初秋の群馬遠征、フランス現代美術展めぐりをしてきた。 朝8時半過ぎの上野発の快速で、倉賀野へ。歩いて群馬の森に向かうも、途中で 国道17号線の歩道が途切れてしまい、裏道に入ったら、迷ってしまった。 1時間ばかり歩いて、なんとか辿りついたのだが…。はあ (ためいき)。 _ _ _ 『眼と精神―フランスの現代美術』 群馬県立近代美術館, 高崎市岩鼻町239, tel.027-346-5560 98/8/8-9/6 (月休), 9:30-17:00 - Absalon, Carole Benzaken, Pascal Convert, Thierry Kuntzel, Yan Pei-Ming, Martin Tupper (Bushal & Clavel, Cercle Ramo Nash, Cladys Clover, J. Deplo, Manuel Ismora, Art Keller, Claude Lantier, Alexandre Lenoir, Kit Rangeta, David Vincent, Serge Valene) 現代美術棟のみを用いた展覧会。Maurice Merleau-Ponty の題なのでモダニズムな 展覧会と思いきや、Jean Beaudrillard あたりから題を引いてきたほうがしっくり きそうな展覧会だった。 ポスターで観て気になっていた Carole Benzakan の作品 (1994〜7に制作) は、 お祭りの屋台に並ぶヌイグルミや花壇の花、店に並ぶ食器などの題材にした絵を 描いているのだが、アクリル絵具の彩度の高い色合いや、反復を感じさせる画面 構成もあって、とってもポップ。何かスローガンのような言葉を画面に入れると、 もっと面白いんじゃないかとも思うんだけど、彼女の作品の場合、描かれている 題材がまるでピンボケ写真のように描かれていること、一枚のキャンバスを分割 していることなどによって、ポップさをさりげなく異化しているという感じか。 techno 〜 breakbeats 系のジャケットに似合いそうに思うし、そんなジャケット だったら、ジャケット買いしてしまいそうな気がする。 展示で最も面白かったのは、キュレータ Martin Tupper による展覧会内展覧会と でもいうコーナー。あるコレクションに基づいて構成されているとのことだが。 Art Keller の _L'Internationale Situationiste_ の漫画 (か、そのパロディ) を彩色した作品や、Gladys Clover の自分の名前をモダンな絵文字で壁に描いた だけの作品、J. Duplo によるレゴで描かれた絵とか。Situationist の影響を 感じさせる、というか、US の Simulationist との共通点も感じさせる作品が 並んでいた。 もう一人、気になったのは、AIDS で93年に29歳で亡くなったという在仏 Israel 人 Absalon の作品、『生活についての提案』『独房』など。真っ白な建築模型といった 作品なのだが、独房作品の一つは実寸の体験型作品で、実体験する Langlands and Bells か Peter Halley かという感。画質が悪くて残念だったのだが、ヴィデオ 作品も上映されていて、『生活についての提案』など、実寸模型の中での パフォーマンスもあった。そのクレジットの中に Marie-Ange Guilleminot の 名前が見えたのも、少々気になったが。 _ _ _ 群馬県立近代美術館から、タクシーで北上、同じくフランス年企画でもある この展覧会へ。 5月に初めて来た時に展覧会をやっていた Philippe Cazal も Situationist に 影響を受けた作品を作っていたこともあり、その路線かと思っていたのだが、違った。 Christine Monceau 北関東造形美術館, 前橋市石関町136-3, tel.027-269-7744 -98/9/15, 11:00-18:00 医療機具 (点滴用の針やチューブ) や、期間中に萎れ朽ちていく植物などを使った インスタレーション作品で、生〜性を連想していまう。それも、ちょっとどろどろ とした情念を感じてしまうようなところもあって、ヒくところもあったけれど、 やはり女性作家だった。 話によると、イコノロジーとサイエンスの再結合をコンセプトにしているそうで、 イコノロジーの知識があると違う見方もできるのかもしれない、とは思ったが。 _ _ _ 北関東造形美術館で館長と話し込んでいたら、覚悟はしていたのだが、滝のような 大雨が降り出してしまった。スタッフのご厚意で、両毛線駒形駅まで車で送って もらったのだが、両毛線も大雨のため徐行運転中。ううむ。しかし、ここまで来たら やはり寄らねば、ということで、フランス現代美術とは関係ないが、ここへ。 實松 亮 ― Chunk of Frame ノイエス朝日, 前橋市元総社67, tel.027-255-3434 98/8/23-9/6, 11:00-18:00 ライト・インスタレーション作品で、去年の秋の Gallery NW House と共通する 感もあるのだが。木漏れ日とでもいったスライドが両脇に斜めに投影されているし。 しかし、中央に立てられた、2枚の蛍光イエローの透明なボードの向こうに回って、 その隙間からぱっと大きなスリット状のゆらぐ光を投影しているスライド光源の ほうに向かって眼をやるときの眩しさといい、Gallery NW House のときの作品 よりも、良いように思う。 98/8/29 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕