『恋の秋』_Conte d'Automne_ - France, 1998, Color, 1h52m - directed and written by Eric Rohmer. - Marie Riviere (Isabelle), Beatrice Romand (Magali), Alain Libolt (Gerald), Didier Sandre (Etienne), Alexia Portal (Rosine), etc. フランスのベテラン映画監督 Eric Rohmer の『四季の物語 _Contes des Quatre Saisons_』シリーズの完結第四作目のは、若干、雰囲気が異なる映画だった。 Eric Rohmer のロマンスを題材とした映画の登場人物というと、恋愛をするという より恋愛について語りつづけるといった具合で、それが物語を会話毎にバラバラに していた感もあったのだが、そういうシーンが少なかったということもある。 それに、そういった会話を可能にする比較的有閑な人々という登場人物設定も 今回は外れていたように思う。なにしろ、主人公の女性 Magali が「仕事に没頭 しているわ。孤独を忘れるために。」と言うような設定なのだ。 そう、Magali にしろ、その相手役ともいえる男性 Gerald にしても「労働者階級」 ということを意識させるような服装で出てくるのだ。もちろん、それはもう一人の 女性の主人公 Isabelle (これが、ブルジョワ風。) や男性の脇役 Etienne (これは インテリ風) のとの対比で際立つのだが。特に、Gerald と Isabelle が最初に 合うシーンでの二人の服装の対比など、ちょっと露骨だな、と思わせるほど。 労働者階級、というより、植民地帰り、と言ったほうが正確なのかもしれないが。 Rohmer の映画で、こういうことを意識させられたのは初めてかもしれない。 そういうところが、ちょっと興味深かったかもしれない。単に、今までも言葉使い で区別してきたのだが、僕がわからなかったに過ぎないのかもしれないけれど。 もちろん、そういったことと、Magali と Gerald が結婚することを想像させる エンディングから、階級が合ったカップルが相性が良い、だのといったつまらない (どころか抑圧的ですらある) 結論を導き出すつもりはないけれども。というか、 Eric Rohmer の劇映画で描かれる恋愛というのは、比較的紋切型なところもあって、 これで、恋愛は素晴らしい、とか、恋愛かくあるべし、とか語ってもしょうがない と思う。むしろ、各場面ごとの笑いを誘うようなちょっとした会話の妙こそ Rohmer の映画の面白さだと思うのだが。階級を意識させておきながら、あまり辛辣に それを笑いのネタに使わないところが、良いのか悪いのか…。一番笑えたのは、 大団円的なパーティ会場で、Magali と Etienne が同じ風景を眺めながら、 「未開発だ」(Etienne)「いいえよく耕されてるわ」(Magali) というやりとりを したところだったろうか。 といっても、違うレベルで、個人的には Gerald の馬鹿正直寸前の実直な印象を 受けるキャラクターがなんとなく微笑ましく、軽く笑える映画だったので、満足は しているのだが。 98/12/22 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕