ザ・セカンド ― オランダのメディアアート The Second - Time Based Art from the Netherlands NTT ICC, 西新宿3-20-1東京オペラシティ4F, http://www.ntticc.or.jp/ 98/11/13-12/27 (月休,11/23開,11/24休), 10:00-18:00 (金10:00-21:00) - Kees Aafjes, Peter Bogers, Boris Gerrets, Jaap de Jonge, A. P. Komen, Pieter Baan Mueler, Bert Schutter, Bill Spinhoven, Fiona Tan, Steina Vasulka, Bea de Visser, Christian Zwanikken NTT ICC の展覧会というと、科学博物館的な情報処理と通信技術のデモのような 展示や、コンセプトばかりで体感するところが少ない展示が多く、今までいまいち 楽しめなかったのだが。今回は意外と楽しめる作品が多くて良かったと思う。 というのも、邦題こそ「メディアアート」と付いているが、単に新しいメディア を使っているというものではなく、原題には "Time Based Art" とあるように 時間を主題に扱った作品の展覧会というコンセプトがしっかりしているからかも しれない。そもそも「ザ・セコンド」というのは「秒」のことだ。 Fiona Tan, "Witness" は、時計的な機械に繋がれた複数のモニターに、Robert Longo 的なドラマチック・ポーズ (実際に、宙を舞う男性のヴィデオは、Robert Longo / New Order, "Bizarre Love Triangle" のヴィデオ・クリップとそっくりだったが。 ま、それは愛敬といえよう。) をいくつかの時間速度で流しているというもので、 観ていると劇的な時の流れが脱構築されていく感もある。 劇的な瞬間を扱った作品といえば、Peter Bogers, "Heaven" では、白い明るい部屋の 中で時間が1秒に凍結された感じ。吊るされたたくさんのヴィデオモニターには、 人のクロースアップのような抽象的な画面が1秒単位で延々と映し出されている。 部屋の時計をかけるような場所に、秒針がカチカチを秒の目盛りの間を往復する ヴィデオが映し出されているモニターがかかっているのが可笑しい。しかし、この 展示を強烈にしているのは、モニターの一つに、阪神大震災の際にTV局で撮影された 揺れ始めの1秒間の映像が反復していること。地震が延々と続いているようでもあり、 題名の「天国」とは惨事の一秒前のことのような感もあり。しかし、モニタに付いて いるヘッドホンをつけると、その音が 120bpm の minimal techno ― もちろん、 展示空間も minimal を意識させるものだが ― 状態になっていてそれがとても 可笑しいのだ。天国と地獄、のような物語に対する minimalism 的な虚無主義が 生み出す笑い、とでもいうのだろうか。 ストロボライトの点滅速度の調節による機械の動きの見え方の変化を楽しむ Bill Spinhoven も軽妙だったし。2年前の『根の回復として用意された12の環境』展にも 出展していた Christian Zwanikken のカタカタ動く模型 (特に宙の鳥?の嘴が良い) も素朴で面白かった。ICC的な空間でなく、もっとこじんまりしたギャラリーの ような所のほうが楽しめたように思うが。 時間を扱っている、というわけではないが、Kees Aafjes, "Credit Art" は、自分の 持っている本物のクレジット・カードを差し込むと模擬紙幣が貰えるATMマシン。 カードを差し込んでカードがダメにならないだろうか、というちょっとした緊張感や、 案内画面に出てくるマッチョな男性キャラクターのユーモラスな感じなど、大道芸で 芸人とやりとりをする、特に物を貸すときのようなスリルもあって、これこそ "インタラクティヴ"なアートという感じもある。ある意味で作品を信用しないと カードは差せないわけで、「クレジット」アートというのも納得。社会における 信用というものを軽妙に扱っているという感じで、時間というテーマからは外れて いる感もあったが、こういう作品もいいと思う。 98/12/23 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕