Jelena Barchatowa (ed.) _Russischer Konstruktivismus Plakatkunst_ (Weingarten, ISBN3-8170-2024-4, 1993) - 41cm x 28cm, pp.216, color. 題名を英訳すれば、_Russian Constructivism Poster Art_。1920年代から1930年代 初頭にかけて制作された Soviet のポスター図版を集めた本である。Russia の出版社 Avant-Garde から 1992 年に出た本のドイツ語版 (テキストはすべてドイツ語だ。) だが、Printed in Russia である。41cm x 28cm というかなりの大判でカラー印刷、 基本的にポスター1枚に1頁が割り当てられており、ポスターの細部 (書かれている 細かい文字) まで充分に読み取ることができるし、一枚一枚見ていてとても楽しめる ものだ。 題名では「ロシア構成主義」となっているが、実際は Avant-Garde のデザイン理念が 徹底されているものばかりではなく、演劇・映画のポスターや嗜好品や旅行会社の 広告ポスターを中心に Art Deco といったほうが適切とおもわれるデザインも多い。 それはそれで、とても興味深いのだが。ポスターとしては、五ヶ年計画物を中心に 国家的なプロパガンダポスターも半分近くあるのだが。 やはり、一通り観ると、Aleksandr Rodchenko のデザインが徹底していてとても 良いと思う。フォトモンタージュと赤の色使いがとても力強い Gustav Kluzis、 今に通じそうなスマートさがある Wassily Yolkin、そして、かなり折衷的だけれど 多くの素敵な映画ポスターを残している Georgi & Vladimir Stenberg など、 作家として印象に残った。しかし、一点しか載ってない作家のポスターや、 作者不明のポスターでも良いものは多かった。 最も気に入ったのは、1点のポスターしか載っていなかった、Aleksandr Deyneka の 安全なクレーン操作を呼びかけるポスター。くっきりした線で描かれる何基もの クレーンと、パステルタッチで描かれるあまり労働者っぽくないその下を歩く人の 対比がいいし、クレーンが吊るしているのがロシア語で「安全」を意味する単語 だったりするし。ボールドなフォント使いといい、黒、水色、茶色という色使いと いい、工場で安全を呼びかけるためのポスターとは思えないほど、とても上品な 感じだ。 そして、こんな感じで語りたくなるようなポスターが何枚も載っている。確かに、 テキストがドイツ語だし、ポスターに書かれているのは基本的にロシア語だという 難はある。しかし、そのポスターの色使いや構成だけで充分に楽しめると思う。 1920年代の Modernism / Avant-Garde な造形運動に興味ある人はもちろん、 一般にグラフィック・デザインに興味がある人なら、楽しめると思う。 1999/6/6 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕