『交錯する流れ ― MoMA現代美術コレクション』 _Crosscurrents - New Art from MoMA, New York_ 原美術館, 品川区北品川4-7-25 (品川,五反田), http://www.haramuseum.or.jp/ 1999/4/3-1999/5/30 (月休;5/3開), 11:00-17:00 (水-20:00) - Matthew Berney, Katherina Fritsch, Robert Gober, Felix Gonzalez-Torres, David Hammons, Bruce Nauman, Sue Williams, Stephen Wolfe, etc MoMA, NY (ニューヨーク近代美術館) の現代美術のコレクション展が開催されている。 3年前に原美術館で MoMA のキュレータ Robert Storr による "New Grotesques" の 講演会があったので、その手の"不定形"な感じの作品による展覧会と思いきや、 「お行儀良さそう」な現代美術が中心のとてもすっきりした感じの展覧会だった。 悪く言えば、ちょっと保守的で話題性に欠けるかもしれない。David Hammons や Bruce Nauman の作品など、展示の仕方次第ではもっとぐちゃっとした感じになる だろうから (実際、Nauman の作品は音が廊下に響きわたっていたが。)、一部屋 割り当ててもらえなかったせいもあるかもしれないし、企画のせいなのかもしれない。 しかし、来ている作品はそれほど悪くなく、特に小部屋一つ一つに一作家を割り当てた 2階の3部屋はとても良いように思う。特に Kathrina Fritcsh と Robert Gober の インスタレーションは、もともと住宅であったその小部屋の雰囲気がとても生きた インスタレーションだと思う。中欧的な Fritsch に、アメリカ的な Gober というのは いささか偏見も入っているかもしれないが。 Katherina Fritsch, _Black Table with Table Ware_ (1985) は小部屋の真ん中に、 こぎれいな木の黒い黒いテーブルの周りに椅子が4脚ならべられ、テーブルの上には、 4組の白い皿とカップが並べられている。皿とカップには、二人がそのテーブルに ついているモノクロのイラストがプリントされている。注意書きが無ければ、イラスト のようにそのテーブルに付いてお茶でも始めたくなるような、そして始めたとたん Jan Svankmajer の映画のような超現実的出来事が起きそうな、そんなシュールさが 感じられるインスタレーションだ。 Robert Gober の _Untitled_ (1992), _Open Playpen_ (1987), _Corner Leg_ (1991), _Untitled_ (1985) からなるインスタレーションも、超現実的な住居の小部屋という 感じだ。床に置かれた一辺の柵が無いベビーベッド、入り口脇の蛇口もドレインも 取れてたシンク様のものも深さが無い、と妙に使えなさそうな家具が並んでいるし。 奥の壁にはドレス姿の女性のモノクロ・ポートレイトが。で、反対の壁に目をやると 男性の足 (の模型) がにょきっと生えているのだ。Gober の足の作品は、写真で観た ことはあったが、実物は初めて。写真で観たのは壁に対して垂直に生えている作品 だったが、これは壁に対して斜めに生えていて、それも新鮮な感じがした。シンプル なだけに、自分で物語を作りたくなるような、そんな取り合わせの面白さのある インスタレーションだ。 2階一番奥の一番広いギャラリーには、Felix Gonzalez-Torres が割り当てられている。 この部屋は白塗りの壁からしていかにも美術館風の空間に仕上げてあるのだが、 部屋の一角に敷き詰められた銀のラップのキャンデー _Untitled (Placebo)_ (1991) といい、床に並べられた光る白熱電球 _Untitled (Toronto)_ (1992) といい、 2つ並べて掛けられた時刻の同期した事務用壁掛け時計 _Untitled (Perfect Lovers)_ (1991) にしても、その無彩色風のミニマルさが、ギャラリー的空間と合っていた。 _Untitled (Placebo)_ のキャンデーは、もちろん、客が拾って食べられるもので あるが、ギャラリーには何も書いて無いので、拾って食べる人はみかけなかった。 味は、一昨年の『しなやかな共生』展 @ 水戸芸術館、昨年の青山 Comme des Garcons のものと同じだ。 この企画に合わせて作られるミュージアムカフェ Cafe d'Art でのイメージケーキは Felix Gonzalez-Torres, _Perfect Lovers_ をイメージしたもの。時計のフェースを 人の顔風に描いてしまっているのは、ちょっと作り込み風だと思うが、可愛らしい 仕上がりだ。キャンデーと同じくパイナップルと思われる果物が入ったクリーム ケーキの上にココアの粉でフェースを描いたものだ。 1999/4/10 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕