アートは楽しい9 ― 手のわざ・時のわざ ハラ ミュージアム アーク, 渋川市金井2844, tel.0279-24-6585 98/7/4-9/27 (7/9,16,13,9/3,10,17,24休), 10:00-16:30 - ID Boutique, 今村 源, 木村 太郎, 小金沢 健人, 中村 哲也, 村上 隆, 吉田 重信 今年で開館十周年を迎えるハラ ミュージアム アーク。その夏休みに、原美術館の コレクションと関係なく日本の作家を集めての企画である「アートは楽しい」も 9回目。最近だと2年前の 八谷 和彦「視聴覚交換マシン」などが象徴的なのだが、 インスタレーションやメディアアート作品中心の現代美術のテーマパーク、とでも いう感じの展覧会というのが、このシリーズに僕が持っているイメージなのだが。 去年に引き続き、今年も「観る」作品が多いとように感じた。 自然光を使った 吉田 重信 のインスタレーションは、そんな中ではアークの自然な 環境に一番合った最も楽しい作品かもしれない。ミュージアム・カフェに自然光と 鏡と水を使って虹を映しこむ作品は、晴れ上がったときにだけカフェにいる人や壁に ばっと映り込むのが楽しい。自分に虹が当たると、思わず光と遊びたくなってしまう。 ギャラリーAの入り口の明かり窓にカラーシートを貼ったインスタレーションは、 パーマネントなら単に悪趣味な装飾になりかねないが、普段のモノトーンの落ち着いた 雰囲気を知っているなら (知らなくても、周囲の雰囲気の対比できるが)、日が差して 鮮やかな色彩が落ちる瞬間が素晴らしい。共に、日が差しているときにしか鑑賞 できない。日が雲に隠れるときがあると、作品がふっと消えたりぱっと現れたり するのだが、それが特に面白い。ギャラリーBの中のライトボックスには、敷地内の 林の中でのインスタレーションの写真もあったが、これは撮影用にのみ設置した とのこと。残念。ギャラリーBには、太陽光をファイバで引き込むインスタレーション もあったが、これはいまいちかな。 ギャラリーCの 村上 隆 と ID Boutigue の作品は、美術についてある程度興味が ある人であれば、とても興味深い作品だと思うが、選ばれている作品がちょっと 美術の文脈に依存し過ぎているような気がする。村上 隆, "Project Coco" などは フィギュアという意味でとっつきやすそうだけれども誤解も多そうな気がする。 オープニングということで作家自身のギャラリートークを聞くことができたのだけど、 一番話が巧かったのが 村上 隆 だった。逆に言えば最もコンセプチュアル。けど、 会期中に、客がみんなこの話を聞かれるわけじゃないからなぁ…。 ID Boutique の作品は、現代美術作品をネタにしたスーツやドレスを作っていて、 もの派のスーツとか着てみたいとは思ったけれど。元ネタを知らない人にはちょっと ウケないような。ちなみに、Jean-Pierre Raynaud な白タイルのドレスというのも 制作したそうだが、展示することができずお蔵入りしたそう。惜しい。 ちなみに、この展覧会に合わせたミュージアム・カフェ Cafe d'Art のイメージ・ ケーキは、中村 哲也「レプリカ」のケーキ。題して「レプリカ3号」。展示されて いる作品は深い赤なのだが、ケーキが黄色。ただ、突端部までベッコウアメを使って 再現してある凝り方は素晴らしい。おそらく、突端部のベッコウアメの色にボディの 色を合わせたのだろう。という、中村 哲也 のポップな作品の世界がギャラリーAの 世界を作り上げている。 小金沢 健人 の作品は繊細なヴィデオインスタレーションで、僕が行ったときは、 オープニングのざわざわした雰囲気にちょっと負けてしまったか。静かに見れば もっと楽しめたかも。木村 太郎 の作品は、去年の京橋界隈 '97 のルナミ画廊で 観たものということもあって、いまいち。今村 源 の作品は、夢の世界を作り込ま れてもなぁ、という印象を出なかった。 ま、下手にインタラクティヴな作品やメディアアート作品に走って、ICCのような ノリになるよりも、こういう、ある意味で旧来の美術の文脈にからんでいるような 作品を集めているほうが、原美術館らしいのかなぁ、とか思ってしまった。 98/7/4 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕