磯崎 道佳『いつかどこかで、あるいは つづく つづく つづく』 ギャラリー日鉱, 港区虎ノ門2-10-1 (虎ノ門), tel.03-5573-6644 98/12/3-25 (日,12/23休), 10:30-18:00 主に子供服での古着を素材としたインスタレーションを作る作家の展覧会。 オープニングにパフォーマンスが行われる、ということで、それに合わせて 観に行ってきた。 行われたパフォーマンスは、子供服の古着を繋ぎあわせた服状のものを縫い あわせながら (といってもほとんどは縫いあわせ済みなのだけれど) 着ていき、 最後に扇風機で小さなパラシュートを撒き散らしておわり、というもの。 意味を含ませるような象徴的なシーンはほとんどない、シンプルなもので、 それが逆によかったように思う。座って服を縫いあわせながら着ていく最中の 客の小さな子供とのさり気ない絡みも含めて。ちなみに、パラシュートは 観客にプレゼントされた。 意外だったのは、パフォーマンスの背景で行われていた演奏。electronics, violin, sax, melodica/sax, 横笛 といった5人編成がギャラリーの中に散り、 electronics の音を背景に間の開いた楽器の音をゆっくり鳴らしていく感じの、 free jazz / improv. 風の演奏をしたのだが。その演奏はそれでいいと思ったが、 ただ、インスタレーションやパフォーマンスと合わせるとなると、もっと ポップな旋律、拍子を"引用"した曲でも、という気もしてしまった。 インスタレーションは、古着を縫いあわせて作ったパラシュートや、塔状、 柵状のものを並べたもの。子供服の古着に感じがちな「因縁」、それも切り刻み 一つ一つ縫い上げていくわけで、一歩間違えば、切り刻む残虐性や縫い上げて いくという情念が表に出る作品になりかねない。けれども、実際に観られる 展示は、そういったものを―全く感じないわけでないが―突き放した感がある ものだった。むしろ、子供服の持つ独特の色彩感にまず目が行く感じもある。 展覧会に先立って行われたスカイダイビングや海岸でパラシュートを膨らます パフォーマンスのドキュメント・写真・ビデオもあるのだが、それらにしても、 作品の背景にある内容というか、普通なら読み取るべきとされるような物語 ― ここなら、パラシュートで空を飛ぶという夢だろうか ― を、結局のところ 突き放してしまっている。そしてそれは、物語性を排したようなオープニングの パフォーマンスにも共通するものだ。それが、この展覧会のよいところだと、 僕は思う。 実は、展覧会の前に、この展示の制作を手伝いに行った。作品のコンセプトに 共感してというわけでなく ― 実際、そういう説明は全く受けなかった ―、 むしろ、ちょっとしたワークショップに参加するようなつもりだったのだが。 作品がどうこうというより、単純作業を積み上げていくようなところにミニマル な物作りの楽しさを感じるようなところがあって、面白かった。といっても、 縫製作業は想像以上に疲れるもので、あっという間に眼や手が狂って針の穴に 糸が通せなくなってしまったが。実は、展示を観るまで、自分が縫い付けた所が 不器用な縫製で重みに耐えられずにほつけていないか心配していたところも あったのだが、展示を見る限り大丈夫だったようで、ほっとしたのだった。 98/12/5 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕