『日本のタイポグラフィック 1946-95』 ギンザ・グラフィック・ギャラリー, 中央区銀座7-7-2DNP銀座ビル1F (銀座,新橋) tel.03-3571-5206, http://www.dnp.co.jp/gallery/contents.html 1999/2/4-2/27 (日祝休), 11:00-19:00 - 構成: 田中 一光, 浅葉 克己, 松岡 正剛 戦後日本のタイポグラフィック・デザインを総括するような展覧会が行われている。 それなりに興味があったけれども、ちゃんと追いかけていたわけではなく、これだけ 総括的に観るのは始めてだったので、勉強になった。 45年から10年ごとに区切っているのだが、「1945年代: モダン・タイポグラフィと デザインの揺籃」「1955年代: "レタリング" から "タイポグラフィ" へ」「1965 年代: プレモダンの複雑性に向かって」「1975年代: ヒッピー、マクルハーンから、 "声と活字" の時代へ」「1985年代: 現代のタイポグラフィを悩み、楽しむ」という 副題が付いている。1975年以降、"枯渇のタイポグラフィー"とでもいう状況になる のかな、と思ったが。 やはり、一番惹かれたのは、杉浦 康平 によるもの。僕が一見してわかる独特の 彼のデザインを意識したのは高校生だった1980年代半ば、『エピステーメー』 『数学セミナー』といった雑誌、『講談社現代新書』『集英社 新しい世界の文学』 といったシリーズ本の装丁デザインでだった。だから、1950〜70年代に手がけた ポスターとか観ることができたのは、とても嬉しかった。また、アルファベットの 活字組でのカーニングにでも相当するような ― DTPになってからは日本語フォント でもその処理が行われているものもあるが ― 「字詰め」を行っている、という ことを知ったり、と再発見もあった。最近は、杉浦 の装丁デザインもみかけなく なって、そうかと思ってチェックすると 鈴木 一誌 だったりすることが多いの だけれど。しかし、この展覧会の2月15日のトークショーに出るよう。 Woody Allen が自分で書いた「おいしい生活」の書を掲げる 浅葉 克己 による 西武百貨店のポスターがあり、良くも悪くも1980年代という時代を感じさせて、 懐かしく思ったり。あと、1984〜88年に出た MoMA, NY のポスターカレンダー (1989,90年に Alphabet Gallery, Tokyo から続編も出た。) がとても気に入って いた 五十嵐 威暢 が、今やアメリカ西海岸で彫刻家として活動していることを 知ったり。と、1980年代以降となると、意外と懐かしく思うことが多かった。 日本語はアルファベットに比べて文字が複雑多様で、それがタイポグラフィでは ハンディキャップになっていると言われる。最近のポップな印刷媒体や Web site のデザインではそれを嫌ってか、カタカナとアルファベットのみを使ったデザインを よくみかける。(それ以前に、いかにも「Mac を使いました」なものが多過ぎて げんなりしているが。) むしろ、漢字やカナをアルファベットのようにちゃんと 「字詰め」した並べた 杉浦 康平 のデザイン方が、僕にとっては魅力的に思える。 この展覧会がカタカナとアルファベットが中心の最近のデザインを取り上げて いないのも、紙・活字世代のデザインということに過ぎないのかもしれないが、 ちょっと象徴的に思えてならない。 ちなみに、この展覧会に合わせて、『日本のタイポグラフィック・デザイン 1925-95: 文字は黙っていない』(トランスアート, A4変形本文208頁図版450点, 5,500円) という本も出ている。 1999/2/14 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕