須田 悦弘『泰山木』(Hara Documents 6) 原美術館, http://www.haramuseum.or.jp/ 1999/9/11-11/7 (月休;10/11開;10/12休), 11:00-17:00 (水,9月中平日11:00-20:00) 草花の写実的な彩色木彫作品を制作する 須田 悦弘 の展覧会は、戦前モダン 住居建築という原美術館の空間を贅沢に使ったインスタレーション。 最も贅沢さを実感できるのは、Gallery IV の『泰山木「根と雑草」』(1999) だろうか。5m四方はある板張りの床の洋間の中央に5cmも無い小さな草の芽の彫刻が、 まるではげかけた板の隙間から生えているかのように置かれているだけなのだ。 昼に見た窓からは日が差込こみ、がらんとした空間の中の小さな緑が、ちょっと 荒廃した感じと和む感じのアンビバレツな感じを生み出していて、良かった。 そういう意味では、Gallery V の中に、もう一つ鑑賞用の空間を作り込んだ 『泰山木「花」』(1999) は作り込み過ぎか。花の木彫が派手めで大きいので、 こういう展示もやむを得ないのだろうか。窓の無い狭い Gallery III で壁を 暗く塗って、壁に彫刻を展示した『泰山木「実」』(1999) は渋い仕上がりだが。 あまり長居したい空間ではないかもしれない。 新作と思われるのはこの3点で、他に4点が出展されているのだが、うち3点は、 1階のコレクション展の Gallery や廊下にさりげなく展示されている。草花の 写実的な彫刻なだけに、家のちょっとスペースに草花を生けてあるような感じ でもある。しかし、生花では決してできないような、彫刻ならではの配置であり、 それがちょっと不思議な感じを出していて良かった。Cafe d'Art の空間には 展示が無かったけれども、こういう所にも作品があったら面白いように思う。 そう、全体として、生け花というかフラワーアレンジメントに似た感じもある かもしれない。生花じゃなくて木彫なので、時間的空間的自由度は格段に高い のだけど。 屋外のルーフバルコニーに、『銀座雑草論』(1993) という、トタンの小屋の ような作品が作品が転じされている。中が金色で少々悪趣味なかぁ、という 気もするし、空間を作り込み過ぎで彫刻が負けているような気もする。 なお、須田 悦弘『泰山木』展は、主に2階を使って開催されており、残りは コレクション展『Ma - Before The Millennium』となっている。 さて、原美術館のミュージアム・カフェ Cafe d'Art では、展覧会に合わせて その出展作品を象ったイメージ・ケーキを用意している。今回は、柔らか目の ココナツムースで『泰山木「花」』を粗く象ったケーキとなっている。緑の 部分も色だけで、味はココナツムースだ。チョコレートあたりで、写実的に 草花を型取ったものとか出てきたら面白いと思ったけれど、さすがにそれは大変か。 1999/9/15 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕