『エンプティ・ガーデン』展 ワタリアム美術館, 渋谷区神宮前3-7-6 (外苑前), tel.03-3402-3001, http://www.watarium.co.jp/ 1999/4/24-11/7 (月休;5/3,10/11開), 11:00-19:00 (水-21:00) - Joseph Beuys, Lois Weinberger, Olaf Nicolai, Carlsten Nicolai, 島袋 道浩, 粟野 ユミト 会期が長いためつい行きそびれていたのだけど、暑さも和らいできたのでやっと 足を運んだ展覧会。予想どおり、あまり力まず、庭を散歩するくらいの気分で 楽しんでちょうど良い展覧会だった。屋外展示のウェイトが大きいので、天気の 良い日を狙って行くことをお勧めしたい。 というわけで、散策向けの館外作品を作っていた作家についてコメント。 Lois Weinberger はワタリアムの屋上に屋上庭園を作っていた。庭は小さく 「荒地植物」が生えているだけなので殺伐としているが、天気が良かったせいか、 青山界隈の眺めも気持ち良かった。ワタリアム美術館の建物の屋上に登ることは なかなか出来ないだろうから、この展覧会はいい機会だ。時間帯が違うと趣が 異なりそう。夜景を観に行くのも一興かもしれない。Weinberger は、ワタリアム 美術館から5分ほど歩いたところにある駐車場2個所で「地面を道路工事用の ドリルで壊す」という作品を作っていた。パンフレットから派手にめちゃくちゃ にしていることを期待していたのだが、実際は1m四方程度を壊した程度。 注意しないと単なる舗装不良にしか見えないさり気なさ。ちょっと期待外れ。 Carlsten Nicolai, _Inside Out_ (1999) は、ワタリアム美術館2Fのビデオ インスタレーションとそこから10分ほど歩いたところにある建築家会館の実際の 庭を結ぶ作品。建築家会館の庭は狭いが、外苑西通りに面し見下ろす高台にあって 緑も多い。これも、普段は公開している感じでもないので、この展覧会を機会に 入ってみると良いかもしれない。2地点を結ぶというコンセプトも、その歩いて いる間に貸し出されるショルダー・スピーカーから流れる electro-acoustic な 音楽も、普段、CD walkman を聴きながら散策していることも少ない身からすると それほど違和感のある体験という感じではなかったけど。それよりも、3Fの ミニマルでモダンな感じの箱庭的音響付きインスタレーション _Kerne_ (1998) の方が良かったように思うけれど。 Olaf Nicolai はもう少しコンセプチャルか。ワタリアム美術館脇の路地の地面を 緑色で塗装した _Camoflage_ (1999) は、いわゆるカモフラージュ塗装から ちょっとズレて、ドットもポップな仕上がり。2Fのインスタレーションの渋谷の 街灯の再現も、そういうポップさを際立たせている。作家はそのポップさに空虚な 感じを意図しているようなのだが、それはあまり感じ。上野公園のブルーテント (浮浪者が作ったブルーシートで覆われた家) の写真を使ったインスタレーションは、 やはり、外国人から観ると興味深い光景なのだろうな、と思う一方、もう一ひねり 欲しいと思うところもあった。 規模的にも印象的にも遥かにこぢんまりとさり気ないものになっているけれども、 ワタリアム美術館のまわりをふらふら歩いていて、1995年の _Ripple Across The Water_ のことを思い出してしまった。今や、街中イヴェントっぽさなど 無くして普通の展覧会としてさりげなくやるくらいで丁度いいのかもしれない、 と、ふと思ってしまった。 1999/9/23 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕