1月に観た美術展で印象に残っているものの短評を、観た順に。 實松 亮『水平線の作り方』 オレゴン・ムーン・ギャラリー, 江東区猿江1-18-4 (菊川), tel.03-3846-5344 1999/1/9-2/7 (月休), 12:00-19:00 浜辺で水平線を撮影したビデオ映像を中心を走る水平線で"折り曲げ"て「水平線」 を作る、というシンプルな作品。画面にジェットスキーが走るときなどが一番 効果的か。けど、もう一捻り欲しい気がした。(あったのかもしれないが、気付か なかった。) 一番面白かったのは、実は招待状かもしれない。水平線を写した 写真をフィルムに印刷して水平線で折り曲げたり、言葉を透かして読むように なっていたり。ただ、インスタレーションとしては、去年秋の『Chunk Of Frame』 @ ノイエス朝日の方が楽しめたかもしれない。 1999/1/9 _ _ _ 鯨津 朝子 港房, 銀座1-9-8奥野ビル3F (銀座), tel.03-3567-8727 -1999/1/23 鯨津 朝子『旋回する表象』展 (斎藤記念川口現代美術館, '96) 以来、気になる 作家なのだが、今回は銀座の非常に古い (戦前から建っているのではないだろうか) ビルの一室での展示。こじんまりした感じがよくもあり悪くもあり。作品の見た 目が、どんどんマトリックス状に、静的になって行ってしまっているような気が して、それが物足りない。部屋に「旋風」を巻き起こしてもいいように思うのだが。 初めて行ったのだが、会場のある奥野ビルの古ぼけ具合もいい感じ。エレベータ には乗ってみたいところだったが、残念ながら、上部の階の住民専用だった。 1999/1/21 _ _ _ 佐藤 時啓 ギャラリーGAN, 銀座7-2-22 (銀座), tel.03-3573-6555 -1999/2/20 (日祝休) 建物の周りを明りの白いドットが取り巻くような、少々トリッキーな白黒写真を 撮影する写真作家の個展。今回は、建物ではなく自然の中なので、いささか印象が 異なる。海岸で2時間近く露光して制作した写真は、波やその飛沫の動きによって、 まるで雲海がかかったようになっており、そこに光りの斑点が浮かんでいるように 見えるのがとても面白い仕上がりになっている。白いトランスペアレンシのシートに ゼラチンシルバープリントした上でバックライトで光らせているので、光の斑点が 際立ってみえるのもいい。また、写真作品に、撮影した浜辺のビデオ映像を重ねた ようなビデオ作品も上映されていて、雲海のようではない、波打つ浜辺も見ることが でき、その対比も面白い。 1999/1/27 _ _ _ 牛島 達治『水にまつわる埋もれた記憶から』 ZOOM, 渋谷区渋谷3-6-7 (渋谷), tel.03-5485-4101 1998/10/7-1999/1/27 (土日休), 9:00-18:00 牛島 達治『景色 ― もうひとつの視点』(プラスマイナスギャラリー, 1995) の 傘を開いたような作品 ― Isumiwaku Project 1996 で和泉小学校の屋上に展示 されていたときが、特に良かったが ― を観ていらい気になる、メカ系の作品を 作る作家。今回は軸の回りを一輪車はぐるぐる回る、という作品。回る一輪車は7台。 車輪のリムには小さなビデオカメラが付けられ、軸の上につけられた小型の液晶 ディスプレイにその映像が表示されている。ぱっと見、何を表示しているのか 判らなかったけれども。そのディスプレイは微妙に音を出しながら向きを変える。 一輪車の回転は断続的なのだが、それを決めているのは、水の滴下と、凍結と解凍 という過程を含む水の循環となっている。含意よりも、その原因結果の連携具合が 単純に面白いように思う。 1999/1/27 _ _ _ 曽根 裕『アルペン・アタック』 草月ギャラリー, 港区赤坂7-2-21草月会館7階 (青山一丁目), t.03-3408-9112 1999/1/27-2/17 (日祝休), 10:00-17:00 (金-20:00) 「19番目の彼女の足 "Her 19th Foot"」(1993) で Tour De France (有名なフランス 一周の自転車ロードレース) に出場する、というプロジェクト。しかし、もともとの 「19番目の彼女の足」は、およそレース仕様とは言えないもののため、今回の プロジェクトにあたって、改めて "Super Her 19th Foot" を制作している。 ま、これもレース仕様ではありえないわけだけれども、レース用自転車の技術、 パーツを使って作られている、と言えばいいだろうか。展示は、"Super Her 19th Foot" 一ユニットと、床にばら蒔かれたドキュメント類、そしてヴィデオからなるのだが、 その会場の様子が魅力的でないのと、「「19番目の彼女の足」で Tour De France」 に参加する」ということが、ヴィデオなどを観なくてもおよそ展開が読めそうな 気がしてしまうので、いささか、会場で萎えてしまうものだった。床に落ちている ドキュメントのファイルを拾い上げて読もうとしたら、触ってはいけません、と 注意されてしまうし…。 1999/1/30 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕