Patrick Tosani ミヅマ・アート・ギャラリー, 神宮前5-46-13 1999/6/11-7/3 (日祝休), 11:00-19:00 アメリカの美術作家 Edward Ruscha に、焦点をぼかしたような風景画の上に、 字幕状にはっきりした文字で短い句や文章を書いた作品がある。それを初めて 観たときに、「曖昧な風景と明瞭な言葉」の矛盾を面白く感じたものだった。 この個展で展示されている、点字が打たれた白い紙の上に焦点をぼかしたような 人物ポートレイトや夜景の写真をスライドを投影したものを写真に撮った作品は、 ある点で、そのような矛盾に近いものを感じる。 写真に撮られた視覚障害者には判別できない点字と、ぼやけて見ても被写体が 明確に判別できない写真の組み合わせから受ける印象は、矛盾を構成すると いうより、単なる諦観に近い。点字に関する知識があって、それで何が書かれて いるか読み取れれば、また作品の印象も違うかもしれないが。そういった ところが、Tosani のこの作品が弱く感じるところだ。ギャラリーの人に点字で 何が書かれているか尋ねたのだが、写真を説明するような文章が書かれている わけではない、ということしか判らなかった。 Patrick Tosani はフランスの写真作家。頭のてっぺんから撮ったポートレイト などで知られていると思うが。今回の個展でも、人をおそらくガラス板の上に 座らせて、その下から撮影したものも展示してある。単純だけど、意外な視線で、 ちょっとユーモラス。何枚か並んで展示されており、そのタイポロジーぽい ところも面白かったが。 1999/6/26 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕