野外アート展へは、やっぱり、ピックニック・サイクリング気分で、というわけで、 成田まで輪行して、そこからサイクリングしてきた。しかし、曇りがちで日もろくに ささず、陽気はうすら寒く、実際のところは、ちょっと辛いものがあった。ううむ。 芝山野外アート展'98―地无不覆 芝山仁王尊界隈, http://evam.com/niouson/ 98/5/3-5/31 - 伊能 敬子, 石井 勢津子, 上野 正夫, 大村 雄一郎, 景山 健, 加藤 力, 倉重 光則, 小林 聡子, 作左部 潮, 武内 カズノリ, 高橋 睦治, 半田 正幸, 野村 俊幸, 渡辺 好明 加藤 力 の赤いバルーン作品は、緑の丘の上に立つ芝山古墳・はにわ博物館の足の 下いっぱいに大きく膨らんでいた。題名は『顕かになるモノ』。屋根の形や窓から、 ちょうど顔のように見え、その口が膨らんでいるようで、とってもユーモラス。 違う見方をすると、建物に踏みつけられてはちきれんばかりの赤い風船、という 感もある。で、そんなことを抜きにしても、緑基調の背景や灰色の建物に鮮やかな 赤が映えているし、その建物によって変形させられた球形が緊張感とともに周囲の 風景を異化していて、かっこいい。バルーンという意味では、Morphe '96のときの 作品と同系の作品だけど、原宿ではむしろリラックスした空間を構成していたのに、 この芝山では緊張感のある空間になっていて、その対称的な感じがする。これは これとして好きな作品だけれど、やはり、SOL ('98/4) の今後の展開が気になる。 小林 聡子 は、規則的に生えたまだ幹も細い若い杉林の間に、大きな長方形の 明るい水色の網を張ったもの。網は20cm四方程度のものを大きく縫いあわせた もので、その合わせ目が格子模様のように見える。また、網の目は非常に細かく 二重になっているので、モワレ縞のような模様が見える。茶や濃緑を基調とした 暗めの杉林の中に明るい水色の網がぱっと張られているのは映える。また、杉林は 自然にしては (まあ、手入れが入っているのだが) 幾何的な規則性が強い空間と いうことも、水色の長方形が妙に調和している。もう少し、違和感もあった方が 面白いかな。 作左部 潮 の作品は、横浜野外美術展'97で観たのと同趣向の、自然な枝木で組んだ 櫓状のものの上に大きな石を載せたもの。横浜のときは、周囲の芦原の刈り込み 方からして面白かったのだけれど、今回はこの櫓があるだけだけなので、いまいち 物足りない。あと、倒壊防止のためか、周囲の木から石にワイヤーが張ってあって それも、ちょっと興ざめ。横浜のときみたいな「どうしてあんなところに!」の ような驚きに欠けるのが惜しい。 武内 カズノリ の作品は、開けた場所に1m弱くらいに切られた細目の杉の丸太を 並べて、渦巻き状に木道を作ったもの。その上を歩いていくという趣向。その上を 歩いているときは、それなりに面白かったけれども、それだけという気も…。 石井 勢津子 のラメの入った薄い透明なプラスチック (?) のシートを丸めて 並べた作品。高さ1mはあろう大きなものから、池に浮かぶ小さなものまで、 場所もあちこちにあったが。天気が良ければきらきらしてまた印象が違うような 気がするのだが、曇りの日にはいまいち地味。同様なのは、上野 正夫 の生竹を 縄で縛って星状に組んだ作品。日時計になるように向きを考えて設置されている そうだが、曇りの日は役立たず。場所的にも、丘の上の見晴らしのいい場所に あって、天気が良ければよさそうな気がするんだけれども。惜しい。 と、気にいった作品、天気が良ければ楽しめたかもしれない作品はあったものの、 全体としてはテンションが低かったかもしれない。作品数が少なくてこじんまり している割には、その全体としてのまとまりに欠けた印象もあるし。あと、これは 天候のせいもあるが、作品のある界隈を単にピックニックだけしているとして、 楽しめるものではなかった、ということもあるかもしれない。 気になったのは、インフォメーションセンターというか本部というかそういった 所が見当たらなかったこと。あったのかもしれないが、所々に立っていた地図にも 表示はなかった。これは、かなり不親切なような気がする。僕の場合、幸運にも、 ちょうどガイド・ツアーの人たちに遭遇したので、ガイドの人に地図と作品解説の コピーをもらうことができたのだが。あと、メインとサブの会場の間の案内も全く なかったし。距離もあるので、途中で迷ってしまいましたよ。 会場が公共交通機関によるアクセスがほとんどできない場所のうえ、メインとサブの 会場が3kmほど離れているので、自動車で行くのがお勧め (自転車でもいいけど)。 たた、あの界隈の県道は細くて標識もほとんどあてにならないので、土地鑑が無い なら、ちゃんと道路地図を持っていかないと、確実に迷います。僕はフライヤの 地図を参考にしようとしたら、それはほとんど役に立たなかった。注意したほうが いいだろう。 98/5/4 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕