_New Life - 11 artists from Denmark and Sweden in Tokyo_ 1999/2/12-3/13, http://www.muse.co.jp/newlife/ _New Life_ と題されたデンマークとスウェーデンの現代美術作家を紹介する 展覧会が、東京都内の8個所の会場で開催されている。いわゆるギャラリー共催の イヴェントというよりも、一つの美術館でまとめて開催してもいいような内容に なっている。都内バス散策がてらに観て回ったので、ギャラリーごとに、 観た順番に、軽く紹介。ちなみに、DK, SE, JP はそれぞれ作家の出身国である デンマーク、スウェーデン、日本を表わしている、 スウェーデン大使館 展示ホール, 港区六本木1-10-3-100 (神谷町), tel.03-5562-5050 1999/2/12-3/3 (土日休), 9:00-17:00 - Henrik Hakansson (SE), Steven Bechelder (SE), 真島 竜男 (JP) 平日、それも17時までしか開いていない会場なので、2/12に行われたオープニング ・パーティに合わせて観に行った。しかし、想像以上の混雑でろくに展示を観ることが できなくて、少々残念だった。オープニングに合わせて行われたトークショーは 観ていない。 Henrik Hakansson は、先行する2/7に六本木 Deluxe で _The Monster Of Rock Tour_ という、コオロギを使った音楽コンサート (残念ながら観に行かれなかった。) を 行った作家。その様子を撮影したヴィデオと、その録音から制作したCD (もちろん 中身はCD-R だった。) を展示していた。パーティの大きなざわめきの中、コオロギ の泣き声もたいして聞こえず、いまいちその雰囲気は掴みかねたが、ロックショー というよりDJイヴェントという雰囲気だったのだろうか。 真島 竜男 はビデオ作品を展示していたが、物語性がある作品のようで、ゆっくり 観る余裕がなかったこともあり、よくわからなかった。Steven Bachelder は スパイダーマンの衣装を展示していたが、曽根 裕 がそれを着て会場をうろうろ していたことしか印象に残っていない。 その 曽根 裕 は、オープニングで、"Birthday Party" パフォーマンス (1997年の ミュンスター彫刻プロジェクトが発祥) を行ったので、そのケーキにありつくことが できた。しかし、オープニング・パーティで既に大騒ぎになっている会場では、 単なる騒ぎの一つというかアトラクションにしかなっていなかったように思うが。 ナガミネプロジェクツ, 中央区銀座7-2-17南欧ビル4F (銀座,新橋), tel.03-3575-5775 1999/2/12-3/13 (日月休), 11:00-19:00 - Nikolaj Recke (DK) 狭いとはいえそのギャラリーの壁いっぱいにクローバーがぎっしり生えたところの クローズアップのビデオ映像を映し出す、という _4-Clover Field_ (1998) という 作品。その緑も奇麗で、環境ビデオに使えそうだ。ただ、大写しで画像が荒く、 スローモーションのせいか画面の振りが早くなると滑らかな動きが損なわれるのが、 少々気になったが。もともとはTVモニタで上映する作品のようだが、今回は プロジェクタで大写しで投影したそう。この方が映画的で良いと僕も思う。 四つ葉のクローバーを探すという作品だそうだが、僕には見つけられなかった。 しかし、たまにふと見える虫とかも面白いし、作家と違う意図で楽しめるように思う。 小山登美夫ギャラリー, 江東区佐賀町1-8-13食糧ビル2F (門前仲町), tel.03-3630-2205 1999/2/12-3/6 (日月休), 11:00-19:00 - Joachim Koester (DK) _Night And Day_ (1996) は、Copenhagen の解放区的な地区 Christiania を捉えた 写真とビデオを使った作品。ブルーフィルターを使っているのだが、Truffaut の 映画で用いられている「昼に夜を撮る」手法を用いたものという。実際、夜っぽい。 ビデオは茂みを抜ける小道のようなところを捉えた短いものでコマ送りにように 自転車が通り過ぎるときがあるが、他はほどんどスチル同然。その画面にスライドで Copenhagen、特に Christiania の歴史を記述する言葉が投影されるのだが、 いささか見づらい。時代を溯るようになっている上、焼け落ちた、とか、破壊された、 とかそういう出来事が多くて、妙に面白い。スライドは Christiania の建物を 捉えたもので、雑然とした建物が青く浮き上がる様子は、いささか不気味。全体と して、映画的とも言える不気味な雰囲気を作り出していたインスタレーションだった。 現代美術製作所, 墨田区墨田1-15-3 (東向島), tel.03-5630-3216 1999/2/12-3/7 (月火休), 14:00-19:00 (土日14:00-18:00) - Peter Geschwind (SE), Peter Land (DK), 曽根 裕 (JP), Magnus Wallin (SE), 小粥 丈晴 + 雄川 愛 (JP) _New Life_ の中でもっとも多くの作家が展示を行っている。しかし、会場が広く 無い上に複数の音付きのビデオ作品が上映しているので、雰囲気的には雑然とした 感じがするかもしれない。ビデオ作品は Peter Land によるもので、椅子に座る のに失敗したり、脚立から落ちる様子を、これでもかと反復するもの。TV番組の ナンセンス・ギャグに日々晒されているせいか、それほど面白いとは思わなかったが。 雑然とした感といえば、Peter Geschwind の作品はゴミを使った作品。ゴミで出来た 人形は、動くのかもしれないが、僕が観たときは動いてはいなかった。天井から ぶら下がったゴミの飾りとでもいったものは、手を叩く音といった強い音に反応 して動き出したが。動いてどうだ、というほどでもなかったが。 曽根 裕, _Jungle Sculpture_ (1999) は、ジャングルのジオラマとビデオの作品。 ビデオは夕方17時から1回だけ上映され、あとは絵がかかっている。ジャングルで コウモリが群れを成して飛ぶのが見られるのは夕方17時だけ、ということを作品化 したとでもいうのだろうか。もったいぶりすぎ、とも思うところもある。というのは、 趣味でたまに天体観測や野鳥観察をするとき、こういう時間的に限定される状況に 出会っているからだろうか。ビデオを観たい人は、時間を選んで行くといいだろう。 小粥 丈晴 + 雄川 愛 の写真作品は、こういう作品に紛れてしまい、ピンとくる ところが無かった。 奥の別室で上映されている Magnus Wallin, _Exit_ (1997) はコンピュータ・ アニメーション。場面は抽象的なのだが、火事で逃げ惑う人々を描いた短編。 その逃げ惑う人々が身体障害者で杖を付いたり這い回ったりしているうえ、 容赦無く炎に巻き込まれていく (それも、ちょっとした段差にひっかかったり して。)、というのが、グロテスクで衝撃的ではある。この会場の中では最も印象に 残っているが、かなり居心地悪い作品でもある。 P-House, 渋谷区恵比寿1-29-9 (恵比寿,代官山), tel.03-5458-3359 1999/2/12-3/5 (月休), 14:00-20:00 - N55 (DK) ヒルサイドギャラリー, 渋谷区猿楽町29-18ヒルサイドテラスA棟, tel.03-3476-4795 1999/2/12-2/28 (会期中無休), 11:00-18:00 - Superflex (DK) 代官山の2つのユニットは、芸術的というよりデザイン的な作品を作るデンマークの 作家。コンセプト・シートから「生活のデザインによる社会の変革」という理念が、 それも科学技術 (特にバイオ) への信頼を含めて ― Superflex の展示にあった カートゥンの「これからは科学と技術の時代だ」みたいなことを言うアフリカ人 を思い出そう。― びしびし臭ってくるという意味で、いくらエコが入っていようと、 極めて近代デザイン的な作品である。N55の金属やプラスチックを基調とした 装飾を排した椅子やサニタリにしても、Superflex の単純な形状のオレンジの バルーンにしても、形状のミニマルさ加減もモダンだが。少し皮肉が入っているの だろうか、と思ったら、意外と直球だった。ちなみに、Superflex の方は web site を持っている。URL はhttp://www.superflex.dk/。 ミヅマ アート ギャラリー, 渋谷区神宮前5-46-13 (表参道), tel.03-3499-0226 1999/2/13-3/13 (日休), 11:00-19:00 - Jens Haaning (DK) 通りから画廊を見ると、奥の壁に大きく黄地に黒文字で「床の上にバナナがいくつ あるか当てた人にTシャツプレゼント」と書かれており、ギャラリーの中央にバナナが 山と詰まれている。ギャラリーの窓にかかっている、白くぴったりとしたドレスを 着たグラマーな女性の写真が胸にプリントしてあるピンク色のTシャツが欲しいとは 思わないが、思わず数えてしまいたくなるような、引き付ける力はあると思う。 回答を書く紙と投函する場所も用意されている。三潴さんの話では、バナナの本数を 数えるまえに展示してしまったので、正解の本数は会期が終わった後に数えることに なるそうだ。しかし、床のバナナはまだ青いがどんどん黄変しており、会期末には 茶色のどろどろになりそう。 壁の展示は、コメントと大きさ、それと署名を書いた紙に作家の持物を固定して 額に入れた作品。こちらは、いまいちだろうか。 NADiff, 渋谷区神宮前4-9-8カソレール原宿B1F (表参道), tel.03-3403-8814 1999/2/12-3/7 (会期中無休), 11:00-20:00 - Elin Wikstrom (SE) 人との関係性を作品にしているという作家で、美術ショップ & カフェ NADiff の 片隅での公開制作をしている。作家がいる時間は NADiff の web site (http://www2.dango.ne.jp/nadiff/) で確認できる。僕が行ったときは、ショー ウィンドーに虹のように色厚紙を貼りつてけてあるだけ。作家は、知り合いと 思しき人との話に没頭しており、特にパフォーマンスとかそういう雰囲気は全くない。 ま、美術の制作なんてそんなものかもしれないが。積極的に話かけたら何か起きた かもしれないが、芸術と知ってアプローチするような予定調和な行動はよくないと 思ったので、傍観。なんか、他人にわざわざ見せるに値するような努力を感じ させない作品で、作家の芸術としての自己満足を露呈しているようで、最悪。 「関係性」を作品にしているというなら、大道芸の方が数倍ましかもしれない。 と、玉石混交で、全てを観て回る必要はないと思う。会場も分散しており、 巡回するもの大変だ。近くに行ったついでに覗いてみるとか、あらかじめ、 ポスターを兼ねたパンフレットを NADiff あたりで入手して、面白そうな作家に あたりを付けて行くのがいいかもしれない。 1999/2/14 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕