『ART/DOMESTIC ― 時代の体温』 世田谷美術館, 世田谷区砧公園1-2 (用賀), tel.03-3415-6011, http://www.setagayaartmuseum.or.jp/ 1999/2/11-3/22 (2/22,3/8休), 10:00-18:00 (土10:00-20:00) - 奈良 美智, 多田 正美, 東恩納 裕ー, 田中 敦子, 大木 裕之, 根本 敬, 大竹 伸朗 日本の現代美術作家の展覧会。Puzzle Punks のインスタレーションで自動演奏 ロックバンドを付けたような 大竹 伸朗『ダブ平 & ニューシャネル』や、 「因果系」な人々のドキュメントを小さいギャラリーに突っ込んだ 根本 敬 『時代の体温・陰格 ― 混沌の隣人たち』のような、魔窟系インスタレーションが インパクトあったせいか、どうも、むわーっとするような湿った熱気という意味 での「体温」を感じる展覧会だった。 だからといって、こういうインパクトがあればいいとは思わない。田中 敦子 の くっきりした円と不安定な線からなる一連の絵画は、以前にドキュメンタリ映画 『田中 敦子 ― もうひとつの具体』(1998) で観ていたものの、草間 弥生 と 共通する強迫観念的なものを醸し出しつつも、とても奇麗なもので、最も良かった ように思う。このような展覧会で、絵画が最も印象的なのは皮肉のようにも思うが。 花柄ビニールクロスのような日本の奇妙なモダン意匠を用いた 東恩納 裕ー の 作品は、ギャラリー一室の他ところどころに展示されていたのだが、このダメな デザインも、根本 敬 のとなりでは、「奇妙な」よりも「モダン意匠」の方が 際立ってしまうようにも思った。うまく会場に溶け込んでいたとも言えるが。 奈良 智美 の展示は、Shonen Knife, _Happy Hour_ (Big Deal, 1998) のジャケット の絵、篠原 ともえ との共作、吉本 ばなな『ひな菊の人生』の挿し絵、といった、 イラスト的な使われ方をした作品を集めていたのが興味深かった。作品のノリは 変わらないのだが。それと、会場のあちこちに置かれていた人形『小さな巡礼者たち』 の布を切れ端を貼りあわせたような表面を見て、奈良 美智 のキャラクターに似合う のはこのような張り子のようなテクスチャー感じゃないか、と改めて思った。 今までの展覧会で観たつるっとした立体作品に違和感を感じていたので。この人形も 結局はつるっとした形状ではあるのだが、張り子で作ってあったりすると面白いの ではないか、とか思うところはあった。 7作家で1階の展示室のみを使った展覧会で、欲張らずにコンパクトにまとまって いたと思う。これ以上あったら、ちょっとうっとおし過ぎるように思う。ぎりぎり 我慢できる程度にうっとおしい展覧会、というところか。 1999/3/7 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕