16日の土曜に行ってきました、伊香保温泉日帰りツアー。TFJ's Sidewalk Cafe で 声をかけたところ、2人の方が参加して下さいました。おかげで、楽しい道中を過ごせ ました。特に、車を出してくださった石川さん、どうもありがとうございました。 _ _ _ 朝9時過ぎに東京を出て11時頃には群馬の森へ。天気が良く人出が多い。さらに、 中学校の課外授業でもあったのか近代美術館の周囲は制服を着た生徒で溢れていた。 これは展示室も…、といやな予感がしたのだが、そちらはがらーんとしていて、 そういった生徒の姿は一人も見られなかった…。一〜二人いたらそれはそれで 嬉しかっただろうが。 ヨーロッパからの8人 _Eight People from Europe_ 群馬県立近代美術館, 高崎市岩鼻町239, tel.027-346-5560 98/4/11-6/14 (月休), - Marlene Dumas, Piter Fischli/David Weiss, Katharina Fritsch, Douglas Gordon, Niele Toroni, Sigmar Polke, Franz West; Kasper Koenig (curator) 現代美術棟開館記念で開催されているヨーロッパの現代美術の展覧会。ゲスト・ キュレータとして、Muenster 彫刻プロジェクトのディレクタ、Kasper Koenig を 招いている。 一番印象に残ったのは、Katharina Fritsch と Niele Toroni の展示されていた 展示室5。これはかなりカワイイ。 Katharina Fritsch は、以前から観たいと思っていた『男とネズミ _Mann und Maus_』 ('91-92) が観られる。ベッドで寝ている男の白い像の上に巨大なネズミの黒い像が 載っているという高さ2m以上はあろうポリエステル製の彫刻作品。ネズミがもっと 恐い姿をしていたり、男の寝顔が歪んでいたら、単に悪夢を象徴する作品に過ぎなく なっているところだろうが、ネズミがかわいらしく上半身を起こしていたり、 男の寝顔も安らかだったりして、その妙にとぼけたというか外した感じが実にいい。 しっぽが結ばれたたくさんの黒いネズミが輪になって並んだ彫刻『ネズミの王様 _Rattenkoenig_』('91-98) も、小さなモデルがあったが (これもカワイイ)、巨大な 作品も観てみたい。 Niele Toroni は、いつもの『30cmの間隔で規則正しく繰り返される50番の筆の痕跡 _Imprint of Paintbrush, no.50 at Regular Repeated Intervals of 30cm_』だが、 大きな作品が無い、というか、壁一面に斑点があるような作品が無いのがちょっと 残念。五線紙の上に斑点を書いた Thelonius Monk に捧げる作品があって、ジャズ 好きなのかな、と思わせるものがあったが。カタログを見たら Irene Schweizer 率いる COWWS Quintett とのコラボレーション、Niele Toroni & COWWS Quintett, _Music In Portikus_ ('88) の写真があって、とても気になる。COWWS Quintett の 録音というと、COWWS Quintett, _Grooves'n'Loops_ (FMP, CD59, '93, CD) しか 知らない (しかも未聴) のだが、このプロジェクトの録音は残っていないのだろうか。 Douglas Gordon のヴィデオ作品は、手首に輪ゴムを止めてどんどん赤くむくんで いく様子と卑猥な連想をさせるような手の動きの対比が、気持ち悪くて気になる作品。 Sigmar Porke の6m×5mの巨大な作品『デューラーの帯 _Duererscrleife_』('91)は、 どうコンピュータ出力したのか気になって仕方なかったのだが、一緒に観に行った 一人はどう搬入したのか気になっていたとのこと。新しく出来た現代美術棟の展示室 だからこそ展示できた、という感もあるが。いったい何を気にしているのやら。 その部屋の片隅には "Close my eyes, open your mouth" と書かれて、麻のソファが 置かれている。そこに目を閉じて口を開けて座っていると、人の気配が気になって 不思議な感じだ。Peter Fischli/David Weiss のヴィデオ・インスタレーションは いまいちとりとめないし、折り畳み椅子はやめて欲しいけれど、展示室5から展示室2 への通路に置かれた一見作業後の道具を片付けないでそのまま置いてあるかと 思ってしまった、無題の作品は、やられた、という感じ。 と、いろいろ面白い作品だったが、統一感は無い。ちょっとしたショーケースぽさ もある。カタログも各アーチスト毎に分冊になっていて、かなり意図的にテーマを 設けずにばらばらに併置した感もある、そんな展覧会だった。しかし、段ボール箱に 納められた8分冊のカタログ、ばら売りしてくれれば、気にいった作家の分だけ 買ったのに…。 この群馬県立近代美術館は 磯崎 新 の設計で、立方体を基本に展開された設計 されていない設計という話で、それを楽しみにしていたのだが、それほど気になる 部分はなく、ちょっと拍子はずれ。新設された現代美術棟は独立した別棟になって いて違う展覧会をできるようにしているのかと思ったら、そうではなかった。 しかし、まるでデパートの催事場か見本市会場のような常設展示室はいったい…。 美術館に併設されたレストラン NAVEYA は、宮脇 愛子 の彫刻が舞う池を臨む所に あるのだが、コースで1,500円 (スープ、デザートを付けると2,000円) というのは かなりまとも。これで、企画展と連動したメニューを出すとか工夫すれば、かなり ポイントあがりそう。でも、近くに食事できそうな所が無いので、ここが悲惨だと かなり困りそう…。 _ _ _ と、レストランでゆっくりとランチをした後、2年前にギャラリー小柳で拾った 『ビデオ・アート最前線』展の葉書だけを便りに、前橋にある北関東造形美術館へ。 道が判らなくて電話で問い合わせたところ、「国道50号線を前橋から桐生方面に 向かって走って、女屋町交差点を左に折れ、しばらく走った所。」とのこと。 この案内で迷わずたどり着けた。 フィリップ・カザル: 後退して前進 Philippe Cazal - Retour En Avant 北関東造形美術館, 前橋市石関町136-3, tel.027-269-7744 98/5/9-6/21, 11:00-18:00 半畳大の鉄板が2枚一組で20組、ギャラリーに整然と配列されて床置きされている。 2組うち一枚はそのまま、もう一枚は赤く彩色された上青いゴチック体のアルファベット でフランス語の言葉らしきものが書かれている。すぐに読み取れたのは「革命、 僕は君を愛する "REVOLUTION JE T'AIME"」。そのシャープな印象がかっこいい。 パンフレットを読んで判ったのが、今からちょうど30年前の5月に Paris の街中に 書かれたスローガン50のうち20が書かれている。こういう五月革命のスローガンを 一読しては判らないような言葉の区切りで提示してみせる、というのが、妙に Godard っぽいかもしれない。 パンフレットには、_Internationale Situationiste_ からの引用 ― そもそも 五月革命の際のスローガンも situationist たちが書いたものではなかったか? ― もあるし、工業規格品を使うという発想にしても、80年代初頭のアメリカの シミュレーショニズムあたりも連想させるところがあるけれども、どうも微妙に 仕上がりが異なるのが気になる。 20枚という数や鉄板の大きさ、素材の選択にもコンセプチャルな意味があるし (パンフレットで読むことができる)、館長さんからその話を直接聞かれたのも 興味深いのだが、異化されて提示されているスローガンのシャープな印象だけでも、 充分に観る価値のある作品だろう。 片隅で展示されているビデオ作品は、「前進して後退」という文字が映し出されて いるだけで、見続けていても変化が無いのだが、たまにふと見ると背景の色が変化 している。 この展覧会が開催されている北関東造形美術館は、北関東造形美術専門学校に 併設されており、その一角にある。ギャラリー空間が遠近感を狂わすような感じ もあって、空間的には癖がある。92年にオープンしたそう。館長さんも熱心そうで、 明治近代へのこだわりといい、なかなか面白い話を伺うことができた。これからの 展開にも期待したい。 _ _ _ さらに北上してハラ・ミュージアム・アークへ。国道17号線に出た頃には既に16時。 ここで、入場が16時迄で、閉館が16時半ということに気づいた。せっかくここまで 来ているし、伊香保温泉にも行きたいし、ということで、車中からPHSで、アークに 「遅れてしまいまったのですが、これから行きたいのですが。」と電話を入れた (よい子はあまり真似をしてはいけません。)。待って下さるということなので道を 急ぐも、国道は渋滞気味。アークに辿り着いたときには、閉館時刻の16時半を 過ぎていた。それでも「カフェは使えませんが、17時頃まで観て下さい。」と。 ハラ・ミュージアム・アークのスタッフのみなさん、ありがとうございました。 Nature! Nature! ハラ・ミュージアム・アーク, 渋川市金井2844, tel.0279-24-6585 http://www.haramuseum.or.jp/ 98/3/14-6/21 (木休), 10:00-16:30 - 戸谷 成雄, 佐藤 時啓, 野村 仁, 久保田 成子, Robert Mapplethorpe, 杉本 博、 宮島 達男, Richard Long, Jean Tinguery, etc コレクション展なので、多くは期待しがたいのだが、それなりに楽しめた。 Gallery A は 杉本 博司 展以来、壁がグレーのままで、写真展示向けという感じ なのだが、佐藤、野村の作品に囲まれて、戸谷 成雄 の『森』が中央にどーんと。 佐谷画廊の個展で個人的の盛り上がっていただけに、『森』の中をさまようことが できて嬉しい。 Gallery B の奥の 杉本 博司 と 宮島 達男 の部屋は暗い室内も渋いのだが、 扉を開けて入る趣向になっているので、気づかない客も多そうな気がする…。 Jean Tinguery の『ペリカンの卵』は、止まっていたので、形が完成する瞬間が 見られなかった。壊れないように、動作する時間は一日数回に限定されているよう。 時間外だったので、カフェでゆっくりすることはできず。イメージ・ケーキが 戸谷 成雄 だという前情報を仕入れていただけに、それが食べられなかったのは とても残念…。 _ _ _ 17時過ぎにアークを出て、伊香保温泉へ。石段街をゆっくり上って源泉の露天風呂に 行った。18時15分前くらいに着いたのだが、入場は18時までだった。ぎりぎりだ。 というわけで、無事、露天風呂でまったり。やっぱ、いいなぁ。 雨が降り出したのは、帰途の高速道路に乗ってから。で、東京に戻ったら21時だった。 _ _ _ と、結局、かなり激しい行程になってしまいました。やはり、三つの美術館 (群馬県立近代美術館、北関東造形美術館、ハラ・ミュージアム・アーク) を 一日で回るのには無理がある (実際、今回は閉館後になってしまいました。) と いえるでしょう。理想的には、初日に群馬近美と北関東造形を観て、その晩は 伊香保温泉でゆったり一泊。二日目はアークでのんびり過ごして、早めに帰る、 というところでしょうか。アークに寝泊まりできる場所があったらなぁ…。 98/5/17 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕