原美術館の庭に新たに増築したイヴェント用のホールが6月に竣工していたのだが、 賛助会員ではないメンバシップ向けとしては初めてそのホールを使ってのイヴェントが あったので、そのホールの様子を見るということもあって行ってきた。 Meet the Artist and the Curator: 館 勝生 × 安田 篤生 原美術館, http://www.haramuseum.or.jp/ 98/7/11, 17:00- 開催中の展覧会の出展作家と学芸員の対談イヴェントだが、残念ながら、散漫な ものであった。何を話したいのか、作家に話させたいのか、が明確でないというより、 作家の 館 勝生 の方がかなりはぐらかし気味に応えていたせいもあるのかな、と。 絵画という形式をとっていることもあり、他の作家からの影響や、関西の美術シーン の中の位置づけ、とかを語ると、やりづらくなりそうな作風、という気もした。 それなら、むしろ、制作裏話方面で話してくれたほうが面白くなりそうな気もした。 実は、今回の出展作家の 館 勝生 は、かなり昔から自分の WWW site を持っており (URL は http://www.threewebnet.ad.jp/~tachi/)、以前からそこで作品の画像を 見ていだが、正直に言ってそれほど強烈な興味を惹くほどではなかった。今回、 Hara Documents 5: 館 勝生 原美術館, http://www.haramuseum.or.jp/ 98/7/11-10/11 (月休), 11:00-20:00 (土日祝11:00-17:00) で、実際に作品を見て、WWW site で見ていた印象とだいぶ異なる (特に、大きさと 絵具の盛り上がった感じ) とは思ったし、その差異は面白かったけれども、絵それ 自体が面白いというほどではなかった。 ただ、作品を観た後、トークを聞いて、ふと、post-free といわれる音楽のことが 頭を過ぎった。本人も modernism / formalism のタガが外れた後の絵画と言っていた ように思うのだけど。jazz における modernism の極北ともいえる完全即興の後に 出てきたある種の作曲された音楽に近いというか。 今回の出展作品はほとんどが構図が同じで、画面左にぐちゃぐちゃと濃い絵具の盛り 上がりがあって、右に薄めの絵具での筆のストロークによる羽状の模様や淡い絵具 での円が配されている。それは、観ていると、ある元になるイメージがあって、 その様々なアドリブの記録という感じもする。実際、ある程度の元になるイメージを 別の紙に書いておくというし。しかし、そのアドリブの部分を追求して完全即興に 到るということが無いのは、3〜4枚に1枚しか作品として残さないというやり方にも 関係していると思うし、それが modernism 以降ならではなのかな、とふと思って しまった。 なお、『Hara Documents 5: 館 勝生』は2階の2つのギャラリーのみで、他は、 コレクション展『絵画のたのしみ』をやっている。 さて、原美術館のミュージアム・カフェ Cafe d'Art では、展覧会に合わせてその 出展作品を象ったイメージ・ケーキを用意している。というわけで、今は 館 勝生 ケーキ。絵画作品なのでそのままそれを描いたケーキかと思いきや、淡い絵具での 円を巨峰の実で使い、筆のストロークの感を白いクリームケーキの上に散らした シロップで表現、ちょっとひねりがはいっていた。もちろん、美味しいケーキだった。 さて、増築された対談の会場「ザ ホール」は、90年に増築された Cade d'Art と同様、 磯崎 新によるもの。工事中はフェンスに圧迫感があり庭がますます狭く感じるのでは ないかと心配していたのだけれど、仕上がってみると、一階のみということもあって、 圧迫感はほとんどなし。Cafe d'Art のデザインと統一されているので、自然に延長 されたという感じになっている。ただし、ホールの形状は敷地の都合で三角形に なっており、ちょっと使い辛いかもしれない。 98/7/11 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕