Donald Judd, _1960-1991_ 埼玉県立近代美術館, 浦和市常盤9-30-1北浦和公園内 (北浦和), tel.048-824-0111 1999/1/23-3/22 (月休;2/12休;3/22開), 10:00-17:30 (金10:00-20:00) 戦後アメリカ美術の、特に Minimalism の代表的な作家 Donald Judd の回顧展。 といっても、ギャラリー3室だけのこぢんまりしたもの。特に最初の一室は、 最初期の油彩絵画で、Judd の作家史上の興味以上の作品ではなかったように思う。 やはり、最も魅力的だったのは、"Stack" と呼ばれる、高さ10cm程度の側面が 金属で上面と下面の約1m四方がフレキシグラス直方体の箱が等間隔に垂直方向に 並べられた立体作品や、"Progression" と呼ばれる、ある数列になるような長さの 長方形の金属の箱がある間隔で角パイプに付けられている立体作品だった。 Donald Judd の典型的な作品と言われるものだが。いずれも、色、表面処理違いで、 3組ずつ展示されているのが良かった。3点あることにより、その表面処理による 素材感や色がもたらす効果の違いが際立ってよく判るからだ。 "Stack" の場合は、黒の金属枠に茶色のフレキシグラス、青の金属枠に無色の フレキシグラス、銀白色の金属枠に黄色のフレキシグラスの3つがあり、それぞれ、 それから受ける明るさや透きとおった感じがかなり違うのがとても面白かった。 よく、東京都現代美術館で、銀白色の金属枠に黄色のフレキシグラスの "Stack" を 観ていたのだが、そのときは「なるほどミニマル」という感が強かったのだが、 こうして並べてみると、黄色と銀白色のもつ明るい派手めの色感がとても際立ち、 「ミニマル」とはかなり異なる豊かな色感を持った作品なのだと思えるところが あるのだ。 色でなく素材感の差異といえば、"Pregression" の3組の角パイプは、1体は鏡面 処理が施され、もう1体は銀白色の濁った金属表面のまま、もう1体はブリキメッキ のような銀灰色のモザイク模様、といった具合。鏡面処理を施されたのは派手な 装飾物、ブリキメッキ状のものは渋目の装飾物、銀白色の濁った表面のものは むしろ安普請の建物の構造物、とでもいったように見えたりするのだ。 素材に関するこだわりを思って、床に置かれた巨大な金属の箱の作品を観ると、 微妙な映り込み加減にしても、面白く感じるところもあった。 Doland Judd に関するヴィデオを会場の一角で観ることができた。全編を観る ことはできなかったが。それに、若干 Judd 財団の活動プロモーション的な内容 だったとも思うが。Donald Judd が純粋芸術的というよりも、むしろ良い意味での デザイン的な感覚を持った作家だったのだのだなぁ、と思うようなヴィデオだった。 素材に関するこだわりも、むしろデザイン感覚なのかもしれない、と。 _ _ _ さて、この Donald Judd 展の関連企画として、アメリカ戦後美術に関する映画 上映会も行われている。僕が観ることができたのは、これ。 Robert Smithson, _Spiral Jetty_ - 1970, 16mm, color, 35min. - Directed by Robert Smithson. Smithson が Solt Lake, Uta, USA に作った有名な land art 作品『螺旋の突堤』 (_Spiral Jetty_; 1970) のドキュメンタリー・ヴィデオ。ダンプカーやショヴェル カーを使ってガガガガゴゴゴゴと突堤を作っていくところは破壊的な迫力を感じる ところがあったけど、コンセプトを語るあたりを中心に、全体としてはいささか 退屈だった。 1999/2/28 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕