畠山 直哉『Underground』 Masataka Hayakawa Gallery, 渋谷区恵比寿西1-16-1-301 (恵比寿), tel.03-5457-7991 1999/9/4-10/16 (日月休), 11:00-19:00 渋谷川の人工的な川の様子をくっきり二分する画面で捉えた連作の写真『川の連作』 シリーズが大好きな 畠山 直哉 の新作展。やはり、渋谷川を舞台に撮影された作品で、 ある意味で『川の連作』の新展開なのかもしれない。しかし、『川の連作』が、 人工的とはいえ、渋谷と恵比寿の間の地表に現れている所を舞台にしているのに対し、 今回の作品は題名通り地下、暗渠となった渋谷駅〜原宿界隈を舞台にしている。 展覧会は会期を二期に区切って入れ替えが行われたのだが。後半の作品はどこで 撮影したか判らないようなクロースアップの写真。Surrealistic なカオティックな 模様をテクスチャーのように映し出した写真は、鋭角で幾何的なパターンを思わせる 今までの写真とは違う。これが新展開なのかもしれないけど、むしろ、他の作家でも 撮りそうなありがちな画面のような気がして、正直に言ってつまらなかった。 後半の作品は、暗渠の地下水路を撮影していると判るような引いた写真なのだが。 フラッシュをカメラのずっと前方に設置し、それによって照らし出された地下水路が 画面の上半分に、その照らし出された地下水路のフラッシュよりカメラ側の暗い 水面への映り込みを画面の下半分に、ちょうど画面を二分するように捉えている。 カメラから照らし出された水路までの距離はいろいろと設定してあり、光の輪が 大きかったり小さかったり、いろいろである。ぱっと見、二段式の水路でも撮影 しているのか、と思うようなところもあって、ちょっとトリッキーな画面に過ぎる ような気もするけど。前半のクロースアップ写真よりもずっと面白い作品だと思う。 けっこうかっこいいし、49cm四方の正方形なのでCDかレコードのジャケットとして 使いたい、とか思ってしまった。 もちろん、そういう画面の形式的な面だけでなく、どこで撮影されたのかも気に なったのだけど。例えばゴムシートで塞がれているように見えることろは、 渋谷川が暗渠から地上に出る、渋谷駅東口の玉川通りを渡った南側を内側から 捉えたものだろう。水路が二つに分かれるところもあって、これはおそらく、 左手が支流の宇田川で右手が渋谷川本流で、下流側から撮影されているように 思うのだけれど。宇田川側に、煉瓦作りの橋の痕跡がちょっと覗いているところが あって、地上のどこに対応しているのか、もっと気になってしまった。 1999/10/2 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕