坂 茂『プロジェクツ・イン・プロセス ― フライ・オットーとの協働のゆくえ』 Shigeru Ban, _Projects in Process - Collaboration with Frei Otto_ ギャラリー間, 港区南青山1-24-3, http://www.toto.co.jp/GALLERMA/ 1999/3/5-1999/4/24 (日月祝休), 13:00-20:00 去年、代々木上原の MDSG (Issey Miyake のギャラリー) へ行ったとき、 その紙管を使った建物がとても強く印象に残ったのだが、それを設計した 建築家として知ったのが、この展覧会の 坂 茂 だ。それで気になっていた 建築家だったので、展覧会へ行ってきた。この展覧会でも紙管を使った建築 である2000年のハノーバー万博日本館が中心に取り上げられている。 Frei Otto がその構造設計のコンサルトである。 この展覧会の見所は、「ハノーバー万博日本館」に関するもので、やはり 入口3階のギャラリー中央に置かれた1/30の模型と、4階ギャラリーへの 登り口もある3階の屋外テラス部に設置された実寸の模型だ。構造的に見ても、 模型というよりも仮設建築物と言っていい代物だが。特にテラスのものは、 仮設の屋根といえる状態になっていた。「ハノーバー万博日本館」は太さが 微妙に変化する半円筒を伏せたような (正確にはもっと複雑だが) 形を しており、紙の管をアーチ状にしたものを4重に軸の垂直方向から少しずら して編み上げるように重ねた構造をしているのだが。壁に張られた、ドームを 作っていく過程を捉えた写真がとても面白い。真っ直ぐな紙筒を床に並べて それを横から押して中央を押し上げていき、ドーム状にしているのだ。 実際に建てるときはジャッキアップしていく、とも書かれていたが、やはり アーチ型にした紙管を持って行くのではなく、現場げ押し曲げていくと 思われるだけに、凄いと思った。 しかし、テラスに屋外展示されている実物からわかるように、簡単に曲がる ようなペナペナな紙管ではなく、紙とは思えないほどガチガチに接着剤 (か それに類するもの) で固めたものだった。もちろん、耐水も目的にしている ようだが。これでは曲げるのもかなりの力を要すると思った。その一方、 リサイクルを目的としているとのことだが、これだけガチガチに固めた紙を 再利用することは可能なのだろうか、とも思ってしまった。ある程度のプランは あると思われるだけに、この処分のプロセスに関する展示が無かったのが、 ちょっと気になった。 4階のギャラリーでは、「ハノーバー万博日本館」以外の建築が紹介されており、 紙管だけでなく集成ベニヤ材を使った屋根とかも紹介されていたが、やはり 一番興味深かったのは、紙管とビニールシートを用いた国連難民高等弁務官 事務所のために作成した難民用のテント。紙管をプラスチックのジョイントで 繋げて対角線状に張ったビニールロープで軽く張力をかけて安定させる、という ものだが。紙管とプラスチックのジョイントを見て、無印良品で売っている 紙管とプラスチックのジョイントで組むラックを思い出してしまった。そして、 難民用でなくても、街中でイベント用などで使われているスチールの足に屋根を かけたような仮設テントの代わり使えるのではないかとも思った。紙管を使った ストールにしても。こういうものが、無印良品や東急ハンズのような店で 売られていても違和感が無いように思うし、売られているところを見てみたい ような気もする。 1999/4/11 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕