タムラ サトル Oregon Moon Gallery, 東京都江東区猿江1-18-4, tel.03-3846-5344 1999/7/6-31 (月休), 12:00-19:00 新作がかなりミニマルになった印象を受けたのは、ミニチュア的に制作された 小さな作品だったからではないように思う。新作「風に吹かれる布」は、 今までの作品でお馴染みのモーターで回るプロペラと 15cm 四方の白い旗を 組み合わせたもの。間欠的に騒音を立てて回るプロペラが、小さな旗を パタパタとはためかす、それだけの作品だ。 隣のギャラリーでは、やはりプロペラを仕込まれたワニ — 初期の作品 「スピンクロコダイルII」なのだが — が、やはり間欠的に部屋いっぱいに 回わっている。なぜワニなのか、なぜ回っているのか、といった社会的意味の 欠落感は、ナンセンスな一発ギャグに近い。しかし、それを一発で終わらない ものにしているのは、壁に激突するぎりぎりのところで曲げられているその尾や、 プロペラが生み出す風や唸る騒音からなる、身体感覚的な存在感だ。 そして、比較して「風に吹かれる布」を観ると、その身体感覚的な存在感のみが、 最低限の形で提示されているように感じる。そういう意味で、ミニマルな作品だ。 もはや、ワニやクマのような具象的な形態はそこには無い。その代わりに そこあるのは白い四角い布だ。— まるで、Malevich の絵画のように。 身体感覚的な存在感の追求の帰結として、作品がこのような形態になるのは 判るような気がするし、このようなミニマリズムも個人的にはかなり好きだが。 しかし、ナンセンスにワニやクマの形態を提示するような、ある種の不純さに 含まれる笑い — 確かに、状況依存性を生む危険のあるものなのだが — も、 捨て難いように思う。 1999/7/10 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕