Anish Kapoor, _Recent Works_ SCAI The Bathhouse, 台東区谷中6-1-23柏湯跡, tel.03-3821-1144 1999/4/23-5/29 (日月祝休), 12:00-19:00 在英インド人現代美術作家 Anish Kapoor の展覧会。独特の顔料を使ってベルベット のような表面を作り出し、奥行き感を喪失させた穴を作り出すことで知られている。 今回は展覧会では、1992年当時話題になった Documenta IX に出展した床に穴を 開けた作品のヴァリエーションが観られる。Documenta のが丸い黒い穴なのに対して、 ここでは四角い青い穴と、異なるのだが。といっても、僕も Documenta の作品は、 図版や文章で接したことがあるだけで実物は観たことは無かった。というわけで、 実際どうなのか生で体験できるのをとても楽しみにしていた。 実際、観てみて、やはりとても面白い作品だった。穴の中は深い青色の顔料で染め られており、奥行き感はほとんど全く無い。遠目で観るとまるで、四角い青色の ベルベットの布が床に敷いてあるように見えるのだ。かなり近づいてもそれは同じだ。 すぐ脇にしゃがみ込んで穴の中を覗くと、穴が開いていることは判るんのだけど、 手がかりになるような模様や面の折れ目が無いので深さはほとんど判別つかない。 正確なところは知らないのだが、実際は2m近い深さがあるようだが。穴は口から少し 広がるような形になっていることが判るくらいで、形状も捉えがたい。それがとても 不思議で、思わず穴に手を入れてみたりしたくなるほどだ。ある意味で James Turrell の作品にも似た、記号的な部分がほとんど無く、感覚に直接訴えてくるような 強さがある、そんな作品だと思う。 他にも数点、やはり壁やオブジェに凹面を作る作品があった。顔料だけでなく、 鏡面やツヤあり塗料面、石面などいろいろあったが、どうしても形状が捉えやすい だけに感覚的に訴える強さに欠けるように感じた。 1999/5/23 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕