フランク・ステラ/ケネス・タイラー『構築する絵画』 Frank Stella and Kenneth Tyler: A Unique 30-Year Collaboration 町田市立国際版画美術館, 町田市原町田4-28-1芹が谷公園内 (町田), tel.0427-26-2771 98/6/20-7/28 (月休;7/21開;7/22休), 9:00-16:30 (7月中土日 9:00-17:30) アメリカの現代美術作家 Frank Stella の版画作品の展覧会。といっても、その プリンタである Kenneth Tyler とのコラボレーションという点に焦点を当てている。 もちろん、版画といっても、凸版多色刷りのような単純なものではなく、手漉きの 紙をレリーフ状にしたり、様々な版をコラージュ状に組み合わせたりした作品だ。 「30年のコラボレーション」ということだが、ここ数年に制作された作品に一番 焦点が当たっていたと思うし、実際、それらが展示されていた最後の展示室が 興味深かった。しかし、最も興味深かったのは、Frank Stella と Kenneth Tyler のコラボレーションの様子を捉えた30分弱のドキュメンタリ映画だった。Frank Stella と Kenneth Tyler の会話を聞いていると、まるでポップやロックの ドキュメンタリ映画でのミュージシャンとスタジオ・エンジニアの会話のようなのだ。 それらの音楽に比べ、版画は複製芸術にしては極めて職人芸的で手工業的な傾向が 強いけれども。 映画を観た後に、改めて最後の展示室に並んだほとんど同じ版を組み替えたり色を 変えたりして作成された一連の作品を観て、これらの版画における「リミックス」や 「サンプリング」について、(その妥当性も含めて) 考えさせられてしまった。 美術展での版画の展示では、プリンタ(版画工房)の名前まで挙げられているという ことは多くはない。そういう意味で、この展覧会のように、展覧会のタイトルに プリンタの名前が挙がるのは、興味深い現象だと思う。大日本印刷(株)が福島県に 持つ CCGA現代グラフィックアートセンター では Tyler Graphics のコレクションの 展覧会をやっているし、今年の前半にセゾン美術館 (池袋) で『現代アメリカ版画の 40年 ― 巨匠たちと版画工房ULAE』展があったりと、アーティストではなくプリンタ に焦点を当てた展覧会が続いているように思う。プリンタに注目が集まるように なってきた背景に何があるのか気になるところもあるし、アーティストとプリンタの 関係の変化が版画を変えることはあるのだろうか、ということも気になるところだ。 町田市立国際版画美術館には始めて行ったのだが、町田駅から徒歩10分程度という 意外に便のいい所にあるのは嬉しい。美術館のある芹が谷公園は緑も多くて気持ち よさそうだし。だた、美術館としては普通だろうか。版画専門の美術館ということで、 公開の版画工房があるので、うまく使えば面白そうなことができそうな気がする。 98/07/18 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕