ICCの展覧会『メディアの足し算、記号の引き算』の関連企画として上映されている Carl Stone の映像作品を観てきた。 Carl Stone _L.A. Journal_ - USA, video (Laserdisc), 1993. - Photography: Mark C. Brems. Original Audio Score: Carl Stone. Technical Direction: Morgan Holly. Videographic Design: Julia Jones with Rebekah Behrendt. Producer: Mark C. Brems. 1993 年に Voyager からリリースされた Laserdisc 作品。制作当時の Los Angels の 街中の光景を捉えた静止画像を、まるでコマ落し速送り動画のようにモンタージュ した映像作品。その間に、過去の Los Angels の白黒映像や昔の音楽も挿入される。 強烈なビート感は無いけれどもパーカッシヴな音が付いている。短めの作品で、かなり 忙しない印象を受ける作品ではあるが、意外とポップだ。 用いられている映像は、Los Angels に住む様々な民族の人々の民族アイデンティティ を示すような映像が多く使われていたように思うが、普通の公園の風景や、デモ行進 などもある。ドキュメンタリー的なものが中心という意味で、Dziga Vertov, _The Man With A Movie Camera_ (1929) を今作成するとこうなるのだろうか、とふと思った。 それは、Kino On Video からリリースされているビデオに付いている Alloy Orchestra による音楽と、Carl Stone の _L.A. Journal_ の音楽の傾向が似ていたこともある かもしれない。もちろん、_The Man With A Movie Camera_ のような近代的な産業、 文化の迫力を画像化しようとしているわけではないし、その一方、画面の切り替えは 遥かに Carl Stone の方が速い。これは、最初の近代化と、第二の近代化の、差かも しれない。また、_The Man With A Movie Camera_ で見られるような、制作を自己参照 するような所はない。 しかし、_The Man With A Movie Camera_ を参照するまでもなく、_L.A. Journal_ のような映像は、ポピュラー音楽のビデオ・クリップでも似たようなものを観る ことができるようにも思う。テンポの良い打ち込みダンス曲に合わせて街の様子を モンタージュしていくビデオ Robert Longo (dir.), New Order, _Bizarre Love Triangle_ (1986) を僕は思い出したが。僕は最近の techno 系のヴィデオ・クリップ に疎いのだが、似たような作品があるように思う。だからといって、_L.A. Journal_ がダメだということではなく、むしろ音楽のビデオ・クリップとしてもある程度は 楽しめるようなポップさも持った作品だったと思う。音楽がもっとビート感があれば、 とは思ったけれど。 _L.A. Journal_ は、もともと Laserdisc というメディアで発表されたもので、 今回の上映のように動画としてみるだけでなく、それぞれの静止画を写真集のように 観ることも可能であるらしい。そのような作品として観た場合、一枚一枚の静止画像を ゆっくり観ることができるだけに、また受ける印象も異なるだろう。それはそれで、 ちょっと気になる。 1999/7/18 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕