10月末に出張で福岡に行った。ちょうど、街中アート・イヴェントが行われて いたので、観て歩いてみた。街を見て回るきっかけにちょうど良いかと。結局、 そのついで、という感じでもあったのだが。博多は10年ほど前に2度ばかり来た ことがあった。しかし、そのころの様子とかすっかり忘れてしまっていたので、 初めて行くような感じだった。 ミュージアム・シティ・福岡 1998 福岡市内天神及び博多界隈, http://www.asahi-net.or.jp/~ry4h-mymt/ 98/10/2-31 - 飯島 永美, 風倉 匠, PH Studio, Plant Demonstration, 島袋 道浩, Francois Boisrond, 韓 桂崙, Navin Rawanchaikul, 王 晋, Lazaro Saavedra Gonzarez 一番面白かったのが、有限会社ナウィン・プロダクションこと Navin Rawanchaikul の 『博多ドライヴ・イン』。架空の映画の広告が、街中の数箇所 (博多駅前、上川端 商店街、天神イズム、天神岩田屋A-SIDE といった繁華街の壁や広告ウィンドウに かけられていた。そのファンキーなノリのデザインの広告は、今やこ洒落たモダンな 広告が多い中では異彩を放っていて、それを観るのを目的に歩いていなくても、 かなり目を惹くものだった。実際、旧御供所小学校に展示されていたものを除いて、 特にそれ探すでもなく博多の街を散策していて見付けてしまったほどだ。見付けて しまったときの感覚が、異様な感もあって、とても面白かった。このプロジェクトは 情報喫茶で出されるタクシー・ラーメンと、コミック・ブックとも連動している。 タクシー・ラーメンは特製どんぶりに入っていて、貰えるのだけれど、まるで映画の ノヴェルティ・グッズのよう。広告のファンキーさにも似合っているし。ちなみに ラーメンは、いわゆる博多風とんこつラーメンだった。これで、情報喫茶じゃなく 中洲の屋台で食べる、としたら、もっと面白かったように思うが。博多の晩の散策 中に広告を見て、ラーメン食べて、とやっていたら、なんとなく『博多ドライヴ・ イン』という映画を観たことがあったような気がしてしまった。 『博多ドライヴ・イン』に近いノリを感じたのは、キャナルシティ博多で行われて いた 飯島 永美『注文の多い展覧会』。キャナルのある中庭に面したオープンモール の壁にかけられたイラストの垂れ幕が、お祭り雰囲気を醸し出していた。それだけ でなく、キャナルシティ博多の中、360枚の絵が19のポイントに展示してあった。 キャナルシティ博多を見物する、という目的もあったので、そのついでに観て回った のだけれど。 絵そのものより、 「エピソード」や「エミからのコメント」が ポイントなのかもしれないが…。 展示ポイントの壁や置かれたイーゼルにある絵は、 いまいちかもしれない。むしろ、全部、垂れ幕風にした方が良いのではないかと 思ってしまった。 他の作家については、特に面白いと感じるものは無かった。特に、旧御供所小学校の 展示は、荒い仕上がり感もあったし。レジデンス中、ワークショップに参加して、 というならそれなりに楽しいかもしれないが。むしろ、小学校の周囲にあった昔 ながらの町並が残ったところを散策していた方が楽しかった。というか、そういう 楽しみも、街中アート・イヴェントならではなのかもしれないが。そういう楽しみ といえば、島袋 道浩 の展示場所ということで足を運んだ カフェ・ブラジレイロも、 奇麗で居心地良さそうなカフェだった。夕食に近い時間だったので、あまり長居は しなかったけれども。こんなイヴェントでも無いと足を運んでみなかっただろう。 アート・ミュージアム・博多 1998 のチラシによると1934年オープンで、かなり 由緒のあるカフェのようだったけど。 _ _ _ 宿からキャナルシティ博多が近かったこともあり、三泊四日の四日とも足を運んで しまった。良くデザインされた商業施設として話題になっていた所なので、気に なっていたということもあるが。そんなに居心地が良かったかな、と思う所もある。 特に、通路が曲がりくねって見通しが利かないため、現在位置を見失いがちだった のが、ちょっと気になった。あと、やらせっぽい大道芸人がいたせいもあるのか、 作られすぎ、テーマパークっぽ過ぎ、という気もしてしまった。 特に地図とかでチェックして歩いていたわけでもないのだが、キャナルシティから 天神に向かって歩いていたら、Aldo Rossi デザインの Hotel Il Palazzo を 見付けてしまった。かなり目を惹く建物ではあるんだけど、あまり違和感は無かった。 というか、博多駅前から天神界隈にかけて散策していると、こじゃれたデザインの 商業ビル、ホテル、銀行のビルがやたらに目に付くのだ。東京にもこういうビルは 無いわけじゃないけど、集積度が高い。天神界隈の「おしゃれ」「マニア」っぽい 店の集積度の高さや商業ビルの気合の入り方は、東京でもここまでいってない、と 思わせるものがあった。ただ、ちょっとハコモノに力が入りすぎて中がついていって いないのかな、という感じもしてしまったが。 最後の土曜の午前に地下鉄と西鉄宮地岳線を乗り継いで観に行った香椎浜団地の NEXUS 香椎浜 にしても、洒落たマンションの高集積地帯という感じ。天神界隈の ノリを思い出してしまった。細かい場所や手掛けた建築家を全く調べずに行った けれども、香椎浜団地の中を歩いていると、それらしい所はすぐに目についた。 ファサードしか観ていないという範囲では、単調になりがちな郊外の団地もこう 変化富んで作られていたら歩いていて迷ったりはしない、という意味で、単調な 団地よりはまし、と思った。ただ、居住空間を見ればまた違うのかもしれないけど、 郊外のベッドタウンの集合住宅として作られている、というところに限界がある ような気もして、そう建てている限り、単に洒落たマンションでしかないような 気もしてしまった。土曜日の午前ということもあるのか、商業施設コーナーに空きが 目についたせいもあるのか、街に生気が感じられなかったのも気になったけれど。 98/11/1 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕