ずつ。 中心に向かうほど光が入らず暗くなっていくのだが、その中央は、壁も単にシートを 張っただけではない厚さがあり、そのかがんで入るような入り口から入ると、 真っ暗になる。床はほんのり暖かい。電気カーペットが敷いてあるよう。その上に 座っていると、くつろく感じになる。しかし、これだけ? 偶然に画廊で出くわした知り合いに、本来は音響的な仕掛けがあるらしいと教わる。 実際に画廊の隅にはリバーブやらアンプやらの器材も置いてある。というわけで、 中で音を出してみるなど、いろいろ試してみた。が、何も起きない。そのうちに、 知り合いが壁に仕込んであるマイクを発見。スイッチが切れていたようなので、 そのスイッチを入れてみる。上の方に設置されたスピーカーから微かなノイズが 降ってくるも、特にマイクが拾った音をどうこうした感じでもない。こんどは、 僕が入って、さらにマイクをいじっていたら、状態によってピーキーとハウリング することが判った。うーむ。 作家がいたら、ちゃんと作家の意図した音響設定で体験してみたかったと思うが、 そうでなくても、楽しめるインスタレーションだった。原宿同潤会アパートでの インスタレーションと表面的な趣は違うけれども、なんとなくほっとする感も 共通するような作品だったと思う。 しかし、以前に VA Nishiogi であった 鈴木 貴之 + Christoph Charles のサウンド ・インスタレーションを観たときに作家さんと話してて思ったことだけど、 やはり仕掛けを安定して運用するのは難しいのかなぁ、と改めて思ってしまった。 早稲田といえば、こちらも。 東恩納 裕一 ギャラリーNWハウス, 西早稲田1-3-7NWハウス, 03-3204-0246 98/4/1-13 5階の、既製の簡易のカバー付き衣服ハンガーラックを使った走馬灯を観ると、 1階の、既製の花柄の布地を使ったライトボックスとか、白い布の代わりにテーブル クロスかカーテンかといった布を張ったキャンバスの作品も、なるほどと思う。 もうちょっと布地のイメージを裏切って欲しいかな、という気もするけれど。 その他、観て回ったものの中から気になったものを。 Thomas Ruff ギャラリー小柳, 銀座1-7-5, 03-3561-1896 会期等不明 昨年にあった Bernd & Hella Becher とその弟子の写真展で知った Thomas Ruff の 写真展。ホログラフィっぽいのはあまり興味を惹かなかったのだけど、気になった のは2点縦だけでも背丈ほどもある巨大な天体写真。こんなに大きく引き伸ばされた ものを観るのは始めてなので、ちょっと新鮮。それも、流星観測なんかで夜空を 見上げて見えるものとも違う。照明のせいで、写り込みがあるのがちょっと惜しいか。 ギャラリーの人の話しでは、本人が撮影したものではなく、天文台が撮影したもので、 それを大きく引き伸ばして展示してみせることが、この作品のコンセプトとのこと。 本多 真理子 ― Process 5 Toki Art Space, 神宮前3-42-5サイオンビル1F 3/30-4/12 象の心拍数とネズミの心拍数で滴る水を集めて、その隣でアマリリスを水栽培する というインスタレーション。観ただけでは何だか全然わからないのだけど、作家に 説明してもらえたこともあり、なるほどとは思う。しかし、哺乳類は心拍数と寿命が 反比例する、という話に感銘を受けて作品を作ったというならば、口で説明しなく ても直感で訴えるような何ががあってもいいんじゃないかなぁ、という気もして しまう。それに、いまいち僕の問題意識とずれるかもしれない。うむ。 _ _ _ しかし、春になってやっと自転車で画廊巡りする気分になってきたのだけれど。 で、例によって自転車乗りな服装だったわけですが、作家さんに「以前からよく その格好で画廊めぐりしてますよね。銀座とかで、よく見かけるんですが…。」 と、声をかけられてしまうとは…。ううむ。 98/4/11 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕