『身体のロゴス ― ドイツからの14人の女性アーティストたち』 _Leiblicher Logos - 14 Kuenstlerinnen aus Deutschaland_ 栃木県立近代美術館, 宇都宮市桜4-2-7 (宇都宮), 028-621-3566 1999/4/11-6/27 (月休;5/3開;4/30,5/6休), 9:30-17:00 - Dagmar Demming, Elke Denda, Maria Eichhorn, Katharina Fritsch, Isa Genzken, Asta Groeting, Rebecca Horn, Katharina Karrenburg, Karin Sander, Wiebke Siem, Pia Stadtbaeumer, Rosemarie Trockel, Ute Weiss-Leder, Qin Yufen (秦 玉芬) 女性の現代美術作家の展覧会、題名にある「身体の」という言葉、Rosemarie Trockel の全裸のパフォーマンスの写真を使ったポスターやフライヤ、から、フェミニズム色 濃いちょっと情念入った展覧会かと、ちょっとヒく所もあったのだけれど、実際に 観てみると、その手の感じがあまり無いすっきりした展示の展覧会。生真面目すぎて、 もう少しポップな所があってもいいんじゃないか、と感じるのは、前にこの美術館で 観たのが、ちょうど一年前の『リアル/ライフ ― 新しいイギリスの美術』展だった からかもしれない。Gillian Wearing や Georgina Starr のようなポップなイギリスの 女性の現代美術作家と比べる方が不適切だろうが、ここまで違うか、という印象も。 展覧会全体としては強い印象は残らなかったけど、気になった作家について。 中で最もポップな感じがして気にいったのは、Wiebke Siem。木製の遊具風乗り物2台 "2 Wagen" (1993/94)、木製の鬘のようでヘルメットのようでもある女性の髪型の 被り物 "Frisuren auf Regalbrett" (1991/92)、あと、ふっくらしたラインが いかにも女性という感じの女性の服の形をした防具風のもの "Kleider" (1991)。 防具風の服の色は単色なんだけど、暖か目でやわらかい感じの中間色というのも良い。 モダンな子供用の玩具みたいな雰囲気もあって、かわいい。鬘や服は、台に並べ られたり壁にかけられて展示されている所ではなく、実際に着用しているところを 観てみたい気もしたが。ちなみに、カタログ図版によると、Portikus Frankfurt am Main, 1994 での展示は、もっと数多く展示されており、今回の展示はサブセット のよう。もっといろいろ観てみたい作家だ。 期待の Katharina Fritsch は "Wuehltisch" (1987/89) (「バーゲン用ワゴン」) のみ。バーゲンで用いられるような飾りも無い黒い金属製の商品台の上に、緑色に 馬の柄がプリントされたスカーフが積み上げられたもの。整然とふんわり立てられた スカーフの山を見ると、思わずバーゲンのときのようにぐちゃぐちゃにしたくなった けれども、止めておいた。ひょっとして、それもありだったのかしらん、とも思う のだけど。 同じく期待の Rebecca Horn の Franz Kafka に捧げられた作品は、正統的に シュールな作品だったけれども、いまいち琴線に響くところが無かった。あと、 今回の展覧会のメインともいえる Rosemarie Trockel の作品がほとんど琴線に 触れなかったのが、ちょっと残念。 ちょっといいな、と思ったものとしては、Karin Sander の白い紙にステープラの 針で描いた作品。静謐というかひそやかというか、ミニマルな表現がいい。 秦 玉芬 の "Yu Tang Chen" (1994) は、たくさんの金属製のタオル白い掛け いっぱいに手ぬぐい状のものが掛けられたような作品。手ぬぐい状のものは実は スピーカーが仕込まれた白い紙で、そこから、微かに、お経か何かを連想させる 音が流れ出ており、それが、東洋人の作品っぽさを出していたけれども。それは、 ちょっとステロタイプ過ぎて、もう一捻り欲しいと思ってしまった。 1999/5/2 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕