Tom Shannon, _Extrasensual Swim_ トム・シャノン『超官能的遊泳』展 ヒルサイドフォーラム, 渋谷区猿楽町18-8ヒルサイドテラスF棟 (代官山) + ヒルサイドテラス, 渋谷区猿楽町29-18ヒルサイドテラスA棟 (代官山) 1999/4/13-5/9 (月休,5/3開), 11:00-19:00 パンフレットによると、天体運動などをテーマにした作品を制作しているという Tom Shannon の日本初の本格的な個展とのことだが、テーマそのものよりも、 単に磁石を使って物体が宙に浮いている、とか、そういう単純なレベルで面白く 思える展覧会だった。 例えば、"Color Compass Atoms" (1992) では、磁石を仕込まれ虹色に着色された 202個の球が空中に整然にぶら下げられている作品なのだけれど、地磁気によって 全ての球の色の向きがピッタリ一致しているのがとても綺麗なのだ。空間を結晶化 したというか、単位格子のような秩序を導入してみせたような、そんな感じだ。 そして、その面白さは地磁気の向きとか強さとはあまり関係ないように思うのだ。 こういう作品を磁石を使わずに制作するとすると、糸を張るとかしてある程度方向 を一致させることは可能だろうけど、これだけ揃えることは困難だろうし、 糸が増えてすっきりした作品にならないように思う。 木製、アルミ製の棒や半球といったミニマルな形状のオブジェが浮かび上がって いる作品がいくつがあったが、磁石を使っていると判っていても、面白い。 残念なのは浮かんでいるだけで動かないことくらいだろうか。位置がズレると 落ちてしまう、とのことだったが、安定するように磁石を配置することもできる ような気がするのだが。ちなみに、細い糸を張って位置がずれないようにしていた。 磁石を使っていないモービル作品は、スタッフの方が目の前で動かしてくれたの だけれど、やっぱり自分で動かしてみたいものだ。ま、作品の保全のためには 仕方ないのかもしれないけれど。 あと、まるで太陽系の模型のような形のモービルを見たり、地球・月・太陽などの スケールやその比を作品にしているという話を聞くと、天体の運動というのは 宇宙や空間の秩序の象徴として捉えられやすいのかしらん、とか思ったりしたし、 あまりに直接的過ぎる感じもあってヒくところもあるんですが。 というわけで、天体のスケールとかそういうコンセプトにこだわらず、単純に磁石を 使ってものを浮かすその面白さを追求する、例えば、ちゃんとポテンシャルを計算 して浮いた材が糸なしでも安定するようにする、とか、そういう方向に展開して いったほうが、面白くなりそうな気がした展覧会だった。 1999/5/3 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕