中村 政人『QSC+mV』 SCAI The Bathhouse, 台東区谷中6-1-23 (日暮里,根津,千駄木), tel.03-3821-1144 98/11/27-99/1/16 (日月祝休;12/26-1/11休;1/15開), 12:00-19:00 前回このハコであった『トラウマトラウマ』がコンビニエンス・ストアの CI (Corporate Identity) カラー/サインを作品にしていたのに続いて、『QSC+mV』は ファーストフードの MacDonald 社のCIサインを作品にしたもの。ギャラリーに 満ちたサインの黄色い光はかなり強烈。その感覚的な印象も強い。ちなみに、 題の『QSC+mV』は、MacDonald 社の企業理念 "QSC+V (Quality, Service, Clean + Value)" をもじったものだ。 コンビニエンス・ストアが流通業における近代化の行き着いた先の一つであるのと 同様、MacDonald のようなファースト・フードは外食産業における近代化の行き 着いた先である。そして、その企業理念 "QSC+V" というのは ― MacDonald に 限らず、広告のキャッチフレーズの多くがそうなのだが ―、まさに近代の理念と 言えるものである。そう、僕たちは "QSC+V" のような理念の下に生活をデザイン してきたのだ。 ここでは、"m" という係数を付けているとはいえ、この近代の理念を芸術の理念に 読み替えている。そして、そのCIサインを使った作品が ― 作品の形からすると 『QCS+mV』よりも『トラウマトラウマ』の方がそうなのだが ― ミニマル・アート のような形になっているのは、まさに皮肉だ。『トラウマトラウマ』のときは、 題名からいまいちピンとこなかったのだけど、今回は『QSC+mV』という題にする ことによって、その皮肉というか矛盾がぐっと明らかになっている。それが良いと 僕は思う。 _Sushi, Tea, or Me? I like Beefbowls_ Command N/□, 台東区上野1-2-3犬塚ビル1F, tel.03-5812-7506 98/11/28-12/12 (日休), 14:00-20:00 - Susyilawati Sulaiman, Jeannie Carmen Crosby, Katharina Copony, Zhang Wei, 岩井 成昭, Didier Courbot 小さなギャラリーに小品を一点ずつという展示なので、他の作品を観たことがある 作家でないと、ちょっと掴み兼ねるところはあるかもしれない。 去年 ザ・ギンザ・アートスペース で作品を観たことのある Didier Courbot を、 楽しみにしていたのだが。地下のオフィスの壁に書かれた一行の文章 (正確には 覚えていないが "The beginning was in the car back to Tokyo" のようなもの。) が、カッコいい。Command N/□ の設立の経緯の中から一文を選んだものらしいが。 カッコいいのは、言葉の選択もあるが、セリフの無いシンプルなフォント (Helvetica だそう) ということも大きいだろう。今回は珍しく斜字 (イタリック) になっている というのも印象に残った。一続きであることを強調するため、ということらしいが、 むしろ、車での移動の速度を感じさせるような気もする。 98/12/13 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕