原美術館の企画『Art in Town '98 vol.2 - 磯崎 新 の建築を見る』に参加して、 群馬県立近代美術館とハラ・ミュージアム・アークへ行ってきた。と、いっても、 どちらの美術館も行ったことある美術館ということで、実は建築云々という興味は あまり無かったのだが。 『パトロンと芸術家 ― 井上 房一郎 の世界』 群馬県立近代美術館, 高崎市美術館 98/9/19-11/3 いわゆる現代美術の展覧会でもなく、「地方の名士」のコレクション展、程度に しか思っていなかったのだが、意外と面白かった。井上 房一郎 は、群馬県に 交響楽団と音楽センター、そして近代美術館を作るべく尽力した人で、井上工業と いう建設会社の社長の御曹司。磯崎 新 とも縁があった人のようで、磯崎 新 の 手掛けた 群馬県立近代美術館 や ハラ・ミュージアム・アーク の施工は、 井上工業なのだそう。 で、井上 房一郎 は、晩年、音楽センター、近代美術館 に続いて 哲学堂 という 施設を作るという構想を持っていたそうで、その施設の案のスケッチが展示 されていた。それは、磯崎 新 によるものなのだが、なんと、これ 水戸芸術館 ではないですか。あの四面体を積み重ねた塔など、まさに。 あと、興味深かったのが、井上 が戦前の30sにやっていた「ミラテス (Miratiss)」 ブランド。銘仙を使った服や小物類があったのですが、小物類のデザインは Bruno Taut だし。(これについては、いろいろあったようですが。) 漆器は まあまあでしたが、鼈甲を使った食器セットは凄いですね。 群馬県立近代美術館では、常設展示のほかに、もう一つ、現代美術棟の展示室5を 使って、特別展示を行っていた。 斎藤 義重 群馬県立近代美術館 展示室5 98/9/19-99/3/28 (月休;11/24,12/22-1/5,3/23休;11/23,3/22開), 9:30-17:00 群馬県立近代美術館の設計者として 磯崎 新 を推した人、ということもあっての、 展示空間とのコラボレーションという意味合いもあるらしい展覧会。全て新作。 で、これが凄い。密度が。大きな立体作品を中心に、一つの展示室に28点が 所狭しと並んでいる。まるで、天井の高さと対抗するかのよう。一つ一つの作品は、 白もしくは黒に塗られた板や棒を組み合わせた作品、もしくは白黒赤の色を使った 平面作品で、従来の印象を覆すものではないのだけど、それぞれの作品が交錯して いる感もあって、全体として異様な空間になっている。作品を詰め込みすぎ、という 意見もあるようだけれど、空間を意識してわざと詰め込んだ、という感もする。 さて、群馬県立近代美術館からハラ・ミュージアム・アークへ行って。 『もう一つの日常へ』 ハラ・ミュージアム・アーク, 渋川市金井2844, tel.0279-24-6585, http://www.haramuseum.or.jp 98/10/10-12/6 (水木休), 10:00-16:30 - 荒木 経惟, Christo, 福田 美蘭, Jasper Jones, 草間 弥生, Roy Lichtenstein, 森村 泰昌, Jean-Pierre Raynaud, etc コレクション展ということで、企画としてというより、個々の作品に注目して観た。 写真を使った作品が中心だったのが、ちょっと気になった。企画をした学芸員の 話では、88年以降の作品を選らんだら、そうなってしまっただけで、特に意識して いない、とのことだったが。 ギャラリーA に入って正面に やなぎ みわ『案内状の部屋 1F』('97) があって びっくり。いつのまにか、コレクションになっていました。 100組限定で作成された Roy Lichtenstein デザインのティーセットが、フル・ セットで展示されていた。今まで、たまに、原美術館の受付近くのショーケースに 一部が置かれていたことがあって、それを見たことはあったが。フル・セットを 公開するのは初めてのこと。これで、お茶をしてみたいものだ。 今回の展覧会の一番の目玉は 草間 弥生『ミラー・ルーム』。ギャラリー内を 全て黄色に黒のドットにして展示するもので、以前に、原美術館の2階奥の部屋で 一回、ハラ・アークで一回、行われている。これで3回目だ。何度体験しても強烈で、 草間 弥生の強迫観念的な世界を体験するのに、このインスタレーションほどいい ものは無いと思う 『ミラールーム』をやったときは、Cafe d'Art のイメージケーキはこれをネタに するというのがお約束のようで、今回もこれ。原美術館の時の伝説的なカボチャ型 ケーキの再現はもう無理のようだが。前にハラ・アークで『ミラールーム』を やったときのヴァリエーション。形は一緒。素材は、以前は、ゼリーを使った ケーキだったと思うのだが、今回は、カボチャのハードムース。もちろん、 美味しいけれど。 98/11/3 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕