川俣 正 × Gilles Coudert トークショー ユーロスペース, 渋谷 98/11/29, 14:00-15:10 ユーロスペースで開催されている第4回アートドキュメンタリー映画祭の Program C で 川俣 正 のドキュメンタリ・ビデオが上映されている。その監督 Gilles Coudert と 川俣 正 のトークショーがあったので、それに合わせて観に行ってきた。 川俣 正 の作品は、写真でいろいろ観たこともあるし、実際に幾つかの作品を体験 したこともあるけれども、Coudert については知らなかった。紹介では、現代美術 に関する編集者・映像作家とのこと。'94年のフランスの Tours でのプロジェクト ("Transfert" に収録されている。) 以来、川俣 の作品を取りつづけているそうだが、 作品の一部の作品のときもあれば、ドキュメンタリーもあれば、PR用のものもある とのことだっが。ドキュメンタリ映画監督というよりコラボレーション、という 関わり方をしているとのことだった。といっても、映画は比較的伝統的な作りだった と思うけれども。Courdier と川俣は打ち合わせ無しで撮影しているとのことで、 コラボレーションとはいえ、特に 川俣 のディレクションは入っていないとのこと だった。話から受ける印象としては、現場主義的というか即興的なコラボレーション という感もあった。 コラボレーションとい意味では、撮られる側の 川俣 にとっては、二個所で同時に 開催して同時に観せるときや、前後する複数のプロジェクトを繋ぐ方法でもある、 と語っていた。日本の現代美術は記録を残すことが下手、という面もあるし、 インスタレーションとなると作品を残すのは困難なわけでもあるが、こういう 記録者を得たというのは、川俣 正 にとっては幸運だと思う。 全体として、お互いの共通点を強調しあうトークという感じで、ちょっと気持ち 悪い所もあったのだけれど。作品だけでなく、作品制作の進め方にも共通点を感じて いるとか。 さて、上映されているビデオ作品の方について。 _Kawamata Projects by Gilles Coudert_ - directed by Gilles Coudert_ - "Le Passage des Chaises" ('97,color,15min); "Les Chaises de Traverse" ('98,color,26min); "Transfert" ('94,color,30min) トークからは、_Transfert_ ('94) の題材となった Tours, France のでの プロジェクトが最も興味深く感じられたのだが。アトリエと展覧会場、住宅と アトリエ、との間にある私的なものと公的なものの間の距離感とその移動を題材 にしているのだけれど、それが興味深く思えた。3本のドキュメンタリの中では 一番退屈ではあったのだけど。川俣 正 自身は、それをアートに関する (作品を 作品たらしめている) 制度として捉えていたようだけれども。それが、作品の射程を 逆に短くしているような気がして。作家と僕の問題意識のすれ違いなのだろうけど、 僕からしてみれば、近代における住居と職場の、そして余暇と労働の分節化に 繋がる問題だと思うし、そういう意味で、あの作品での"移動"は、通勤の メタファーにもなり得るものだと感じたのだけれども。そういう観点で観ると、 いまいちになってしまう。 椅子を積み上げた2つのプロジェクトに関するドキュメンタリー2本 _Le Passage des Chaises_、_Les Chaises de Traverse_ に関して言えば、画面を通してとはいえ、 その椅子だけで、コンセプト抜きに充分に圧倒されるような感覚があって、面白 かったのだが。Paris での _Le Passage des Chaises_ が整然と積み上げられて いたのに対し、_Les Chaises de Traverse_ が乱雑に積み上げられた感じで、 その対比も面白かったけど。Paris のプロジェクトに関して言えば、病院の中の 教会という場、そしてそのギリシア十字の対象な間取り、などから、『監獄の誕生』 とかそういう言葉が頭を巡ったけれども。作家はそんなことは意識していなかった みたいだし、それよりも椅子の圧倒感だけで良し、と思えるものがあった。 トークの方は、話がまとまりそうでまとまらずにずるずる続いた感じもあったの だけれども。その続き、というわけで、この上映会では取り上げられなかった 「コールマイン田川」のプロジェクトに関して、12月2日18時半から日仏会館で ビデオ上映+トークがある。 98/11/29 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕