『アートは楽しい 10 ― 天国で地獄』_Art Is Fun 10: Angelic, Devilish, or Both_ ハラ・ミュージアム・アーク, 渋川市金井2844, tel.0279-24-6585, http://www.haramuseum.or.jp 1999/7/3-9/26 (7/8,15,22;9/2,9,16), 10:00-16:30 - 市川 平, 牛島 達治, 大岩 オスカール 幸男, 笠原 出, 小泉 雅代, 杉戸 洋, 奈良 美智, 森田 多恵 今年で10回目となる『アートは楽しい』は、去年一昨年と「観る」展覧会が 続いていただけに、久々に遊び心ある展覧会になっていたように感じた。 原美術館のコレクションと関係なく日本の若手の作家を集めて、観光地に 遊びに来る現代美術に縁の無い観客でも楽しめるような体験型の展覧会をする、 という感じの主旨に一番見合っていたように思う。 特に、アークの広々とした緑の空間に見合った屋外インスタレーションと、 ギャラリーAでジャンク機械インスタレーションを展開していた、牛島 達治 が ダントツに良かったと思う。『イズミワク・プロジェクト1996』で和泉中学校の 屋上に展示されていた「きおく―風景」が、アークの緑の芝の上で違う意味で 映えていた。大きな白い傘が芝の上に置かれており、そこから黒い建物の ピロティにかけて小さな傘が多数配置されていた。僕が観たときは、雨模様 だったのが少々残念だが。天気が良ければ大きな傘の陰に芝に腰を下ろして、 ぼっーとしていたら、気持ち良さそうである。キャラリーAには、うって変わって、 去年末から今年頭にかけて渋谷のZOOMで展示されていた「水にまつわる埋もれた 記憶から」が展示されていた。ギャラリートークで作家が話した寓意よりも、 ジャンクの電子部品を組み上げて作ったくるくる回るディスプレイ付きメカや、 その絶妙な連動や配置の具合が楽しい作品だった。初めて体験する彼の作品と しては、屋外に置かれたプラスチックの水道管などのリサイクル材を使って 作られた作品。天と地の音を聞く作品と、地上5m近い所の音を捉える作品も あった。何が聞えているのだが、という感じで、音的に楽しめるわけではないが、 水道用のプラスチック管やヨーグルトの容器をリサイクルしたもの、という、 ちょっとジャンクな素材感がツボを押さえていたように思う。 牛島 達治 の作品が強烈すぎて、ちょっと他の作家の作品が霞んでしまった 感じもあった。○○の亜流、って感じる作品もあって、ちょっと萎えるものも 無かったわけではないが。こういう場所だと、楽しければ良いか、と思える ところもあった。 オープニングのバスツアーで行ったのだが、いつも8割程度の埋まり具合なのに 珍しく満席。キャンセル待ちまで出たそうだ。客層もいつもより若めで女の子が 多い。奈良 美智 目当てに参加した客がけっこういたようである。その人気に ちょっと驚き。今回の展示作品は、新作の絵本の原画だが、良くも悪くも いつものとおりだったが。 ハラ・ミュージアム・アークといえば、Cafe d'Art のイメージ・ケーキ。 今回は、笠原 出『Smile (Ghost)』ケーキ。コーヒームースとバニラアイスの 冷たく甘いケーキ。けっこう作り込んであって美味しい。雨で緑がいちだんと 濃く見えて、テラスからの眺めも落ち着いていて、それはそれで良かった。 さらに、バスツアーの帰途上に寄った、伊香保温泉の源泉露天風呂は、霧に沈む 山々が日本画そのものという風景を作り出していて、なかなか風情があった。 現代美術もいいけど、こういうのも楽しんで帰りたい場所だ。 1999/7/4 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕